エピソード491 暗雲<1>
−−弘也・ナスティ組
和司とレギンダがフォンデミリア王国の隣国ギアリスに転移した頃、弘也達もまた別の場所に転移していた。
「カズ!ナスティ!レギンダ!どこだ?!」
ここは先程までいたジーナの事務所でもなく、東京のどこかでもない場所。弘也は辺りを見回しながら3人を探す。
「私!私ならここだよ!」
手を振りながらナスティが弘也の所に走ってきた。ようやくナスティを見付けたのだが、他の2人の姿がない。
「私達2人だけしかいないのかな?」
「カズとレギンダは別の場所に飛ばされた様だな」
「どうしよう・・・。2人が一緒にいるといいけど、もし1人で別々の場所に飛ばされていたら・・・」
「あの2人なら何とかするだろうから大丈夫だ。それより問題は俺達だ。一体どこだここは・・・」
見上げると空はドス黒い雲で覆われていた。フォンデミリア王国がある世界なのか、それとも第三の世界に飛ばされたのか。それすら分からない場所に転移してしまったらしい。まずは情報収集からだ。2人は周囲を見渡しながら道を進んだ。
「何だろう?見た事のない街並みだな」
「建物の造りが独特だね。旅してた頃の私でも見た事ないよ」
「じゃあやっぱり第三の世界に転移したんだろうか?」
「う〜ん、今は何とも。断言できる要素がないとも言い切れないし」
カーンカーンカーンッ
突然やぐらの上から鐘の音が響き渡る。通りにいる武装した者達は一斉に同じ方向へ走り、そうでない者達は反対側に逃げた。
「何だ?」
「何が始まるの?」
「行ってみよう」
やぐらの上から鐘が鳴るとなると不穏な気配がしてならない。それは先程武装した集団が向かっていった事が証明している。弘也とナスティも後を追っていった。戦士達が何かを迎え撃つ陣形を形成している。彼等と向かい合っているのはモンスターだろうか。いや、ただのモンスターじゃない。
「あれは!」
向かってくるのは大きさこそゴブリン位だが身体は痩せ細った赤紫色。一本角の頭部は大きな目が飛び出て牙を剥いている。腕と足は細いが手と足首が異様に大きい。そんな連中が四つ脚で駆け寄ってくる。戦士達はそれ等に向かって剣を、斧を振るっていく。
「ダイモーン?!何でこんな所に?!」
ナスティはとっさに手をハの字にして第五元素の魔法を唱えた。
[マアナ・ユウド・スウシャイ 宇宙の神アザトースよ 虚ろなる夢から目覚めよ 汝が持ちし破滅の力 今ここに解き放て]
天から無数の光の矢が降り注ぎ、ダイモーン達に次々と襲いかかった。降り注ぐ光の矢は動き回るダイモーン達の動きを逃さない。
「あの魔法は!」
「ロンだ!ロン・トレワヴァスの再来だ!」
ダイモーンの撃退を確認したナスティが魔法を止めると、ナスティの魔法に住民達全員が湧き上がった。その中に舌打ちした者達がいるのを彼女は見逃さなかった。
「何故彼の魔法を知っている?あれは彼の独創呪文のはずだ」
「彼に会った事があるんです。魔族を倒す方法を教えてもらう為に」
「ロンは大戦後、もてはやす人や弟子入り志願する人達に嫌気がさして人々の前から姿を消したって聞いたぞ」
「エルフの森に彼がどこにいるのか知ってる者がいました。と言っても先程の話を聞く限り、簡単には答えてくれないでしょうね」
戦後のロンについて聞けるのかと期待していたが"つまらない"と住民達は散り散りに去っていった。
「ところでここはどこなんだ?ナスティの知り合いがいる辺り、フォンデミリア王国がある世界みたいだけど」
「ロンを知ってるところから考えると、ここはヴァナバイラだよ」
「ヴァナバイラって確か50年前の激戦地の1つ。確かナスティの師匠だった・・・えっと、ロン・トレワヴァスが防衛に参加したってのはここの事か」
「まぁそういう事になるね」
「しかし何だってこんな普通の街が激戦地になるんだ?それ程戦略的価値が高かったのか?」
「そうだね。魔族がこの地を重点的に狙ったのは前線基地にするのに丁度いい場所だったからだよ。ここからならどこの場所にも攻め入る事ができるから」
「攻め入る事ができるって?」
「それはね・・・」
2人が情報収集の為に辺りを歩いていると、いかつい戦士達が立ち塞がった。先程舌打ちした人物も混ざっている。
「ちょっとあんた達。俺達の仕事を奪って貰っちゃ困るな」
「仕事?」
「俺達はあの魔獣を退治する為にこの街に雇われてるんだ。簡単に全滅させられちゃ商売上がったりなんだよ」
「商売・・・?ダイモーン退治が?」
「まあ待ちなさい。この者達もここに来たばかりの様じゃしな。私から話そう」
街で一番偉い人だろうか。初老の男性が後ろから姿を出した。街の長といったところか。2人は商売の理由を説明しにある場所へと案内された。後ろから斧を持った集団も一緒に付いてきたが。
「ところでお主はロンと会ったそうじゃが、どうだったね?彼の印象は?」
「取っ付きにくい人でした。出会って間もない頃は私をずさんに扱ってましたし」
「ほっほっほっ。昔と変わらんな。わしも当時戦闘に参加しようとしておったが、非力な小僧はいらんと突っぱねられたからな」
「今の私でも半人前としか扱わないと思いますよ」
そう話しながら街の長は街外れの場所に2人を案内した。先へと進んでいくと次第に怪しげな色をした何かが渦巻いている空間が見え始めた。
エピソードがまとまったら順次公開していく予定ですので、是非ブックマークしてください。
よかったら、広告の下側にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にお願いします!
(ユーザー登録しないと☆☆☆☆☆は出現しないみたいです。)
評価してもらえるとモチベーションがUPし、今後の執筆の励みになります!




