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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
42/48

42:今度は耳です

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


42『今度は耳です』  





 実は、右耳の耳鳴りがひどく、聞こえづらくなってきたので駅前の耳鼻科に行きました。


 いわゆるクリニックビルというやつで、以前目を診てもらった眼科も、このビルの二階にあります。


 三十年前、メニエルでお世話になって以来です。ドクターはわたしより若い人で、十数人の看護師さんを使ってテキパキと診ていかれます。診察台が三つもあって、同時に三人の患者さんを相手にします。医院とか病院というのは予約が原則なのですが、このY医院は飛び込みで行っても、そう待たずに診てもらえます。


「大橋さん、ど~ぞぉ」


 受付さんに呼ばれて診察室、診察室と言っても待合との間にはドアも敷居もなく、待合と地続きの教室の2/3くらいの平土間です。診察台に行くのかと思ったら入ってすぐのパイプ椅子、これも三つ並んだ端っこに座ります。わたしよりも前に座っていたお婆さんは、別のところに案内されて行ってしまいます。すると、看護師のおねえさんがボードをもって予診というんでしょうか問診というんでしょうか、既往症とかザッとした耳の調子とかを聞いて書き入れます。


 それから「こちらにどうぞ」と案内されて昔の電話ボックスみたいなところに放り込まれて聴力検査。左右共に検査して、ようやく中央の三つ並んだ診察台の一つに落ち着きます。

 

「はい、どないしましたかぁ……」


 問診票を見ながら座ったドクター——歳くったなあ——と不躾に思ってしまいます。三十年前の面影は十分あるのですが、わたし同様10キロはマシマシの体格、後退した生え際、その頭髪もゴマ塩で——ケーシー高峰に似てる——と思いました。


「ああ、メニエルで診させてもろたんですなあ……」


「はい、あのころから聞こえにくくなっていたんですが……」


 メニエルと診断され、点滴を打って仕事に通っていました。当時は手のかかる一年生の担任をしていましたので休むわけにはいきません。ドクターは診断書を書くときに「どのくらい書いときましょ」と、ほとんど休職を勧めてくださいましたが「安静、療養を要す」的な内容に留めました。けっきょく、この学年は卒業させるところまで面倒を見ましたが、あの時にきちんと治していなかったことが原因のようです。


「一度総合病院に行って精密検査してもらってください」


 ということで、紹介状をもらって市民病院の眼科に行きました。ドクターも「まあ、MRIの検査になるでしょうなあ」とおっしゃっていたのですが、結果は意外なものでした。


「入院治療になります」


 眼科の女医さんはアッサリ宣告なさいました。


「点滴が主な治療になるんですが、大橋さんは血糖値が高いので、通院ではできないんです」


 申し訳なさそうにおっしゃって、それで、孫の栞に電話したというわけです。


 一週間程度の予定なのですが、男の一人住まいでも、一週間となるといろいろあります。状況によっては伸びる可能性もありますし、持ってきてもらわなくてはならないものもあります。


 再び、栞の仏頂面、少々気が重くはありますが、まあ、人生はサイコロを転がすようなもの。


 意外に面白い目が出るかも……と、とりあえずは、四十年ぶりの入院を楽しんでみることにしました。


 


☆彡 主な登場人物


 わたし        大橋むつお

 栞          わたしの孫娘 

 武者走       腐れ縁の友人(35回より故人)


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