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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
33/47

33・学校のにおい・2

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


33『学校のにおい・2』   





 ニオイの話が続きます。


「中学校のころ、理科室の匂いが好きだった」


「ああ、いっつも酸っぱいようなぁ焦げ臭いようなニオイがしてたなあ」


「よく実験をやってたから、いろんな薬品が混ざったニオイだったんだろうなあ。ろくに換気扇も無かったから」


「理科部やったか化学部やったかかがあって、そこの三年生なんか、放課後は制服の上に白衣を着てたりしててさ、なんかそこだけ学校の平均的な雰囲気から突き抜けてたよなぁ……あ、中三の秋にU先生に呼び出されてなぁ」


「ああ、職員室に居るよりも理科の準備室に居ることが多い先生だったなあ」


「『時をかける少女』で、主人公の七瀬は理科準備室でラベンダーの匂いを嗅いで気を失なってさ、タイムリープの能力を身に付けるやろ」


「あ、ああ」



 武者もわたしも、中三から高校にかけて小松左京や筒井康隆好きのSF少年でした。



「七瀬やないけど、理科室の匂いで運命が変わったんや」


「男七瀬か(^_^;)?」


「先生はなぁ進路指導の極秘資料を見せてくれたんや……ほら、進路希望調査をやったら、希望校ごとに成績順の資料作るやろ」


「ああ、懐かしいなあ」


 自分たちも高校の教師でしたので、三年の担任をやった時は同じような資料をもとに進路指導をしました。


「『武者走、これがA高校を受ける生徒の一覧や』って言うてな見せくれんねん。バリバリの個人情報やでぇ、80人分ほどあってよ、成績順にダーーって並んでるんや。真ん中あたりに赤い線が入っててなぁ、そこから下は受けても落ちるってことや、説得して受験校を変えさせようっちゅう、まあ、当たり前の指導やな」


「ドンケツだったのか、おまえ?」


「ああ、俺が担任やったら、ぜったい受けさせへん」


「先生、どう言ってた?」


「『武者走は、A高受験者の中ではドンケツや。ええか、2ページ戻ったとこに赤い線が引いたあるやろ。ここから下の生徒は受けても落ちる、ぜったい落ちる、必ず落ちる』って言って、俺の目をジーっと見よった」


「無言の指導だなあ」


「ああ、あの目で見られたら、十五の中坊は耐えられへん」


「だろうなぁ」


「直ぐには返答でけへん、俯いたら、理科部の女の子の名前が目についてなあ……ほら、CKさん。六年の時は大橋のクラスやったやろ。むろん、赤線のずっと上やけどな」


「あ、ああ(゜д゜)!」


 思わず感動の声が出てしまいました。


 金曜ロードショーだったと思うのですが『ローマの休日』をやっていて、ヒロインのアン王女を見てビックリしました。アン王女の父の王様が日本女性と浮気したら、こんな女の子が生まれただろうという感じの美人です。


 同じように感動した中学生の武者が、アン王女を演じたのはオードリー・ヘプバーンという女優さんなんだと教えてくれました。


「それでな――ぜったい受ける!――って決意したんや!」


「そうか、理科室の匂いが、それを増幅したんだな」


「いや、そうなんやけどなぁ。CKさんの白衣は、いつも洗濯したてのええ匂いがしてた」


「おまえ、嗅いだのかぁ?」


「ちゃうちゃう、狭い廊下やから、すれ違うと匂うんや」


「わざとすれ違ってたんだろ。理科室は南館の一階だから、用事が無きゃ行かねえとこだぞ」


「用があったんや、用がぁ」


「用がなあ……まあ、いいけどな(*¬_¬*)」


「それで、併願することを条件に認めてもらってなあ……」


「ジジイが遠い目をすんな、気持ち悪いぞ」


「思うんや」


「なにを?」


「もし、あの進路指導が教室でやられてたら、オレ、A高校は受けてへんかったと思う」


「ん? 教室でも同じ指導だろうから、CKさんの名前は見えただろーが」


「ああ、けども、あっさり志望校は変えてたと思う」


「え、どうしてだ。CKさんの思い出は変わらんだろう」


「いや、理科室のニオイとのコントラストがあったからこそやったと思う」


「理科室の臭いで、CKさんの匂いが際立ったって言うんなら、ちょっと……フェチめいてないか。怪しいぞ」


「洞察力のないジジイやなあ」


「なんだ、仕返しか?」


「確かになぁ、理科室のニオイは妖しいて変なニオイや。そのニオイの中で化学部の実験やってる彼女は、ちょっと妖しいやないか。ほんの5%ほどやけど、お仲間て感じがしてな……ん、臭わへんか?」


「え……」


 なんだか、理科実験のような臭いがしてきました。


 ゲホゲホゲホ


 階下で栞が咳き込む声がします。


「どうした、栞!?」


 ゲホゲホゲホ


「ちょっとヤバイいぞ」


「栞!」



 階下に降りると、窓やサッシを全開にして栞が咳き込んでいます。



「ごめん、お祖父ちゃん、風呂掃除してて、洗剤注ぎ足したら……ゲホゲホ」


「あ、栞ちゃん、似たボトルやけど、メーカー違うよ!」


 風呂場から、洗剤のボトルを取り出して、庭に放り出す武者。


 我が家にも新しいニオイの記憶が刻み込まれてしまいました(;'∀')。


 


☆彡 主な登場人物


 わたし        武者走走九郎 or 大橋むつお

 栞          わたしの孫娘 

武者走        腐れ縁の友人

 

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