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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第18話 来訪者

第18話 来訪者

『みんなー!!よく聞け!!こいつは人を操る!けど、リーム王を中継機に他の人も操っているに過ぎない。首の後ろに小さな黒い楔がある筈だから、それを強引に引き抜け!』



 日本刀を模した鍔の寸前で逆への字の様に抉れている刀をのように曲がった刀を持ち、顔色をピクリとも変えずに大声で叫ぶ。



 口々に見つけたという声が聞こえ、複数の人で引き付けながら、楔を引き抜くと、ガシャガシャと音を立てて地面に付していった。



『貴様何故、私の魔術の仕組みを知っている?』



『別にぃー。俺はお前の狡猾さを10年前から知っている。ただ、それだけの事』



 言葉が言い終わるとともにリーム王が鎌を掬い上げ、刀を両断する。更に高い位置から智の首への正確な斬撃が繰り出される。



 智には躱す暇も無いのにも関わらず、智の姿が一瞬で消え、次の瞬間には鎌が地面に突き刺さり土煙が上がる。



『なぁ、不意打ちは狡いよ』



 地面に突き刺さったリーム王の獲物の上から剽軽な声が聞こえる。右手には無残に散った刀の柄が握り締められいた。誰がみても即死は免れない一撃であったが、目を疑う。



『お前は一体何者なんだ。化け物め』



『唯の瞬間移動がそんなに怖い事なの?10年前にお前がした事よりは可愛い物だと思うんだけどな。』



『10年前だと、、、』



 ゆっくりと思考の蓋が開いていく音がした。


10年ほど前に初めて会った時の記憶が呼び覚まされる。確かに二人はこれ以前に面識があった。



『まさか...』



『ようやく思い出したか。10年前にエルタネ領内で致命傷を受けたお前のことを介抱した事を』



 今まさに壊滅的な損害を与えた元凶を救った奴がいる。過去がどうであれ先程は翼竜を見事な采配で倒した事には変わりはない。しかし、集まってきた周りの人間は驚きを隠せない。



『どう言う事なんですか智さん。私感謝しているんです。命かながら逃げて右も左も分からなかった世界で色々な事を教えてくれた。かけがいのない人です。なのに、お兄様を殺した挙句国を滅ぼしたコイツを助けたってどう言う事なんですか。返答によっては貴方も敵です』



 由加里が肩を震わせて両手で服をシワクチャに掴み、下を俯きながらゆっくりと喋る。少しでもを傾けたら大粒の涙がこぼれてしまいそうな程に目は潤む。



『コイツが言っている通りだよ。俺は10年前にコイツと会って、怪我を治療して旅をした。短い間だったけど苦楽を共にした。今になって思うとあれほど充実した時間は無かったと思う』



『この裏切り者』



 巳波が短く呟き、顔面を殴り付ける。軽く手の甲であしらわれ、渾身の蹴りも宙を綺麗な弧を描いて回っただけ。何度も体に指を突き立ててやろうと抉ろうとするが全く届かない。根本的に体術のレベルが違いすぎるのもあるが、攻撃を繰り出す度に自分の心が抉れていくのが感じられた。



 由香里の頭では分かっているつもりだった。異世界に転移したという事をすんなりと信じ、その上こっちの世界の事情に首を突っ込む普通の人なんていない。過去に何かあった事は理解していたし、深く聞くつもりは無かった。だけど、目の前にいる兄の仇を助けていた事実が胸を強く打ち付けて、行き場を失った気持ちが体の中で暴れ回るのだ。その気持ちで智と巳波の攻防を見る。



『何か言ってよ。黙ってるだけじゃ分からないでしょうが』



 手首を掴まれ、耳元に顔がくっ付いてしまうのではないかと思うほど接近する。息遣いが聞こえてくる。



『言葉の通りだよ。俺があいつを見捨てれば少なくともこの国は滅びなかった』



 言葉が終わると同時に空中から大鎌での一撃が振り下ろされる。



キイィン。



 堅いものに接した銀属音が響く



『無粋な攻撃です女性との会話を邪魔するなよ。女の嫉妬は可愛いけど男の嫉妬は見苦だけだよ』



 先程失った筈の刃が元どおりに集まり、鎌を受ける。



 少し剣先に力を込め、大きく鎌男を吹っ飛ばし、洞窟の壁面に容赦なく叩き込まれる。



『何故だ。何故お前は闇の力を知っているのに戻ってきた?自分の命が惜しくはないのか?永遠に生きていたいとは思わないのか?怖くはないのか?』



『人はいつか死ぬ。その中で、自分らしく生きることこそが大切なんだ。本当に怖いのはお前たちに怯えながら後の人生を送る事だ。お前を殺して、終止符を打つ』



 刀を両手で構え直し、鋒を薄ぎたないローブに向ける。筋肉は強張り今にも斬りかかりそうな勢いであった。

そこに飛び込んだのは



『智さん、私には貴方って人が分からない。教えてもらえませんか?10年前に何があったのか?貴方は一体何者なのか?兄は何のために死んだのか?』



 一人の真実を求める少女であった。王や姫といった身分は関係ない。ただそこに居たのは、家族がどうしてそうなってしまったのかを知りたがっている少女なのだ。



 その姿を見て、色々な意味で人間離れしている智の心にも訴えかける何かがあったのか今までに見たことの無い感慨深い表情を浮かべていた。

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