2 元魔王の今後
俺は学園を出て、
この王都を出た。
衛兵や他の連中に絡まれたが、
全員凍らせた。
その中に服屋がいたから、金を置いて、数着いただいた。
このボロともおさらばだ。
この俺は余程嫌われていたらしいな・・・。
そして、俺は王都からかなり離れた草原にいた。
ここなら・・・。
さて、奴を呼び出すか・・・。
我次元を司るもの、我が願いを聞き届けよ。
かの者をここに召喚するスロウ来い
魔法陣が起動し、
文字が回転し始め、強い光が漏れ始める。
「もう、なに?
人が休んでいるところに・・・。」
ああ、来たか。
「人間?
何?下等種が私を呼び出したっての?
用はないからすぐに戻しなさい!
命令よ!」
ほう・・・こいつはこういうやつだったのか・・・。
俺にこんな口を利くような・・・。
「ねえ、聞いているの?
早く戻しなさいって。」
イラッ。
「そうかそうか・・・。」
「何やっとわかったの?この下等種が・・・。」
「凍れ。」
「ふん!
そんなのこの上級精霊の私に利く訳・・・あれっ。どういうこと・・・。
ねえ、早く解きなさいよ!」
「久しぶりだな。
誰に向かって口を聞いているのか、わかっているのか?
なあ、ハエ・・・。」
「ま、まさか・・・その口ぶりは・・・。」
「ああ、帰ってきたんだよ。」
「っ・・・・。
も、申し訳・・「さて、勢いを強めようか?」・・って待って、待ってください!?」
「いくぞ。」
パチン。
魔力を氷に流し込む。
加速を始め、妖精のような体を覆っていく。
「さて、とどめ。」
「ちょ、ちょっと、これ以上は・・・。」
ちっ。
こっちとしては聞きたいことがあったんだったな。
俺は魔法の効力を止める。
「た、助かった・・・。」
首の辺りで氷が止まる。
魔力がかなり落ちているな・・・。
速度、範囲、そのほかもいまいちだ・・・。
まあいい。今はそんなことより・・・。
「おい、ハエ。聞きたいことがある。」
「ひ、ひい。」
「さてもう一度・・「も、申し訳ありませんでした。」・・ちっ。」
「な、何をお、お尋ねでしょうか?」
「ああ、俺が死んでから、
あの同盟と魔族はどうなった?」
「・・・・・本当に言ってもよろしいので・・・・。」
「・・・・ああ。」
「そ、その前にこれを解いていただけると・・・。」
「・・・まあいい。」
俺は魔法を解きながら言う。
「ただな、逃げようなんて考えない方がいい。
今の俺でもお前程度なら軽く屠れる。」
ギクッ。
「さあ、解けたぞ。
さっさと話せ。」
「・・・人間とエルフが裏切り、同盟は解体、
マリクは現在、人間の国に投獄されています。
また、魔族は奴隷になるものが多数、
国は崩壊いたしました・・・。」
「ほう・・・やはりか・・・。」
「やはり?」
「ああ、俺はマリクに裏切られ、死んだ。」
「っ・・・・。」
「うん?
知らなかったのか?」
「え、ええ。
魔王が乱心したと・・・。」
「俺が?
はははは。
あの状況で?」
まったくおかしいな。
そんな気力あるはずないだろうに・・・・。
ん?ああ、それだと・・・。
「なあ、俺って反逆者ってことか?」
「・・・みな、そう思っているかと・・・。
それを信じなかった者・・・
ナツキは軍に居場所をなくし、
どこかへ消えました・・・。」
ほう・・・ナツキがか・・・奴らしい。
「で?
お前は?」
「わ、私は・・・すぐに・・・解雇・・・。」
「・・・・・・そうか・・・。」
「「・・・・・・・」」
「で、魔王様はこれからどうなさるので?」
「ああ、そうだな・・・気分転換に旅でもしようか・・・。」
俺は遠くを見つめる。
「た、旅、ですか・・・国を作り直すのではなく・・・。」
「ああ、それなぁ・・・。
なあ、考えてみろ。
俺はなぁ、親父に押し付けられて義理でやっていたんだよ・・・。」
「そ、そうだったんですか!?」
「ああ、それでな・・・親父の部下だった奴に裏切られたんだ。
もう義理は果たしただろう?」
「・・・・・・・・。」
「それにな・・・魔族の連中は俺を恨んでいるわけだ。
どうせ、復興などできん。」
「・・・・・・。」
「友人だと信じていた人間、エルフの国王連中にも裏切られた。
・・・・もう、懲り懲りなんだ。
もう、あんな面倒なことはしない。絶対にだ。」
「・・・・・・。」
「なんなら、お前も来るか?
どうせ暇なんだろう?」
「・・・・・・。」
「・・・・そうか、じゃあな。」
くい。
裾を引かれる。
ん?
「お、おい、なんでお前が泣いて・・・。」
「だ、だって・・・あんなにみんなのために頑張っていたのに・・・。
あんなに民を思っていたのに・・・。
あんなに苦しい思いをしていらしたのに・・・。」
そうか・・・俺の代わりにか・・・こいつも変わらんな・・・。
よしよし。
スロウの頭に手を置き、
「いままでありがとう。」
俺は先を進む。
スロウ視点
行ってしまう。
私の主・・・傷ついたあの方が・・・。
でも、私にはなにができるの・・・。
あの時、一緒に居られなかったこの私に・・・私が居れば・・・・。
ナツキだったら・・・。
・・・付いて行こう・・・何ができるかはわからない・・・。
けど、それでも・・・・今、あの方を1人にはしておけない・・・。
私はサクヤ様についていく。
「ん?なんだ、結局来るのか?」
「う、うん。」
私がこの方を支えるんだ。
もう、あんな目には合わせたりはしない。
そして、精霊と元魔王の旅は始まった。