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異世界刑事  作者: project pain


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静寂の寝室<9>

──酒場・フォンストリート


南の丘にある畑に行ってみたが、辺りは農作業をしている一般市民が行き交っていた。通り道は誰が通ったのかも分からない位荒れていた。


「ダメだな。あの男だったとしても確証がなさ過ぎる」


「あの巨大コウモリを現行犯逮捕するしかないか・・・」


「どうやって?」


「それが分かれば苦労しないさ」


二人がフォンストリートで会議をしている時、アルバートが大きなハッシュマークの飾りを壁にかけ始めた。


「アルバートさん。それは?」


「あぁ、これかい。もうすぐ誕生祭だからね。うちも毎年飾ってるんだよ」


「誕生祭?」


「この街の伝統的な行事でね。この四つの線はそれぞれ火・水・風・土を意味してる。それ等が囲んで光を迎え入れるっていうシンボルマークになってるんだよ」


「誕生祭・・・光・・・」


「そうか!」


弘也は思わず立ち上がった。


「隣同士なのにリリーが襲われず、メアリーが襲われたのは偶然じゃない。リリーの家にこの飾りがあったからだ」


「確かにミーナの部屋にもそれらしき物は見当たらなかった。もし、このシンボルをヴァンパイアが嫌っているのだとしたら」


「次の被害者を出さずに済む」


「問題は、この印をどれだけ用意できるかだな」


「俺に考えがある」


和司はテーブルに置かれていたナイフとフォークをちぎったハムの紐で結んだ。


「これで完成だ」


「雑ーー!」


アルバートが笑い声を上げた。


「いいじゃないか。誕生祭の飾りと食器、両方の役割を果たせるんだ。いっそうちのシンボルにしたいね」


「お、面白そうじゃん。早速使えそうな調理道具持ってくるよ」


この話にメグまで乗ってきたよ。弘也は頭を抱えた。


「だけどこの手は使えるな。どの家でもその場にある物で作れるからな。早く一帯の市民達に知らせないと」


「それはまだ早い」


「何でだよ?」


和司はニヤリと笑みを浮かべた。


「ちょっとした仕掛けを作るのさ」


和司が黙っている時は何かを真剣に考えている時。喋っている時はロクでもない事を考えている時。この場合は明らかに後者だ。何をやらかす気だ、こいつは。




──夜


忌々しい――。


屋根から屋根へと飛び移りながら、コウモリは街を見下ろしていた。あの家はダメだ。玄関にあの忌まわしい印が掛かっている。こっちもダメ・・・あそこも、ここにも吊るしてやがる。


牙をきしませ、舌打ちする。


残されたのは一本の通りだけ。


あえてそこだけが、印の影に覆われていない。


「・・・ふん。愚かな人間どもめ」


コウモリは翼をたたみ、闇を切り裂くように降下。


ひらりと地上へ着地し、影の様に駆けだした――


その瞬間、闇の正面から銀の閃光が飛来した。硬い衝撃とともに頬が焼ける。


「っ・・・!」


「どうだ、ヒロ!俺の言った通りだろ!」


暗がりの奥から和司の声が響く。


「何でもいいから形にしちまえって話の事か?」


「違う!コウモリを誘導する作戦の方だ!」


和司はスリングショットに次の弾を挟んだ。ハッシュマークをコウモリが嫌っていたのは、それが光を呼び込むシンボルになっていたから。だから通りという通りにハッシュマークを吊るし、進路を塞いでいく。残された一本の道筋は、必然的に自分達の待つ場所へと収束する。これが和司が考えた仕掛けの正体だ。


「悪いなコウモリ!一帯に住む子供達は全員避難させた!ここにはお前の餌は一つもありゃしないのさ!」




──ギルド

ギルドのホールにはイヴラクィック町の14〜15歳の女の子達が集められていた。彼女達はお泊り会みたいで面白い、とはしゃいでいる。それを前にギルマスは溜め息をついた。


「うちを何だと思ってるんでしょうね・・・。合宿所じゃないんですよ」




──話は戻ってイヴラクィック町


和司が銀の弾を撃ち放つと、弾はコウモリの左肩に命中した。羽ばたきが大きく乱れ、コウモリは苦しげにフラフラと不安定な飛び方をしながら屋根の上に着地した。


「よし、効いてるな!」


和司は再びスリングショットを構え直すが、追撃の前に黒い影は屋根から屋根へと飛び移り、南西の風帯に乗って遠ざかっていく。


「おい、あれ本当にコウモリか?!足早えぇな!」


「関心してる場合か?!後を追うぞ!」


「冒険者達は?!」


「皆あさっての方を駆け回っている!一番近くにいるのは俺達だけだ!」


「だったら邪魔される事はないな!行こう!」


和司達はコウモリが逃げた南西の外縁へと向かった。二人の想像が正しければコウモリが行き着く先はあそこしかない。


「あいつに銀の武器で負ったダメージ痕を確認できたら詰みだ」

 

頬を焼いた閃光の記憶と、左肩に走った手応え。それが一致すれば言い逃れはできない。和司の言う通り、詰みだ。

エピソードがまとまったら順次公開していく予定ですので、是非ブックマークしてください。


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