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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第30話 終焉

第30話 終焉


 魔獣との戦闘を切り上げ何人もの人間が司祭を取り囲む。智率いるボランティアメンバーの戦闘員を筆頭としてメイド長であるシルヴィ、その周りをメイドが固める。全員獲物で司祭を包囲し、文字通り鼠一匹入り込む余地はない。



「お前たちは本当にこの世界に救いがあると思っているのか?我々が支える世界を汚し、ただただ死んで行く。そんな事に意味はない。ならばせめて、全員が平等に死に世界の寿命が尽きた時に永遠にどこでもない世界を彷徨うものを無くすことこそが救済なのではないのか?」



「言いたいことは十分にわかる。だけど俺はな、お前の人が生きることに意味が無いって言う事だけには賛同できないんだよ」



 司祭の言葉に今まで以上に真剣な智が答える。


「何故だ?私にはそれが理解できない。お前は幼少期から色々な世界を巡っていたんだろう。ならば、意味もなく死んでいないだけで何もしていないような奴らがウジャウジャいる。これを異常と思うのは我々だけなのか?」



 嘆き、哀しむ。その悲痛な声に耳を貸すものは少なく無かった。何もしないという言葉に心当たりがある者も居た。



だが、それも杞憂で終わる。



「お前たちのせいで光の世界の民の寿命が終わってるって知っているか?」



 鳩が豆鉄砲をくらったようとはまさにこのような事だろう。地面に落ちた口は今まで以上に広がり表情も口がない為分かりにくくはあるが驚きを隠せていない。



『何を言っている?世界は灯りであり我々が闇を管理しなければ認知する事すらできない。我々のおかげでこの世界の住人は存在する事ができるのだぞ?』



『お前たちに伝わっている世界創世記だとそうだろうな。だけど、伝わっている世界創世記はどこの世界線であろうと内容が少しずつ違う。世界創世記って言うのはその世界が存続するための一文であり、それ以下でもそれ以上でもないんだよ』 



 頭が追い付かなかった。世界創世記はすべての始まりであり、その物語の中の知識から発展した物はいくつも存在する。



『世界創世記って言うのはその世界に都合が良い様に改変されたただの御伽話だって事?』



 由加里がぼやく。異世界の研究を行う者として、根底としていた絶対の一つの定理が覆されたのだ。驚きがないと言う方が無理な話である。



『完全な作り話って訳じゃないだけどある程度は改変されている。世界ができた時、人を既存の世界から移住させる。俺はさその過程で価値観の異なる生物を一つの価値観の元に集約させるその過程こそが世界の意思と言われるコントロールなんじゃ無いかと思っているんだよね。もしも、同じような世界創世記だとみんな似たり寄ったりの世界になってしまうから、当然と言えば当然なのかな?ノイドじゃ、魔力のことなんて一切出てこないしね。そうでしょ巳波?』



『確かに、元の世界じゃ、林檎を食べて知恵を得る話が有名だった』



 遠く離れていた巳波の言葉にノイド以外で育った 人達が驚きを隠せない。



『では、真実は一体?何が本質なのだ?』



『世界って言うのは一つの卵だ。それ以上でもそれ以下でもない。全てがその中で完結していたから成り立つ。もし、他の世界の事を知りたいと言って自分の世界の殻を破り他の世界の殻も破ってしまうと両方とも元には戻れない。それでも世界の本質ってやつを聞きたいか?』



智の顔が狂気的なまでの笑顔で歪む。



「世界創世記ってのはその中なら真実とされ、その外側では嘘とされる。極端な話、悪い奴の子孫です。生まれたら死んでくださいって世界創世記に書かれていたら人なんて育たない。現に今、自分の事でさえも知らない奴らが居る。お前達は誰のことか分かるか?」



 胸が締め付けられるように痛い。聞いた話を纏めると、世界が新しくできた時に記憶は書き換えられる。そうすると、子供の時にノイドに送られ、それからの人生をノイドで過ごしただけなのに、本当の自分はもっと別にあるのかもしれない。下手したら、隣にいる人がそうであって殺人鬼だったりするのかもしれない。人として別の人に生まれ変わった事と同等だし、気にする者なんて居ないと信じたいが、異世界調査隊内で疑心暗鬼に陥る。



 ある者はそこに立ち尽くし、膝を折ってその場に崩れてしまう人もいた。



「ノイドは空間の魔力の使用者を閉じ込める為に隔絶された特殊な世界だから他の世界から記憶を書き換えられて連れてこられたものはいないけどな」



『じゃあ、その自分を知らない人と言うのは?』



 由加里が口を開き、不思議そうにこちらを見つめてくる。



『それは、この闇の世界の奴らだ。世界の寿命が尽き、多くの人が闇の世界を彷徨うのは闇の世界の汚点であるこいつらが闇の世界に滲み出てきたからなんだよ。なのに、それをこいつらは知らないで、あたかも自分たちが世界を救う勇者だと思い込んでいるタチの悪い奴らだ。』



『どう言う事だ?闇の世界から滲み出てきたとはどう言う意味だ。私達は確かに闇しかない離宮と呼ばれるどこの世界にも属さない場所から来た。しかし、それが一体?我々が何故世界の寿命を奪っていると言うのだ?』



 地面に落ちた口は今までにないぐらい慌てふためく。それもその筈、今まで救うために良かれと思ってしていた事は結果的には自作自演。ここまで愉快な惨劇はこれまでもこの後も生まれる事はそうそうない。 



『俺たち空間を司る監督者の役目は全ての世界の安寧を守ることだ。その為にいくつもの世界に散り、遺跡や文化を記録する。そうして、真理とも言える全ての世界創世記を集約した世界創世記が完成した。それにお前らの正体が描かれている。焦らなくてもしっかりと見せてやるよ』



 地面に落ちていた魔獣の蜈蚣の尻尾を右腕に巻き付かせ、血を止める勢いで締め上げる。そこに、小さな楔を差し込んだ。

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