48:『ハウルの動く城・2』
滅鬼の刃 エッセーラノベ
48:『ハウルの動く城・2』
『ハウルの動く城』のヒロインのソフィーには二人の妹が居ます。
カフェで働く次女のレティ―とマーサというもう一人、三女の妹です。
二人とも腹違いのようで、レティ―は義母のファニーにそっくりです。マーサは原作では魔法使いにあこがれて魔法使いの弟子になっています。
アニメで、90歳にされたソフィーが荒地を目指してお百姓の馬車に乗せてもらいます。その時「中折れ谷に末の妹がいるのよ」という一言があるだけでマーサそのものは出てきません。
栞に話すと「え、そうだっけ?」と言って、その部分だけDVDで見直して「ほんとだ。でも、これって荒地に行くのをお百姓さんに止められてるじゃん。それでも乗せてもらうためのヨタなんじゃないの?」と言います。
たしかに、ここだけしか三女に触れているところが無いのですから、ヨタととってもいいのですが、原作に『魔法使いの修行中』というマーサが登場しますので、原作へのリスペクトとして触れられているのだと思います。
そして、マーサが『魔法使いの修行中』ということで、姉であるソフィーにも魔法使いの素質があるということにもなります。
そもそも、この『ハウルの動く城』は、ソフィーが妹のレティ―に会いに行くところから始まります。
会いに行く途中、二人の兵隊に絡まれて、そこを「やあ、待たせたねぇ」と言ってハウルが通りかかって助けてやって、レティ―のカフェまで空を飛んで送ってやります。ハウルは荒地の魔女をまくために裏道を拾って逃げている最中でした。
そのことを知った荒地の魔女が、帽子屋に戻ったソフィーを訪れて、ソフィーを90歳のお婆さんに変えてしまって、話が展開していきます。
つまり、レティ―に会いに行かなければ、ソフィーのハウルとの出会いは無くて、物語は始まりません。
人生には、こういう『きっかけ』というか『人生の曲がり角』に立っている人がいます。
「それって、偉い人だったりカノジョだったり?」
栞が身を乗り出します。
「いいや、なにげない出会いだろうなぁ……道を教えてあげたり、落とし物を拾ってあげたり、拾ってもらったり、ちょっと挨拶したり……ま、いろいろだけど、ささいなこと……」
「ふぅん……お祖父ちゃんにも、そういうこと有ったの?」
そう言われて、蘇ってきました。
今のわたしがあるのは、武者が33『学校のにおい』で言っていたCKさんです。
武者が言っていた通り、小学校の5・6年同じクラスで、中学では同じになったことがありません。そのCKさんと、A高校ではいっしょになりました。いっしょといっても同じクラスではありません。まぁ、言ってみれば六年生の時以来三年ぶりに渡り廊下で出会いました。
小学校の時も、クラスメートというだけで、とくに話が合ったりということもありません。たぶん、隣の席になったこともなかったと思います。
「あ、大橋君!」
そう声を掛けられ、次の言葉がこうでした。
「ねえ、演劇部に入らない?」
「え?」
「わたし演劇部に入ったんだけど、男子がいなくて。よかったら、放課後2年○組の教室でやってるから(^^;)」
それだけ言うと笑顔を残して行ってしまいました。
実は吹奏楽部に入ろうと音楽準備室へ行った帰りでした。中学では三年間吹奏楽だったので、ごく自然に吹奏楽と決めていました。
——あ、吹奏楽は潰れたよ——
音楽の先生にそう言われて、さて、どうしようかと廊下を歩いていたのです。
その前の日だったかには「バスケ部入らへんかぁ?」と知らない上級生に声を掛けられました。新年度の4月というのは、どのクラブも新人の獲得に懸命です。
A高校はまあまあの進学校、その時代流行りの三無主義とかもあって、部活全体が下り坂にさしかかっていました。後で分かったのですが、演劇部は二年生の部長が一人いるだけでした。あとはCKさんを入れて新入生が三人、三人とも女子でした。演劇部というのは、意外に力仕事が多く、男子部員は、いわば渇望されていました。その割に男子には敬遠されて、令和の今でも男女比は3:1、むろん3は女子です。
声を掛けられたその日に部活の教室に行き、その場で入部しました。まあ、水が合わなければ仮入部期間でもあるし辞めればいいと思っていました。
部長のYさんも京塚昌子さんを女子高生にしたような人で、一年生も感じのいい人ばかりです。三年ぶりに男子が入ったというので、引退した三年生の人たちも覗きに来て、なんともアットホームです。
その雰囲気にズルズルと演劇部に留まり、結局は、この演劇部の縁がその後のわたしの人生を変えてしまうことになりました。
「ふうん、それでそれでぇ?」
めずらしく栞が興味を持った様子なので、もう少し、この話題を続けます。
☆彡 主な登場人物
わたし 大橋むつお
栞 わたしの孫娘
武者走 腐れ縁の友人(35回より故人)




