表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
19/44

第19話 目論見

第19話 目論見


 由加里は涙を拭い、先程までの弱さごと自分の中から何かを払拭した目には揺るぎない闘志が宿っていた。音を立てることもなく脆い火ではあるものの勢いは何にも負けない。



「それを知ってどうするの?待っているのは今の現状よりも辛い真実かもよ?」



「構いません。例え智さんが私に見せてくれ二ヶ月間の笑顔が嘘であったとしても乗り越えて見せます」



「いい答えを見つけたんだね。じゃあ、最初に真実を一つ教えるよ。俺は少なくとも一つは嘘をついている」



 歯切れの良い低音の声が心地よく耳を撫で付ける。本来ならば聞き入ってしまうのも頷けるが、より一層これからの言葉に神経を尖らせた。



「話してください」



 由加里は唾を飲み言葉を口に出す。



「色々知りたいことはあると思うんだけど、10年前のことを話します」



 目を瞑り刀を下ろし、ゆっくりと口を動かす。



 不思議なことに味方はおろか敵でさえも声を耳に傾ける。



「世界線ごとに世界を守る監督者がいる。東京が位置する世界線はノイドと呼ばれて空間を司る監督者が統治し、それ以外の人も微力な空間系の魔力を宿していた。たまに力の強い魔力を持った人が発生したら初代の監督者は自分達の周りに集めて生活させた。そのあと、世界に穴を開け、他の世界線から他の属性の濃い魔力だけを持ってくる為だったんだけど、何でかわかる人居るかな?」



「体内に流れる魔力をわざと流れ難くする為」



 口を開いたのは魔法隊隊長の秋宮 静流。日本有数の資産家の三男だ。一般的には誰もが頭を垂れ、ゴマをする存在なのだが、そんな事は全くお構いなしに言葉を紡ぐ。



「よく勉強してるね。物に宿る魔力の種類が多い程、扱い難くなる。様々な種類の魔力を体内に宿らせ監督者以外に空間を司る力を使えなくさせるのが狙いだった。その目論見はうまくいったし、監督者以外は魔力に頼らない生活が始まった。全人類の生活水準はスラム以下のレベルに成り下がったが、歴史を改竄し、人力で川や山を開き今の生活になって、新たに生まれてくる子には魔力の存在は忘れられた産物となる。しかし、強大な空間の力を持つ監督者から生まれてくる子はそうはいかなかった。他の世界の空間を司る監督者がどうかは知らないけどね」



 言葉を失う。ここに居る者はそこまで生活水準の低い暮らしをして、地面を這いずり回った事があるような人はいないものの、苦しい生活を強いられた事は少なからずある。



 監督者が余計な事をしなければそんな事は無かった。しかし、平然と略奪や殺しが横行していた世界になっていた事は火を見るより明らかであった。しかし、ここに居るものは今の貧しい世界と、豊かな世界を一つの天秤にかける事はできなかった。



「魔力を失って仕舞えば他の世界から侵略者が来たらひとたまりもない。永久的にノイドの平和を保つ予定だったんだけど予期していない事が起こった。異世界からノイド侵入しようとした魔物がいたから監督者の一部は異世界で水面下に動き、ノイドに降りかかる脅威を排除してきた。俺を残し、そこに居る闇の軍団に殺されてしまった。馬鹿な少年が闇の空間から抜け出そうとしていたのを俺は救ってしまったんだ」



 哀れみを向けた目でローブの男を蔑む。その目には人を見るような温かい感情は含まれていなかった。



「ち、違う。私達は救いのために破壊をして世界を闇に還元する使徒!!低俗なお前らの魔力など借りた事すらない!!」



声が裏返り動揺が滲み出る。過去を打ち明けるというよりは本心を見抜かれた方が近い。



「俺はお前が助けを求めたから助けちまった。それは変わる事の無い事実だ。だから一つ答えてくれ。なんで一緒に旅をして、一緒に飯を食った仲間を何であんなに楽しそうに殺せたんだよ。本当に救いを求めているならもっと他に手があっただろ。お前の言っている事は頑なに間違えとは言えない。こんなに多くの人が傷付かずに生きていられる方法も絶対にあった筈だ。俺はな馬鹿だから、お前が見せた笑顔に嘘は無かったって信じたい。だけど、監督者としてノイドの脅威になるならば、全世界線の脅威になるならばお前を殺さなきゃ行けない。だから、お前の本心をここで教えてくれよ」



刀を強く握りしめ右の目から涙を流す。ローブの男に近づき、刀を振りかぶる。



「一体何を?」



「俺は同じ世界の仲間を騙し嘘をついてここに居る!お前を殺して最低限の清算をするんだよ?」



ため息まじりに淡々と言葉を並べるそこにあるのはただの文字の羅列。それ以上の意味など無かった。



「嘘だったの?私に同情したり、私を助けた時に亡くなった人の仇を取るために私に同行してくれたのも全部?」


 由加里が震えた声で話す。


「そうだ。しかも、死体もでっち上げたやつで、実際は誰も死んでいない。あんたに普通に言ったんじゃ同行を許さないだろうから、あんたの兄貴の被害者として騙したんだよ」



 糸が切れたような人形の様にその場に立ち尽くす。目から光が失われ、抜け殻の様になてった。



「真実って言うのは、頭で考えるより残酷なんだ」




 冷徹な言葉を肥溜めに吐き捨てるかの様に紡いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ