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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第22話 起死回生

第22話 起死回生


 粉塵が巻き起こり、位置すらも分からない。その状況に変わりはない。洞窟内に刀の破片が散ったと言っても、全体に等しく散った訳ではない。



 翼竜と対峙した場所に行けば行く程多く散りそこから離れた袋が置かれた地点では微風ほども吹いていない。

それに、袋の中に入っていたアイテムはガラクタとしか言えないものも多く、戦況は相変わらず芳しくない。



『使えそうな物は三種類か』



『カナちゃんと通信士のナギちゃん含めて四種類。使い方次第じゃない?』



 秋宮がこれしか無いのかと不満の声を出すが南がそれを取り仕切る。


秋宮 火属性     ジッポ

巳波 水属性     竹水筒

カナ 回復魔道士   古ぼけた包帯

ナギ 外部との通信士 小太鼓


『取り敢えずは視界を確保します。簡易型防壁陣形展開』



『『『はい!!』』』



 魔法隊を辺りに散らし、巳波が魔法隊の短い返事を聞き、水筒の中身を逆さまにして出す。薄く水域を伸ばし、洞窟の中をどんどんと湿らせていく。



そこでナギが小太鼓を杖で叩く。



 ボーーン。



 洞窟の内部に何重にも音が反響する。



 手元に水でできた鏡を出現させ、中に点が光る。



 一際大きく、中央で赤く光る大きな反応が一つとそれを取り囲むように黄色く小さな反応が無数に見える。




『煙の中央に敵。周りに仲間がいる。45度角度になる様に火球をぶつけて』



『あいよ!』



 竹水筒に入っていた水はあらゆる物に敏感に反応する命令文が書かれた物であり、音の魔力を宿すナギの魔力を小太鼓で強化。一点どうしを音声で繋げることしかできなかったが、魔力自体を波に変換させる事ができるようになりそれを竹水筒に投影する。即席の対人対物レーダーとして機能していた。



ドゴーン



 レーダーで巻き添えを出さない様に指示を出し、秋宮が敵だけをこちらの位置がわざとわかる様に先程の火の玉で空爆していく。



 煙の中から一点を目掛けて魔獣が飛び出してきた。



 グォォォオ



 目は赤く、息は乱れとても冷静さを保っているとは思えない。一歩が大きく、あっという間に距離が詰まっていく。



『防御壁張りなさい』



『『『はい。』』』



 身を守る為に張るのではなく、空中にバリアの様な透明な壁を固定し、魔獣の体の自由を奪う。障壁は守る範囲が小さいほど強固な物になる。体の自由を奪うだけで有ればこれほど効果的なものはない。



『今だ、俺に続け。』



 杖を投げ捨て、ジッポのスイッチを入れる。全身に炎が纏わり付きずんぐりむっくりな人と同じサイズの兎の様になる。手で魔獣の首をしっかりと掴みあげ悲鳴すらあげられないように締め上げる。その隙に短剣を持った者が煙の中から現れ、魔獣の体を切りギザム。あくまでも深追いはしないで一回攻撃したら煙の中に隠れるヒットアンダーウェイ。そのせいか一撃の威力は低く、鉄の様に硬い皮膚に外傷は与えられない。



 魔獣の体自体の体温が上がっているのか、魔獣からは湯気が立ち昇る。



『短剣じゃ歯が立ちません。このままじゃジリ貧です。巳波さん、別の作戦を!』



『今はこれしかない。どうにか柔らかい部分を探し出して!!』



 近くの魔法隊の者からの意見に巳波が強く反論する。


 短剣を手にする魔法隊と弓隊の面々。不得意な白兵戦にも関わらず良くここまで善戦した。



『だめだ。もう、抑えられない。』



 そう言って手を離し、ジッポから出る火を少なくし距離を取る。すかさず、魔獣が廉の体を押し除け、大きく咆哮した。もう魔獣を押さえておく術はない。


 斬撃によって削られた防壁に響が入り、魔獣の体を留め置く事ができなくなる。最前線で戦っていた者は煙が落ち着き、身を隠す事さえもできなく、距離を取る。

 


 先程まで怪力を誇っていた廉も後方戦線まで身を引く。服の表面は焼け焦げ、ジッポを握っていた右手は酷く焼け爛れている。カナの遠隔治療を受けつつ、ナギから渡された予備の皮の外套を羽織り、回復を図るが当然のことながら、魔獣は先程まで自分を痛めつけていた秋宮を目の敵にして突進してくる。



『防壁を張って!!』




 その一言で魔法隊が杖を掲げ、5重の障壁を展開するが紙の如く破られ、距離を詰める。



『接近戦に不慣れな後方支援隊は散らばって逃げろ!!』



 秋宮は痛みが多少マシになったぐらいの身体を引きずり前に駆け出す。ジッポをまた握り、右手を大きく前に突き出してスイッチを押す。



ゴォォォォォォォォォォオ



豪炎が迸り魔獣の体を包み込む。



『燃やし尽くせ。』



 ジッポの特性は火の魔力自体に直接命令文を与え、それを従える補助装置。竹水筒の中に入っている水や包帯は魔力自体に特性を持たせた道具であり、用途に応じ命令文を書き込めるジッポの方が魔力の自由度が格段に上がる。先程も、魔力に質量を与えそれを纏うことによって一時的な怪力を持つ事ができたのだ。



 複雑な命令を遂行すればする程魔力の消費は大きくなり、継続できる時間は短い。先程の怪力に魔力の大部分を消費した後で命令を完遂できる程の力は残っていない。



『嘘だろ。』



 案の定、魔獣は炎など意に返さない様子で駆け寄り術者を腕で薙ぐ。



 転がり地面に伏し、そのまま動かなくなった。



『回復。急いで!!』



『は、はい。』



 巳波が取り乱し、カナとナギを回復に向かわせる。足音をジャミングし、注意を惹かれないように向かう。



 暫く倒れ込んだ廉を見つめていたが何かを察したようにその場を去る。主人の当初の命令通り巳波の元へとゆっくり歩み寄る。



『援護するから、逃げて』



 遥か遠くから声が響く。指で銃を型取りそれをこちらに向ける。煙の中から猛威を振るった者達も各々武器を取り、臨戦態勢をとる。



 しかし、その姿は遠目からでも疲弊しきっているのがわかる。



『ねぇ?由加里ちゃん。人はどんな時に頑張れると思う?』



『え?』


 魔力の殆どを使い果たし、疲れ切っている由加里に言葉を投げかける。腰から傷だらけで刃毀れたレイピアを引き抜く。よく見れば鎧も傷付き、甲冑など最早見る影もない。にも関わらず、指揮官としての責務を、人としての責務を果たそうとしていた。



『それは後輩の可愛い女の子に見られている時』 



 剣先を地面に触れさせ、身体から溢れる魔力で水を具現化し刃毀れを補い、左脇腹から右肩にかけてのラインを袈裟斬りにする。



 あれほど強固な体に今ようやく傷が付いた。しかし、表皮を数センチ傷つけたに過ぎない。動きを止める程の致命傷ではなかった。



『潰しなさい』



 暴風吹き荒れる中から、何かを握った司祭が出てきて一言呟く。



 魔獣が手を巳波の頭に伸ばし、頭上で拳を握る。



『イヤーーーー』



 由加里の叫び声が洞窟の中で鳴り響いた。

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