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異世界刑事  作者: project pain


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19/22

旅エルフの災難<5>

──弘也・ナスティア班:クリエスタ町


和司と別れた弘也とナスティアは、目撃者がいないか近隣の家々を回っていた。


「ねぇ、あの人一人にしてよかったの?」


「一緒に行動した方がよかったか?」


「あんな何考えてる分からない人よ。気になるじゃない」


「大丈夫だ。ああ見えてあいつ、間違った事はしない。いつも適切な判断をする。現にフェルガス逮捕はあいつのアイデアだろ?」


「信用してるんだ」


「付き合い長いからな・・・」


そう話しながら弘也は現場に一番近い家のドアをノックした。出てきたのは初老のエルフだ。顔はしわだらけ。髪もひげも真っ白だ。弘也は警察手帳を見せた。


「失礼します。自分は春日といいます」


「あぁ、あそこで人が死んでたって話かい?」


「えぇ。それで、この付近で何か見えたり聞こえたり、普段と何か変わった事はありませんでしたでしょうか?どんな些細な事でも結構です」


そうだなぁ、と男はひげを撫でた。


「"何で俺を襲うんだよ"って男の声が聞こえたかな」


「何で俺を襲うんだ、・・・ですか。その前後のやり取りは何か聞こえませんでしたか?」


「何か話してたみたいだけど、よくは聞こえなかったな」


「何で俺を・・・何で・・・ね」


マル害と犯人(ホシ)は面識があったんだろうか。


「ちなみにこの辺りはエルフが集まって住んでるんですか?」


「50年前の戦争の時に女子供はここにかくまわれてたからな。そっちの嬢ちゃんは旅エルフ?・・・いや、森エルフか」


「えぇ、まあ」


「あんたも辛かっただろう。目の前で同じエルフ族が死んでいたなんてな」


「お別れはしておきました」


「そうかそうか。それなら、あやつも浮かばれよう」


「お知り合いだったんですか?」


「そうじゃな。あやつが来たのが40年程前じゃったかな。子供が病気の時なんか薬草を煎じて治してくれてたんだよ。あれはよく効いたわぁ」


「普段の様子はどうでしたか?誰かと揉めてる様な事はありましたか?」


「そんな風には見えんかったな。子供達も懐いておったし」


「そうですか。貴重なお時間頂きありがとうございます。また何か思い出した事等ございましたら、いつでもご連絡ください」


礼を告げると弘也はその家から離れて歩き始めた。


「もう終わり?あの酒場に戻るの?」


「何言ってんだ。この周辺の家を全部回るんだよ」


「そんなぁ〜」


こんな事なら和司の方に付いていくべきだった。耳をだらんと垂らしたナスティアは弘也の後を追った。




──和司:通話中


和司は話し貝でギルマスに連絡を取ってクエストの詳細を聞き出していた。事件があった場所しか聞いていないからだ。


『依頼主はマヤ・ドミナー。何でも朝、起きてみたら家主がいなかったので、外を探していたら遺体を発見したのだとか』


「じゃあ第一発見者のマヤって人がクエストを出したのか?」


『そうですね。被害者はアルク・シルフィド。薬草学者だったそうです。家の住所はクリエスタ町3番地の7。依頼主はそこで待ってるとの事です』


「一つ確認を取りたいんだが、今回の犯人が人間だった場合、法政院はどう対処するんだ?また即極刑とかゴメンだぞ」


『法政院だって人間だったら裁判はしますよ』


「前例はあるのか?」


『疑い深いですね。もちろんありますよ。現にあなた達が昨夜逮捕したフェルガスの件については人族でしたし、結果的には裁判へと至りました。ですが、これはあなた達が直接目撃したという現行犯が認められたからです。今回の事件は現行犯ではないですからね』


和司は小さく舌打ちした。


「つまり現行犯で押さえなければ、揉めると」


『そうですね。あなた達の様なやり方が通用するかどうか』


「分かった。厄介な話だが、犯人(ホシ)を逮捕する方向で進める」


『要件はそれだけですか?』


「そうだな。また何かあったら連絡する」


話し貝を閉じた和司はしばらく黙り込んだ。




──和司:被害者、アルク・シルフィド邸


聞いた住所を元に住宅街の中央から下る坂道を降りていくと、近くに森が見えてきた。そのせいだろうか、風が涼しく感じる。


「3-7、3-7は・・・」


この辺りだろうか。曲がり角を抜けた先に淡い青の屋根を持つ二階建ての建物が建っている。その入口に栗色の髪を後ろでまとめた若い女性の姿があった。両手を胸の前で組んではいるが、身体が震えている。顔は疲労と不安の色に染まっている。和司は警察手帳を見せた。


「ギルドからクエストを受けてまいりました、前川と申します。あなたが依頼人のマヤ・ドミナーさんですか?」


「はい・・・そうです。あ、立ち話もなんです。中へどうぞ」


「失礼します」


門をくぐると庭一面に薬草が植えられていた。何種類かごとに区切りを付けて、丁寧に育てられている様だ。草の匂いとは違った、ハーブの様な匂いが鼻をくすぐる。薬草学者らしいたたずまいだ。


「こちらへどうぞ」


中に案内されると部屋は応接室でもリビングでもない、いわば図書館の様な場所だ。壁一面に本が並び、それが床から吹き抜けの天井までぎっしりと並べられている。


「凄い本ですね」


「アルク様はエルフですからね。毎日読んでるとこの位の量になるんですよ」


「あなたはアルクさんとはどういったご関係なんですか?」


「アルク様のお世話をする・・・言うなれば使用人みたいな物です。今、お茶を入れてきますね」


「お気づかいなく」


和司の言葉を聞かずにマヤは奥へと入っていった。何かしないと落ち着かないのだろうか。その間に和司は並べられている本のタイトルを眺めていった。


「薬草の混植栽培法、精霊の加護と根の保存法、月下の治癒草か・・・」


「お待たせしました」


戻ってきたマヤは震える手でティーポットを置いた。つらいだろうに、何とか笑顔を作っている。


「亡くなられたアルクさんを発見した当時の様子についてお聞かせ願えますか?」


「はい・・・朝、私が起きた時にアルク様がいなかったんです。それで私は・・・」


マヤの声は震えていた。


「庭も探したし、近所も探したけど、どこにもいらっしゃらなくて。それで、もしかしたらと思って森の方に行ってみたら・・・・倒れていて」


「森?坂道を降りる時に見かけましたが、あの森の事ですか?」


「はい。ちょっと待っててください」


立ち上がったマヤは小走りで別の部屋に入っていった。しばらく大きな音が聞こえたが、それが静まると一枚の紙を持って戻ってきた。


「ここです。ここから・・・ここまでを契約してます」


広げられた地図をスマホで撮影しようとすると、地図を強引に押してこちらに押し付けてきた。スマホを知らないのだから仕方ないか。和司はそれを畳んでポケットにしまった。


「最後にアルクさんを見たのはいつですか?」


「昨日の夕食の後です。森に植えた新しい薬草の様子を見に行くと言って外出されて・・・」


森で栽培?遺体を見た時には靴裏にそれらしき土は付着してなかったが・・・。行く時に襲われたのか?


「彼は何かトラブルを抱えてませんでしたか?誰かに恨みを買う様な事とか」


「そんな話は聞いた事がありません。アルク様は争いを嫌う方でしたし、研究も一人でされてました。ご近所の皆さんとも仲が良くて・・・」


「なるほど。今日はこれで失礼します。また、お伺いする事になりますが、その時はよろしくお願いします。あらためて、お悔やみ申し上げます」


部屋を出ようと振り返った時、マヤは声を上げた。


「ヴァンパイアを生け捕りにされたんですよね?!どうか!どうか!アルク様を殺した相手を探し出して!・・・殺してください!!」


立ち止まっていた和司はゆっくりと振り返った。それまで青ざめていたマヤの顔が赤くなっている。不安から怒りに変わっている様だ。


「マヤさん、申し訳ないですがそれはできません」


「どうしてですか?!」


「我々は逮捕した相手をどうこうする権限を持ってません。どう裁くかは法政院が決める事です。ですが・・・お約束しましょう。必ず犯人を逮捕すると」


「そう・・・ですか。よろしく・・・お願いします・・・」


マヤが深く頭を下げると、部屋の中にまた静寂が戻った。


外に出ると、昼の日差しが庭の薬草を照らしている。風が通り抜け、その香りがふわりと漂った。


「さて、どうすっかな・・・。先に畑を見に行ってもいいが、ヒロ連れて行った方がいっか」


マヤについては心が落ち着いてから話を聞くのがいいだろう。ひとまず集合場所のフォンストリートに戻ろう。和司は来た坂を登り、帰路についた。

エピソードがまとまったら順次公開していく予定ですので、是非ブックマークしてください。


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