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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第9話 真理

第九話 真理


『なんだどうした?早く申さぬか。私の気は短い。早くしろ?』



 何を質問すれば良いのか正直分からない。知りたいことは山ほどある。しかし、目の前にいる王を信じてここまでやってきた。

 

 それこそが真実であり、それ以外の何者でもない。例えば嘘だとしても今自分が浸っている環境を変えたくない。



『あんたは俺らの敵か?さっきのやりとりもこいつを通じて聞いていたんだろ。』 



 その沈黙を破る者がいた。団体に属さず、自分の意思を貫く。それが竜を切り伏せたこいつだ。 



 それを聞いたリーム王は巳波の装備から腰につけたレイピアをするりと取り外し、鞘の一番下につけられた竜の眼をあしらった赤い紅玉を取り外し、王の前に無作為に投げ捨てる。いくら無礼講とは言え許された行為ではない。しかし、時間が進まない。まったくもって理解が追いつかないのだ。 



『おお。お前は堕落王。何もしない事にこの二ヶ月を過ごしたまごうことなき王ではないか。よもやこの存在も知っていたとはな。お前は世の理をどこまで知っておる?』 



『俺の質問にも答えろよ。全てだ。エルタネ公国の第二王妃の事まで俺は知ってる』



 空気が張り詰める。時間が進まない。いや、正確には二人の王だけの物となる。 



『敵か否かの問いだったな。敵だ。お前の妄想も全て当たっている。さぁ、堕落王、お前もあの子娘について答えろよ?』  



『お前にペラペラと喋るのは些かシャクなんだが、女性からのダンスの誘いは断らない主義でな』 



『勿体ぶるなよ。早くしろ。答えによっては斬らねばならないのだならな』



 ゆっくりな口調ではあったがその表情に余裕は消え失せた。脂汗が互いの頬を伝わり落ちる。



『俺以外にこっちにきたやつは八人いる。そいつらの一人には世界を統べる能力を持っている奴がいる。ここまで言えば誰か分かるだろ?』



『世迷言を。私の崇高な意思がわからない出来損ないの私の妹は竜を捕縛するときに隣国に知らせようとした裏切り者だ。ちょうどこいつを使って始末したがな。』



 懐から小さな紫色のカプセルを取り出し、地面に落とす。するとカプセルが、割れ人の背丈よりも大きな蜘蛛型の魔物が姿を表す。瘴気を帯びたその生物は東京を襲った決定的な証拠であり困惑しない者はいないであろう。



『お前の中の崇高ってなんだ?東京を滅ぼすことか?国にいる全ての人間をしに至らしめる事か?ふざけるなよ。お前は人をなんだと思ってるんだ?命をなんだと思ってる?答えろ!』 



 智は体から血を流し、言葉を紡ぐ。その言葉は威圧するのにちょうど良かった。 



『何を怒る?国民など、人を攫えば直ぐに増える。国の為、民が王に命を差し出すなど当たり前のことであろう。現にそれで人工的に作った蜘蛛型の魔物の性能は向上した。エルタネが有数の軍事力を保つ為には必要な事なのだ』



『アイツはそんな事言ってなかったぞ。お前の妹のシュリエは兄であるお前が父親を手にかけ、飛竜が暴れた時の国民の悲痛な顔が忘れられない。未だに夢に出てくるって言ってた。国が国民の上に成り立ってどうする?国の上に国民が成り立つべきだろ。』



『知った口を叩くな小僧。先代の王はな、武に秀でた我ではなく、世界線を転移門を使わないで好きな時、好きな場所に異界に転移する研究を始めた妹に王位を受け継がせようとした。三年足らずの研究しかしておらんのに、20年以上武を積んだ我を差し置いてだ。この侮辱に耐えられる訳もなく、私は自分の力を見せつけようとし失敗した。だから、やり直さなければならぬ。例えどんな手を使おうと国を再建しなくてはならない。』



交わる事のない両方の正義。やり方は違えど国を思うその気持ちには偽りは無い。



『俺はな。あんたの口からごめんなさいの一言が聴ければ十分だった。自分の国のいざこざにこちらの人間を巻き込んで、盟約に違反した。俺はお前を監督者の権限に置いて罰する。そして、お前の妹を正式な皇族としてエルタネ公国に即位させる』



『ふっ。アハハハハハそうか。お前がそちら側の余と同じ世界の監督者か。通りで世の理に詳しい筈だ。我が妹もあの危機的状況から生き延びたとは考え難かったが、そちらで創生の一族が手を貸していたなら肯ける。』



『何どう言う事なの?』



 二人の世界に置いてかれた皆を助けるべく巳波が口を開き、横槍を入れる。全く要領の得ない言葉が飛び交い合ったが、真意が見えてこない。



『この際だ。世界の真理とやらを話してやってはどうだ?俺も正当な監督者ではないからぜひご教授願いたい。』



 上から物を言い、教わる気など微塵も感じない。しかし、知りたいと言う気持ちは本心なのか先程出した蜘蛛を一歩下がらせて、話合いをしようとする格好をみせる。



『分かった。世界の理を話そうか』



 短く答えるや否や眼を瞑り、ゆっくり深い呼吸を行う。身体から出る血を気にすることもなくゆっくりと置いてきぼりになってしまった人の為に説明をしていく。


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