第36話 それぞれの目的
第36話 それぞれの目的
「いやー、中々大変だったみたいだけどね。監督者は自分の世界しか守れないとかほざき出したし」
「ん?ならどうやって?」
ひょうきんに語る智に秋宮が好奇心から質問を浴びせる。
「エルタネや空間の魔力に目覚めた監督者の一族が各世界を回って強い魔物を倒して旅をして、一つの世界の人の人数が増えて新しい世界に人が飛ばされる場合もといた世界では忘れられるし、その人自身の記憶も昔からそこにいたように上書きされるから、それを助けるのが筋だろって言って光の国のエルタネと空間の監督者が戦争を仕掛けて、11年前にやっと分かって貰えた」
それを和かに語るが、異世界ではそんなことが起こっていたのかとノイドのメンバーは驚きを隠せない。
みんなが引き聞いたことを後悔している様であった。
「それが俺の先祖の一族になるんだ。で、次は10年前の話になります」
焚き火も若い枝が大体燃え尽き、乾燥した太い幹に近い部分が静かに燃え盛る。どんどんと枯れた灰色の炭になっていくのだが色は濃くなっていく。
「ここから先は俺の目的と今後の世界についてに詳しく触れるんだけど、これを聞いたらもうみんなは俺のことを軽蔑することになるだろう。できれば俺は話したくない。だけど、みんなには知る権利がある。さぁ?どうする?」
マシュマロを多少強引に口の中に入れ、刺されていた枝を小さく手の中で砕く。周りに目を向けるが誰一人でしてこの場から去る者はいない。話をした後に今までの関係でいられなくなる事を悟った。
「目ん玉ぎょろぎょろさせてどうした?」
「さしづめ、俺たちと関係が気まずくなるとでも思っているんだろう」
中坪の疑問に川瀬が淡々と答える。その表情はいつも以上に苛立っているように見えたが、それもその筈であろう。自分達の世界に迫る危機を取り払う為に異界に来た筈であったのに、いつのまにかそれを企画したサークル長の智が黒幕かも知れない。
もしも、黒幕であるならばノイドの為に切られるのも致し方ない。
「そんな下らない事で悩んでいたんですか?」
「頭が良いのに、いつも被害妄想が激しいけどここまでとは思いませんでした。私達を見縊らないで下さい」
小悪魔的な表情の岡本と呆れ惚けた表情の米宮が愚痴りだす。
「ここに来てそんな愚問を気にしていたのか?お前のことを嫌いになったとしても扱いが変わる事は無い。俺らは元々お前の事が嫌いだから大丈夫」
最後の中坪の一言でまた智の気分が沈む。途中までは気分良くニュートラルになっていったのに、その影がないほど表情が暗くなり塞ぎ込む。
(お真今、そういう空気じゃ無いだろ。)(でも、いつも調子に乗って女性に思わせぶりなセリフを吐いてるから偶には良いんじゃ無いですか?この前のバレンタインで34個もらったらしいですよ。)
(え?俺なんて一個もないのに?)
(じゃあ偶には被害妄想を爆発させときましょ。)
コソコソと様々な言葉が行き交う。
「ってのは冗談でどんな結果になったとしても俺たちは智について行く。だから、話してくれ。俺たちに都合が悪いってだけでお前のことを嫌いになるやつは居ないから大丈夫。死地を共に潜り抜けた奴らなら尚更だろ」
それに続いてその場にいる人が頷いたり、するのだが、素直にその気持ちを受け取る事ができない。よく分からないが、きつい心を抉るような攻撃をされてささくれてしまったのか心の中で色々な感情が渦巻いていた。
「そんなに目くじらを立てないで下さい。男前が台無しですよ」
ラフな麻布で身を包み、顔を赤らめたシルヴィが何処からか現れ、智の首に腕を回し、体を密着させる。普段ならば男として喜ばしい状況なのだが今回ばかりはそうは言ってられない。
「酔いは覚めましたか?」
顔に両手を当て、智がシルビィの顔を触る。身体が火照っているのかどうか触るとかなり熱い。
「「メイド長〜」」
二つの可愛らしい声がパタパタと音を立てながらやってくる。この二人も城に仕えていたメイドでいつもは立派な淑女なのだが酒盛りがあったせいか着ているものは多少乱れている。
「ほら、みなさん大事なお話をしていますし、テントに戻りますよ」
「皆さん、ご迷惑をお掛けしてすみません」
礼儀正しくお辞儀をし智から身体を引き剥がし地面に引きずらせながらテントに連行して行った。
「じゃあ、気を取り直して話そうか。本当の真実を。俺がここにいる理由の10年前からの作戦を」
そう言うと焚き火の火を見つめて話し出す。
「2人の神がいた時代を神代と読んでいたが、それを知る術は無くなった。だけど、空間の監督者が他の世界の様子を観測してた時に特異点を見つけた」
「観測? 特異点?」
由香里が聞き慣れてない言葉を聞き返す。
「世界がどれだけあるのか、監督者を探すため、魔物が、どこに出たのかを把握するためなこれを作った」
洞窟の中で自身に打ち付けた楔を地面に刺す。すると、青い光でいくつもの球体が現れ惑星軌道でそれぞれが孤を描く。
「各世界にこれと同じものが刺さってて、情報を得ることができる。強い魔物が出たとか、近くに新しい世界ができた可能性があるとかね」
その中でぽっかりと穴が空き不自然になにも映っていない場所がある
「この場所は?」
「それが特異点。魔力が濃くて何も映らない。神代の世界だよ。そこから昔何があったのかということを読み解き本当の世界創世記を完成させた」




