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最強の魔力の持ち主は最強の優しさの持ち主の光を守る為に全てを捨てた

作者: 来留美

私の世界には魔法が使える人と、


魔法が使えない人がいて、


国が2つに分かれていました。


私は魔法が使えるので魔法が使える国に住んでいます。


この2つの国は仲が悪く、魔法が使える国の人々は魔法が使えない国の人々を見下していました。


魔法が使える人々は自分達が強いと思っているのです。


私にはその考えがよく分かりません。


どうして優劣をつけるのか。


みんな同じ人間なのに。




私は魔法が使えます。


魔法といっても色々ありますが私は回復魔法で怪我を治したり、疲れをとってあげたり、

そんな魔法でした。


毎日いろんな人達を治しました。


私はこの力が大好きです。


誰かの為に使える力が本当に大好きでした。



いつものように家で怪我を治してあげ見送りをした後、花壇の花を見ている男性に目がいきました。


彼は何故か不思議なオーラがありました。



「うちの花壇に興味がありますか?」


「あっ、えっと、あの、」


「好きなだけ見ていっていいですよ」


「あっ、すみません」



彼の印象は“変な人”でした。



今日の仕事も終わり花壇の彼を見に行くと、彼はまだ花壇の花を見ていました。



「まだ見ていたんですか?」


「あの、いや、その、」


「ゆっくり話して下さい。

私はあなたが話し終わるまでちゃんといますから」


「僕は、何故ここにいるのか分からないのです」


「えっ、それはどういう意味ですか?」


「僕は名前も思い出せないし、どこから来たのかも分からなくて」


「何故、花を見ていたんですか?」


「花を見ていると何故か、落ち着くみたいで」


「それなら、私の家で思い出すまで過ごして下さい」


「それは悪いので遠慮します」


「私は人の怪我を治す力があるんです。

あなたの記憶も、取り戻せるのかもしれないです」


「分かりました」



そして彼は私と一緒に住むことになりました。


彼は私のお手伝いをたくさんしてくれました。


私がほしいなぁと思った時には彼は準備をしてくれたり、

彼は私の隣にいてくれなければいけない存在になっていきました。


私は彼の記憶を取り戻そうと何度も魔法をかけましたが、彼には何の変化もなく治しかたが分かりませんでした。


彼と毎日、一緒に過ごしていると彼のことが少しずつ分かるようになりました。


彼は

左利きで、

誰よりも気配りができて、

視力はとても良く、

誰にでも優しく接するし、

とても力持ちで、

とても優しく笑って、

彼の悪いところは1つとしてありませんでした。



そんなある日、2つの国の国境の近くで怪我人が出たと情報が入り、私と彼は現場に向かいました。


怪我人はそんな大怪我ではなく、すぐに私は治してあげました。


国境の向こう側、魔法が使えない国の人が私達を見ていました。


その人は私ではなく彼を見ているようでした。



「彼に何か?」


「知り合いに似ていたので」


「知り合い?

もしかして彼のことをご存知で?」


「私の知り合いなら、魔法が使えると思うんですが」


「魔法?」


「もし彼が私の知り合いなら最強の魔法の持ち主ですよ」



そんな話を聞いて彼を遠くから見る。


そんなふうには見えない。



「もし、私の知り合いなら彼は全く別人みたいだ」


「えっ」


「彼は魔法を使えない者を見下し、いつも魔法を使って私達を苦しめていたから」


「そんな。酷い」


「でも、彼は違うと思います。

もし彼が私の知り合いなら、あなたは早く彼から離れるべきだと思いますよ」


「彼はそんな悪い人じゃないので大丈夫です」


「人は見かけによらないものですよ」



それから彼と私は家へ帰った。



「あなたって魔法は使えないの?」


「使えたとしても、覚えていないから使い方も分からないよ」


「そうだよね。

でも、どうして覚えてないんだろう?」


「覚えているところから教えると、僕はいつの間にか君の花壇の前にいたんだ」


「私の花壇に何か思い入れがあるのかなあ?」


「花壇を見ていると最近は落ち着くよりも、何故か後悔している僕がいるんだ」


「後悔?」


「僕に何が起きたんだろう」



彼の不安が私にも移って悪いことを考えてしまう。


そしてあの人の言葉を聞いたからなのかもしれない。


彼って本当は悪い人なのかもと思ってしまう。



その日から私は彼が怖くなった。


彼も薄々気付いていると思う。


私達の関係はギクシャクしだした。



「僕はもう、この家にいれないね」



彼は突然そんなことを言い出した。



「ち、違うの」


「何が違うの?」


「私はあなたが誰なのか知りたいけど、もし知ったときあなたを好きでいられる自信がないの」


「それなら本当の僕を知るまで今の僕を好きでいて」


「それでいいの?」


「今はそれでいいんだよ。

本当の僕を知った時はその時に考えればいいでしょ?」



彼は笑顔で言った。


私は彼のその笑顔で知った。


彼も怖いと思っていることを。


彼の笑顔はどこか作られているように見えたから。



そして起きてはいけない事件は起きた。



私は国境付近で話した、あの人を探していた。


国境を渡ることは出来ずただ向こう側を遠くから探した。


どうしてもあの人から知り合いの人の話を聞きたいと思った。


本当に彼じゃないことを証明したかった。



「お姉さん」



後ろから声がして私は振り向く。


後ろには3人ほど男性がいた。



「お姉さんも魔法が使えるの?」


「あなた達は魔法が使えるの?」


「俺達は使えないよ」


「それだとこっちには来られないはず」


「抜け道があるからね」



彼らは私に近づいてくる。


何をする気?


私には回復魔法しかない。


誰かを傷つけるような魔法は持ち合わせていない。


私はそのまま彼らに向こう側の魔法が使えない国へと連れていかれた。


そのまま近くの小屋に入り、私は両手両足を縛られた。


恐怖で声が出ない。



「高くで売れるだろうね」



彼らはそんな話をしていた。


最近、魔法を使える住人が消える事件があったことを思い出す。


私は売り物にされちゃうの?


怖くて、怖くて、体が震える。


その日はこの小屋で1日を過ごした。


長い1日だった。



私が帰らないから彼は心配して私を探していると思う。


彼が必ず助けてくれる。


そんな希望を持たないと恐怖でどうにかなってしまいそうだった。


本当は泣きたい。


でも、私が弱いところを見せると彼らは何をするか分からない。


お願い。


助けに来て。


私は何度も願った。




『バンッ』


扉が勢いよく開いた。



「誰だよ、俺の光を奪ったやつは」


「えっ」



入って来た相手に私は驚いた。


自信はないが彼だと思う。



だって、いつもの彼とは違うから。


いつもの優しい目は獲物を狙うように鋭く、


いつもの優しい笑顔は姿を消し、


いつもの優しさが溢れるオーラは跡形もなく、


いつものサラサラの黒い髪も真っ赤に染まっていて、


まるで別人だった。




「お前、もしかして」


「あ? 俺のこと知ってんの?

それなら早いじゃん」



彼はそう言うと私の目の前で魔法を使う。


相手は魔法が使えない人間なのに。


彼は怒りだけで動いている。


あの日のあの人の言葉を思い出す。



“彼は最強の魔法の持ち主ですよ”



それが本当なら彼はこの人達を殺すかもしれない。


ダメだよ。


これ以上人を傷つけたらダメだよ。


私は手も足も縛られていて、身動きがとれない。


でも、私には口がある。



「やめて」



私が叫んでも彼の耳には聞こえない。


彼は怒りで私も見えていない。


このままじゃダメだ。


どうすれば?


私は近くにあった鏡を両手で割り、縛られていたロープを切った。


そして急いで彼の元へ走る。


そして抱き締める。


彼の動きは少し止まったが私の腕の中で暴れ出す。



「ねえ、聞いて。

私はもう大丈夫だから。

お願い。

もう()めて」



私は泣きながら言った。



「ごめん」



彼はそう言って抱き締めていた私の腕から抜け出し、逆に私を抱き締めた。



そして私達は家へと帰り、彼はなぜ記憶を失くしたのかを話してくれた。



【俺は毎日、毎日、魔法を使えない奴らを見下して魔法でいじめてた。


毎日やっていると飽きてきた。


そんなとき、彼女に出逢った。


彼女はとても綺麗で俺には眩しい光だった。


彼女は毎日、毎日、花壇の花に水をあげ、花に話しかけていた。


彼女と話したくて、でも俺にはそんな光の彼女に話しかける勇気もなかった。


俺は自分の過去を後悔した。


過去は消せない。


彼女が俺の過去を知ってしまったら俺は一生、彼女に嫌われる。


俺の過去がなければ。


俺が過去を忘れることができれば彼女にも知られないのかもしれない。


そんな思いで知り合いから記憶を失くす薬を貰った。


副作用として魔法は使えなくなるみたいだ。


そしてもう1つ大事なことを言われた。


俺が大きな怒りを感じたとき、薬の効果は切れると言われた。


彼女と話したい。


ただそれだけだった。


俺は全ての記憶を失くした。


それでも彼女のことは忘れていないのか、彼女の大切な花壇の前にいた。】




彼の話を全て聞いて私の心は決まった。


彼の話を聞かなくても決まっていたのかもしれない。



「私はあなたを許せない。

自分より弱い人間をいじめて、苦しめて。

私が一番嫌いなことをしたあなたを許せない」


「そうだよな」


「ちゃんと最後まで聞いて。」


「まだ続きがあるのか?」


「私は記憶を失くして私の助けになってくれたあなたは好き。

それは変わらない。

あなたはどっちのあなたで生きていきたいの?」


「俺は君の隣にいられるなら記憶を失くしたほうの俺でいたい」


「分かった。

それならあなたは私の隣で一生、過去の償いをして」


「どういう意味?」


「私の隣で私のお手伝いをしながら私の光が消えないように見守って」


「光?」


「私はあなたの光でしょ?」


「君の光を守る為に何でもするよ」



そして最強の魔力を持つ彼は最強の優しさを持つ彼女に頭が上がらない毎日を過ごし、

それでも2人の愛は永遠となり、

彼は彼女の光を守り続けましました。


なんてね。


終わり

読んで頂きありがとうございます。

もし、彼が記憶を失くさず話しかけることができても彼女はちゃんと受け入れると思います。

話していないから彼女のことを分かっていない。

会話ってとても大切だと思いませんか?

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