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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第17話 増殖

第17話 増殖


 操れる人は一人だけ。その言葉自体が偽りだったのかは定かでは無い。しかし、土煙の中から出てきた人影はその場にいた全員が見知った顔であった。しかし、さっきとは打って変わって、口を大きく広げよだれを垂らし、目は虚でどこを向いているか分からない。



 言うなれば、意思とは別に脳から直接命令を送り込まれているような感じで、あちこちで調査隊メンバーに襲い掛かろうとする。



 単調な動きで、まるでゾンビのように動き動きは簡単に避けられるものの、一人一人の力が強いので脅威に変わりはない。



『一人しか操れないって言うのは嘘だったの?親衛隊全員を操るなんて!!』



『おかしな事を言いますね。お姫様。私は貴方の兄上しか操っていませんよ。ただ、貴方の兄上に対する忠誠を誓った心と兄上のカリスマ性を支配して親衛隊を操っているだけです。私が使役すれば闇の魔力は増殖します。貴方達が使っている魔力は一段階。一つの属性にその人自身の力を付与させるのは二段階目の使い方です。まぁ、そんな事知る由も無いでしょうがね。アハハハハハ』



 品のない笑い声を上げ、親衛隊と王を操り翼竜討伐隊をどんどんと蹂躙していく。



 散り散りになりながらも、応戦するが次第に疲労が広がり不利な状況になり一人ずつ、頭数を減らしていった。



『こいつらは疲れを知らないの?』



 風を手足に纏い、獣の様に戦場を駆け巡る。戦況を調整し隙を仲間に撃たせているが、先程の負傷もあり手応えがない。



『そんなに健気に応戦するなんて、何だか悪いことをしている気分ですね。勝てると思っているのですか?』



『勝てるさ。俺たちはこんなもんじゃない。今朝、一週間前に怪我を負い、戦線を離脱していた奴らが傷を癒し帰って来ると言う知らせがあった。そいつらが合流すればこっちは倍近い数になる。そしたら、智から預かった翼竜の血液でお前を炭に変えてやるよ』



 秋宮が今までよりも強力な魔法を使おうと用意するのだが、そんなことは眼中にない。



アハハハハハは hahah



一人の笑い声が洞窟の内部に充満するほど響き渡った。



『何がおかしい?』



 いくら優勢とはいえ、背中を仰け反らせてまで笑い声を上げる者は早々いない。いたとするなら、よっぽどの笑い上戸か、頭が空っぽなばかであるかのどちらかだ。



『無知な魔術師とはやはり恐ろしい。確かに魔力に頼った治療方であれば死ぬ寸前の致命傷を受けたとしても一週間程で回復するでしょう。しかし、その人達は一体どこで傷を癒しているのですかね?』



『それは、安全なエルタネ領土で、、、』



 シュリエがそう口走ると何かに気がついた様に唇を噛み締める。歯が肉に突き刺さり、一筋の血が滴った。



『気がついた様ですね。先程話した様にエルタネは完全に私の支配下にあります。この中には戦闘に復帰できた者もいますが、その時、治療した奴らは私の手駒の魔術師としてカプセルに入れ、この場に届けられる手筈になっているんですよ!一体、そのちっぽけな翼竜の残り滓で何をしようとしているんですか?何をしたって質量負けしますよ?』



『お前はどこまで外道なんだ。国を守る為の刃を私利私欲のために使い、心は痛まないのか?』



『聞き分けの悪いお姫様ですね。何回も言っている様に、私は手段は選ばない主義なんですよ?アハハハハハハハハハハ...は?』



 高らかに笑い声をあげていたが不意に途切れ胸元に目線を合わせる。身体の中から刃が突き出ていて、そこでようやく体に鮮明な痛みが駆け巡り誰かに攻撃されたという事を認識する。



『余り、笑わない方が良いな。馬鹿にみえる。幾ら記憶をなくしているとは言えこんなに狂うなんて、闇の魔力とは恐ろしい』



 突き刺さった刃のせいで身体を向けることができない。やっとの思いで目線を背後に集中させると、さっき巳波を抱えて遥か後方に走り去っていた智の姿がそこにはあった。



 しかも、操られているはずのリーム王に向けていうのではなく、リーム王を操っているカプセルの中身を使役している者に対してそのような言葉をかけるのだから、現場は更に混乱を極める。



 満遍の笑みを浮かべ、種類の違う恐怖が血液の様に循環するし、ただでさえ真っ白だった顔から血の気が引き刃から抜け出そうとジタバタと暴れようとする。



 しかし、暴れようとすれば暴れる程、刃は細かく枝分かれしていき身体に深々と刺さっていくのだ。



 口からも血が溢れて出血によるショックで動けなくなっていないのが不思議であった。足元は血で濡れ、水溜りのようになっていく。



『俺は少し話がしたいんだ。もう少し、静かにしてくれないとうっかり手元が狂ってしまうかもしれないな?』


『ギャー!!』


一際大きな断末魔と共に、身体から出る刃が更に細かく別れ、たくさんの血が地面へと滴っていくのだ。仲間であるはずの智の顔は死神のように恐ろしく見え、敵である者の姿は哀れに見え、今にも同情したくなってしまう。


 

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