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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第20話 闇

第20話 闇



『私は...私は』



 頭を掻きむしり膝をつく。頭を打ち付け額から流血し、一言だけ言葉を捻り出した。



『そうだ、こんな事、したく無い。俺はこんな事したくないんだ!?』



『よし、ナジムに戻ったな。10年ぶりだな? おかえり。今のところ全部上手くいってるよ』


 鞘に刀を納め、歩み寄り肩に手を触れる。目が合い、互いに無邪気に笑いあったその次の瞬間。



 ナジムと智に呼ばれたものが智の体を強引に手で突き飛ばす。智の体は思い切り弾かれた。



 尻餅を盛大につき、薄く目を開いてみると天井から紫色の豪炎が渦を巻き、煌々と燃え盛っておりそこから伸びた火柱がナジムをやいたのだ。あ



 炎が止み、天井の大穴に目を向けると紫色のローブに身を包み、成金の様に悪いほどギラつく装飾品で身を包み、髪の毛をかき揚げ後ろで無造作に縛った一人の白髪の年配の男性が空中で静止していた。



『なんだあいつは? 魔力を使っている様子がないのに浮いてる?』



 秋宮が驚きを隠せない。それは、二ヶ月間とは言え魔法の基礎を学んだからこその言葉であった。



 魔力は基本的に自然界に存在している物質の延長線上のものでしかなく、理論を逸脱した物は成立する事ができない。それどころか、魔力を少なからず使役すれば淡く発光し嫌でも魔法の存在を認識させる。



 使っている様子も居ないのに浮いてる事は、浅くしか魔力を学んでいないものにも分かる程の異様さであった。



 その後急降下し、爆音と共に智達がいる地面へと降り立った。



『初めまして。そして、さようなら』



 ローブの中から年配者とは思えないほど太く、黒々とした筋骨隆々の腕が飛び出し、智の体を軽く叩いて吹き飛ばした。智の姿が跡形もなく何処かへ消えてなくなった。


 しかも、飛ばされ洞窟の壁にへばりついて居るようだがぴくりとも動とうとしない。誰もが死んだと確信した。


 あっという間に智を吹き飛ばした腕が地面に落ち、筋骨隆々の人のように形成するが顔は牛そのもの。神話に出てくるミノタウロスそのもの出会った。体は黒光し目は赤く鼻息を荒く吐き出す。




 上半身には武具を一切つけずに下半身にも腰巻しか巻かれていない。



 顕になる筋肉は人では考えられない程発達しており、異形という言葉がよく似合う。



『こんばんは、或はこんにちは。異世界からいらしたお客様。まずは最初に我が信徒の無礼をお許しください。我々は争う事が目的では無いのです』



 先程まで空中に浮いていたそれは手を大きく広げて手の内を見せる。表情も柔らかく嘘を付いている素振りは感じられない。



『どこでそう判断すれば良いの?私達の目の前にあるのは貴方が私達の仲間を吹っ飛ばし、自分の仲間を炎で焼いた事実だけ。敵意がないなんて台詞信じられない...』



『激しく勘違いされているようだ。私はさっき後ろの燃えカスを焼いたのは我々の理念から逸脱したからです。その哀れな信徒を最高司祭である私が焼いただけの事。それに、先程吹き飛ばしたのは果たして仲間と言えるのですかね?』



 表情を変える事なく淡々と喋る。人の生き死になど意に返さない。



『どう言う事?』



『言葉の通りですよ。先程吹っ飛ばされたやつは貴方や仲間を自分の利益の為に騙した。個人の目的は一つの通過点でしかない。なのに、ここにいるみなさんを騙した。殺されて当然でしょ。さぁ、我々と一緒に全ての人が平等に死ねる星の停止という世界を作りましょう。何もない世界に戻るのです』



 軽い口調で重苦しい言葉を並べる。



『貴方の意にそぐわないってだけで仲間を焼くの?すこし我儘を言っただけで人を殺す理由にするの?』



 巳波が下を俯き、唇を思い切り噛み締めた。



『それが当たり前でしょう。どこの世界の世の中でも、出る杭は打たれる。それだけです。智という方に対してあなたも私がナジムに向けるようなものと同じ感情を抱いていたのでは?』



『ふざけんじゃねー!!確かにあいつは全部一人で背負い込んで私達を騙していたよ。だけど、人ってのは全てを他に言う必要も無いし、足並み揃える必要無いんだよ。人と違う事であるからこそ生きる証なんだ。貴方達が理想とする世界は分かった。だけど、その価値感だけであいつを測るなよ。そんな融通の効かない価値観のやつが作る世界なんてたかが知れている。すくなくとも、ここにいる人は誰もそんな理想は受け入れない!!!』



 涙を流し、手の甲で目を拭い叫ぶと周りの人々は武器を握りしめ、声を上げる。



 信じていた国の王様に利用され、黒幕だと思い込んでいた人が智と仲良くし、そしてその黒幕はそれを良しとしない何者かに殺された。



 最早誰が誰で一体何の目的があるのかさっぱり分からないし、理解するための頭も追いつかない。ただ分かるのはここで抵抗するのを辞めたらすぐにでも得体の知れない何かに殺されて自分がなくなってしまうということ。



 それだけは、人として最低限理解することができており、本心が感じる恐怖に震えながらも巳波は頑張って周りを鼓舞しようとする。


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