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仮初めの恋人

 僕の名は加藤実、高校二年生だ。

 僕には今まで彼女が出来たことなんてなかった。

 彼女が居ると時間を無駄に消費する気がするからだ。僕の人生において余計な産物だと思っていた。だからつい最近まで彼女が居なかった。

 そうあの日までは……。

 それは3日前の話だ。

 僕はいつもの様に下校をしていて、その後、珍しく人通りの多い街中に行った。

 僕は人より観察力がある。そして、よく色んな所を観察する。

 この時は偶々人間観察をしており、それが災いした。

 信号が青に変わり交差点を歩くと、向こうから一人の美人で可愛いらしい同い年くらいの少女が歩いて来た。

 僕は彼女に目を奪われ、彼女を観察していると、彼女の後ろから猫背の男が歩いていた。

 その男は彼女に近づているように見えた。

(何だろう?)

 と僕は思い、二人を観察していたら、彼は彼女の背後に迫った。そしたら、彼女の右手から一瞬キラッと光る物が見えた。

 ナイフだった。

 そして彼女は右腕を後ろに回すと、彼は少しヨロッとした歩き方になり、彼女は一瞬赤みがかったナイフをスッと自分の服の中に隠した。

 その男と彼女との距離は少しずつ離れ、彼女は少し微笑んだ。

(殺った)

 と僕は思った。一部始終を観てしまった僕は歩きながら、戦慄してしまった。

 そして笑っていた彼女と目が合った。

 彼女はぴくっとして、僕の方を見る。そして彼女は少し小走りで僕の方に近づき、腕を取り、僕を引っ張って行った。


「きゃーーっ」


 と女性の声が交差点で響くのは、僕が歩く方向から逆に引っ張られてから10秒後だった。


 そして僕は彼女に狭い路地に連れて行かれ、


「見た?」


 と彼女は僕に言った。


「な……何を?」


 僕はシラを切っていると、彼女は懐からサイレンサー付の拳銃を取り出し、僕の口の中に入れ、


「見た?」


 ともう一度問うた。


「み、見まひた……」


 僕はそう答えるしかなかった。僕は怖じ気づいていた。一瞬拳銃は偽物かと疑ったが、男を刺した経緯から本物と思った。


「そう、見たのね……」


 彼女は少しため息をついた。


「私の動きを見られるなんて……。貴方なかなかの観察眼ね。けど、あまり観察力があるのも問題よ」


 彼女は僕の口に銃口を入れたまま言った。

 僕は頷くしかなかった。


「なぜ銃口を口に入れているか分かる?」


 僕は戦慄し、恐怖で涙を流しながら、首を横に振った。


「あら? 本物の拳銃と分かっているのね。なかなかやるじゃないの。あっ、そうじゃなかったわね。それは貴方を叫ばさないようにするためよ」


 彼女はニヤリと笑った。


「出来れば私は貴方を殺したくないわ。どうしたら良いかしら?」


 彼女は考える素振りをした。そして閃いた顔をして言った。


「私の彼氏になってくれない?」

「は?」


 僕は驚いた。

(彼氏!? 一体なんのことだ?)

 そして彼女は多少の経緯を話してくれた。

彼女は中国の諜報員らしく、子供の頃から中国で育てられた。そして、日本へ送り込まれたスパイになったらしい。

 だからある程度日本のことを色々知っているそうだ。

 しかし、彼女は中国の制度に嫌気が指してきた。

 そして中国での諜報員の仕事を破棄し、日本で過ごしていたそうだ。

 そして今回男に見つかったが、


「国から送り込まれたスパイではなさそうだったわ。単独犯って感じだったわね。賞金稼ぎといったところかしら」


 彼女はあっけらかんと答えた。そして彼女は続けた。


「あの男の話より貴方の話をしないといけないわ。どうする? 彼氏になる? それとも死ぬ?」


 僕はよく分からなかった。どうして彼女の彼氏になれば、助かるのか?


「どうひて、君の彼ひになったら、助かるんだ?」

「もっともな質問ね。それは……」


 それは、彼女の身元を保証し正体を隠し、匿って貰うためにだそうだ。

 いわゆる身元保証人のようなものだ。

 それは当然かもしれない。

 日本で身寄りが無いであろう彼女にとって、誰かの助けが必要だ。

 それに仲の良い日本人が居れば、周りはまさか彼女が諜報員だと疑われることはないだろう。

 つまり、僕といることで彼女は日本においてある程度の身元が保証されるということだ。

 けど、僕は彼女を作るなんて真っ平ごめんだ。自分の時間を奪われしまう。ましてや中国人の諜報員なんて……。


「はひ。宜しくお願いしまふ」


 僕は生命には勝てなかった。


「そう、ありがとう。でも、少しでも周りに私のことを漏らしたら……」


 口から拳銃を取り出し、銃口を上に向け撃った。


「これだから」

「……はい」


 彼女はニヤリと笑い、薬莢を拾った。そしたら、救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきて、


「長いは無用よ。行きましょう」


 と彼女は僕を引っ張っぱり、反対側の路地から走り出た。


「私はメイ・インリン。貴方の名前は?」

「……加藤。加藤実」

「そう。これからも宜しくね。実」


 僕はインリンとの不思議な恋人関係が出来て仕舞った。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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