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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第44話 伝言

第44話 伝言


「聞かせて。それがどんなに辛いことでも私は聞きたい。それを受け入れます!」



 膝の上で爪が食い込むほどの力で由加里が声を震わせていた。



「じゃあ、本人の口から聞かせてもらおう。エーデルさんと、おかもっちゃん、悪いんだけど運んできて」



 岡本がテント郡の方に指を向けてボソボソと詠唱をする。するとテントの一つから土塊でできたジンジャークッキーのようなデザインの巨人が布を突き破りながらこちらにやってくる。腕には木棺が優しく抱かれていた。



「全く、老体にこんな仕事をさせて草葉の陰から智様を呪う日も近いですなぁー」



 背中にはエーデルがしがみついており、下された木棺をゆっくりと開ける。



 中には丁寧に小さな傷などが癒されたガルデの死体が、花に包まれていた。



「こうしているとやんちゃだった幼少期を思い出します。で、これをどうする気ですかな?返答次第によっては貴方をホルマリン漬けにして、そのまま傀儡にしなくてはいけない」



 そう言っている合間に智はどこからともなくガルデの心臓目掛けて小さな針を打ち込む。その先端部は心臓に突き刺さり、頭の部分を爪で軽く弾いた。リーンと鈴虫が鳴くような音が響き渡った。



「ガルデ様に何をするのですかな?」



 あっという間に智の背後に回り、人形の髪の毛を整えるのに使う小型のハサミで智を背後から斬り付ける。キィィィンと言う音と共に火花が散り、一本のメスの刃が宙を舞う。



「おや、これは可愛らしい護衛だ。そんなチンケな獲物で次を防ぎ切れますかな」



 距離を取り、智の背中に向かって話しかける。その動きは老体とは思えないほど俊敏で、獲物を自由自在に振り回すその腕は全盛期よりも衰えを感じさせない。



「小さいからこそ、出来ることも沢山あるんですよ。例えば、誰にも気づかれないで貴方の首にこのメスを刺すとかね」



 その護衛は小さすぎて声を上げるまで誰が分からなかった。



 さっきまで智の首元に爪を立てていたのに今は立派に護衛を行う。その場にいたものの思考が追いつかなくなるにはそれで十分だった。



 2人の戦いは熾烈さを極めていた。エーデルの攻撃はその身体の小ささゆえに全て寸前で躱され、カナのメスを投げる攻撃は手数を増す毎に相手の体に掠る。



 互いの獲物は幾度となく火花を散らしていたのだが、ついに老体が膝をつきその瞬間をメスが逃がさない。カナのてから鋭い角度で放たれた獲物は最短の軌道で獲物のうなじへと吸い込まれていき、本来であればそれで勝敗が決するのだが、獲物は突風により軌道を変え地面に突き刺さる。



 由加里が無理矢理割って入ったのだ。


「エーデル、立って距離を取ってください。前衛では私が戦います。貴方は中距離から隙を突いてください。貴方は自分の魔力じゃ戦えないからってズルをしている。このぐらいの手助け問題ないでしょ?」



「酷いいいようですね。私はただ智さんを守っただけですよ。忠誠心とやらに酔って、智君を殺しては色々な事が分からなくなりますよ。それにズルってなんの事ですかね?」



「貴方が履いている白いブーツ、脱兎っていう高速移動ができる魔物の皮を使った魔法道具でしょ。回復魔力しか使えないあなたが使えてるって事は誰かから魔力をもらったのかな?老人1人とやり合うのに、小細工しないと戦えないなんて回復魔道士なんて哀れね」



 その一言でカナの怒りの頂点に届いてしまったのか、雰囲気がガラッと変わる。



「好きで回復の魔力を選んだわけじゃない。貴方こそ、私が止めなかったら智は死んでいた。何か考えがあってやった行動なのに、それで殺されなきゃ行けないっておかしいと思わないの?箱入り娘だそう思わないのかな?」



「それを理解するより私達にとっては兄さんが大事なの。口で言っても分からないなら力でわからせる」



 拳を握り、魔力を拳から放出させびゅうびゅうと風を切る音が響く。カナは回復を専門とした魔力を持っているのだが、自然界に存在する7つの属性の魔力とは異なり回復にだけ特化している。平たく言えば基本的な魔力で身体を守ったりする防御魔力や身体を強化したりする強化魔力が著しく低い。



 戦闘でも後方支援のさらに後方に位置していたぐらいなのだが、もし由加里の一撃が見事決まってしまったらカナは跡形もなく吹き飛ぶであろう。



 それほどの戦闘力の差が著しいのだ。



「じゃあ、こっちも助っ人ぐらい良いよね?」



 そう言って巳波と秋宮、田代がカナの方について由加里の前に立ちはだかるのだった。



 同じ調査隊の中であっても一枚岩ではない。こうやって対立することも少なくはない。



 しかし、今までの小競り合いとは異なる事は一目で誰の目にも分かる。



 一国のお姫様と本格的に対立したらどうなるかなどは火を見るよりも明らかである。



 しかし、一番真実を知る智がいなくなってしまえば10年来の努力は水泡になり、異世界調査隊が今後何をすれば良いのかも本格的にわからなくなってしまう。


 

 それを避けるために田代と能田がカナの味方をした。


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