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異世界調査隊 〜青年達の多種多様な冒険日記〜  作者: ディケー
第一章 冒険の備忘録
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第12話 敗北

第12話 敗北


 洞窟内には打楽器のような音色が何重にも響く。叩きつけるような音から引っ掻くような音迄様々な種類が響き渡り、どこからも肌に突き刺さるような感覚。一瞬でも気を緩めれば発狂しそうになる。



 その中でも一際異様な戦いを繰り広げる者たちが1組いた。



『ウラァー』



 由香里は低い姿勢で獣の如く距離を詰め、軽く曲げた指を打ち出し、鎧を毟り取る。鎧には代償様々な傷が刻まれ、あっという間に装甲が薄くなる。



『遅いわ。たわけめ』



 日本刀程の幅と長さぐらいしかなかったしかなかった刃を太く広げ、頭上から一気に振り下ろす。手の甲を合わせて攻撃を防ぐが、刀身から枝分かれした無数のトゲが腕に突き刺さる。



『負けない!』



 眼前に怯む事なく一歩踏み込み、手首を交差させて甲で刃を受け止める。



『ほう、心身共に成長したな。初見でこれを防ぐやつはそういない。しかし、甘い』



 掌から滴り落ちた血液を硬化させ、前に出した脚を深々と刺す。痛みで由香里の顔は顔は歪めど決して声は出さない。



『苦しくかろう。脚に刺さった枝を更に細く分かれさせて心臓を串刺しにしてやろう』



『甘く見ないで下さい』



 短く叫び体の前部から凄い勢いで風邪を出し、後方に飛び去る。じんわりと傷口が広がり鮮血で装備が滲む。麻布の中華風の服に身を包み、最低限の革の鎧をつけていたが、容易に脚を傷付ける。



『本の虫が身につけたにしては上等な猿芸並みの身のこなしだな。だが、その死んだ足でどうする。鎧代わりに自分の魔力を羽織っていた様だが、今ので弾け飛んだぞ』



『本の虫には本の虫の戦い方が有るのよ』



 胸部の鎧を外し、服の中に指を入れ小さな小瓶を取り出す。栓を開け、中に入っている青い粉を脚に振りかける。



『回帰』



 身体中に淡い青の波紋が広がり身体中に付いた傷を小さくしていく。大きな傷も徐々に小さくなっていく。



『それが、異界の研究の成果か』



『回複製精製剤。空間には乱れた際元に戻ろうとする性質がある。異界に転移した際に身体に纏わり付いた残留物資から抽出して魔力を通せばこの通り。いくら傷ついても私は治せる。勝ち目は無いんじゃない兄さん?』



 体の傷を完治させ小瓶に栓をし、胸に戻す。中身はまだ9割近く存在しその反面、相手の鎧は4割が削られている。



『ふふふ、ははは。』



 唐突に不敵な笑みを浮かべる。手で顔を覆い隠し、上向きになり肩を小刻みに震わせ息を乱す。



『よもや、正体を隠しこちらの世界に向こうの監督者と共に再起を図るところまでは良かった。しかし、、、』



 笑いが止まる。



『頼みの綱の別世界の監督者は獲物が壊れ、足手纏いを抱えながら戦線を離脱。当のお前はそれが切り札か?体術にしろ付け焼き刃でしかない。それの弱点はお前が良く分かっているんじゃないのか?』



『負け惜しみ?自分の火力よりも私の回復能力の方が優れているからって見苦しいにも程があります』



(手数で押す。)



 腕と脚に付けた鎧を外し、地面に捨て置く。胸部の鎧はそのままにし、最低限の防御力を保ちながらも、再び姿勢を下ろして先程と同じように獣のように構えて踏み込む。



 先程とはまた違った形状変化をさせた血の武器。大剣を模した形にし、それで身体を隠しながら攻撃してくる。先程とは打って変わった力任せの大振りだったが、体のあらゆる部分から小さなブレードを派生させ、由香里の体には着実にダメージが蓄積していく感覚というものがあるのだ。



 大剣を掻い潜って近づくと小さなブレードの餌食になり、ブレードを躱すと大剣の餌食になる。負のループに入ってしまったことを潔く認め、対応するための方法を変える。



 途中から全てを交わすことを諦め、大剣とブレードの致命的な攻撃だけを避け、多少の犠牲は覚悟する。また、治せばいい。その考えが頭の中に凝り固まっていた。しかし、攻撃が全く当たらなくなってしまった。何故かは分からないのだが、焦れば焦るほど攻撃は当たらなくなる。



『先程よりも遥かに遅いな。お前のいい所は口だけ達者なところか』



『どういう事?』



 あれから数回身体を完治させた所で異変に気付く。自分の身体を見回し、傷を確認するがどれも完治していて痛みも感じない。



 だが、最初に飛びかかった時と比べると脚がふらつき、呼吸が速い。今にも口から心臓が飛び出してしまいそうな勢いだ。気分的にはいくらでも戦うことができると確信できるのに体がついていけない。



 さっきまで明確に見えていた勝利のビジョンが遠ざかって行く。



 全身全霊をかけ、暴挙を止め智にそのあと救って貰う。それこそが最高のビジョンだったが、今は蹂躙され、ボロ雑巾のように地面に捨てられた自分の姿しか思い浮かばない。



『なぜ、このままお前が負けるのか教えてやろうか?』



 幾重にも生々しい傷跡が残る鎧を着た者の方が意気揚々と言葉を並べる。負けそうな方が今にも勝利宣言をしようとしているこの1組は他に類を見ないほど異様であった。


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