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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第16話 魔物

第十六話 魔物


『人じゃないですか....。あながち間違ってはいませんね。私達は貴方たちのような人なんかじゃない』


 首元を深々と引っ掻き、普通なら血液が噴き出す所だが、噴き出したのは大蜘蛛達が纏っている瘴気と同質のものだった。瘴気がどう言うものなのかは全く分からなくても、それが異常であることは誰が見ても明らかだった。



 操られているリーム王でさえ血が流れ、人間味があった。しかし、目の前のコイツは根本的に何かが違っている様に感じられる。



『一体貴方は何者なの?』



『愚問ですね。世界の意思ですよ。世界は転移門で一つに繋がり合い、行き来できるようになろうとしている。この理由、分かりますか?魔法隊の隊長さん、分かりますかー?』



 馬鹿にした様な口調で話題を振る。生まれた時から魔力や異界に馴染んでいた由加里とは違い、答えられる筈もない。



『えっと...』



『はい、時間切れです。正解は世界が世界を壊してくれって言っているんですよ。私達がいた世界は何もない世界で隣に人がいるのかも分からない中で体から闇を作っていました。そんな時、一筋の光が刺し、そこから色々な世界の人が見えました。貴方達の感覚では儚いと表現するんでしょうが、私にとっては目障りでしかない。私達が闇を生み出しそちらの世界を光らせてあげているのにそのことに気付く事なく生まれ、死んでいく。無に帰り、世界を我々に返した方が有益では有りませんかね?』



『だからって色々な世界の人を利用し、殺させるのか?もっと他に方法があるだろ』



 劇豪し、杖を振るい火球を当てる。しかし、眉一つ動かす事なくその火球を空中で静止させた。



『何か勘違いしている様ですが、これは救済なんですよ。仮にこの火の玉が世界だとしましょう。黒い部分が闇の部分。この部分は我々が関与しなくても点在します。この中の一つを消したところで世界の闇は増殖します』



 掌から瘴気が渦巻きあっという間に玉を黒く染めあげた。



『光の民の死んだ者の魂は闇の世界に来て深い深い闇の中へと苦しみながら落ちていく。魔力の流れが循環する流れに乗るのですが、闇の世界から光の世界にはどういう訳かも戻れない。永遠に苦しむのを星の停止を起こすことによって魔力の流れを止め、魂そのものを消滅させてあげるんですから!』



 完全に掌の火球は輝きを失い、深いドス黒い瘴気に汚染されていた。



汚染された火球が掌で砕け散った。



『王族の反乱で国民に不安を与え次は隣にいる人に自分が殺されるのでは無いかと不安を与える。物資が著しくなった世界で物資を得る為に人を殺させる。人同士を殺させる方法は沢山あり、最終的には魔力の流れを混乱させ世界を打ち切る。それが私の星の停止で救いなのです。そうすれば偽りの世界を生きる人は居なくなるでしょう。誰もが平等に死ねる世界それこそが目的なのです。その為に貴方達に素敵な二つの選択肢を与えてあげます。闇の力は支配する力ですが数に限りがあり、元々の魔力では一人を操るのが限界です。それに世界線を越えれば超えるだけ、自分の元の世界から離れれば離れるだけ膨大な魔力が必要になります。そこで、私の指示の通り東京を蹂躙すればそれを手伝ってくれた人は最後の世界を停止させるまで身の安全を保証致します。しかし、これを拒めばここで殺し、体内の魔力だけを抜き取ります。さぁ、どちらがいいか選んでください』



 みんなが戸惑う中、口を開けたのは一人だけだった。



『ふざけないでよ。勝手に私達の死に方を決めないで!!何が救済よ!!兄は、国民はそんな事のために殺されたの?確かに死後安らかな眠りにつけない人はいるかもしれない。だけど平等に死なせるために、今を頑張って生きている人達を殺すなんて間違ってる。例えば世界が滅んで残った人が安らかに眠れないのは嫌だ。でも、その人達はその人達で頑張った結果なのに貴方はそれすらを否定した』



 相手が言ったことも理解していない訳ではない。しかし、涙ながらに訴えることしか出来なかった。



『ならば、どうします?私は良かれと思ってやっていることなのに、そんなことを言われてしまうだなんて悲しい限りです』



『貴方達とここで戦う。私達は貴方達二人に勝つ』


 シュリエ姫がガタガタと震え上がりながらも必死に口を開く。それに呼応するように秋宮を中心とした調査隊メンバーが闘志をみせるのだが、意に介さない。


『敵が二人だと思っているうちは無知そのものですね。姫』



 指を打ち鳴らすと洞窟の影の中からゾロゾロと人が出てきた。リーム王を操っている男と同じように身体からは瘴気が立ち上り、一人しか操れないという事がただの方便で会ったことも分かる。


 まるでゾンビのように生きているとも死んでいるとも言えないような表情で調査隊のメンバーの前に立ちはだかるのだ。


 リーム王を見ても分かるように倒しても倒しても直ぐに生き返り、また立ちはだかる。そんな者を倒せるのかという不安に駆られていた。


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