12 元魔王が目覚めたら?
サクヤ視点
「はぁ~。ん~。
よく寝た・・・。」
俺の上には知らない女性・・・。
誰?
ガラガラ。
「おや、目ぇ覚ましたんかい?」
「誰?」
「ここの支配人さね。
あんたが泊まった宿屋の・・・。」
「ああ、悪い。
迷惑かけたな。
金が足りんかっただろう?
後で、返しに来る。
お望みなら、血判でも作ろうかい?」
「ふん?金ならそこで寝ている子が払ったよ・・・。
看病したのもこの子さね。」
「そうかよ。
じゃあ、返す相手はこの人にか・・・。
そうなると・・・恩もか・・・。」
「ちょっと、お待ち。」
「あ?」
「あんた、この子に何をしたんだい?」
「あ~。」
なにかしたっけ・・・。
そういえば、どこかで見たような・・・・・ああ、そうだそうだ。
「ああ、あの給仕さんか・・・。」
「あんた、この子の名前も知らなかったのかい?」
「あ?あんた何言っているの?
あんたは店行って、給仕の人の名前を覚えるんか?」
「・・・・あはははは。
まったく、面白い子だねえ。
気に入ったよ。
あんたならこの子を任せられるよ。
銀の英雄さん。」
「あ?どういうこと?」
支配人の女は笑いながら部屋を出ていく。
すると、
「ん~ん~。」
「おい、給仕さん?」
彼女の寝ぼけ眼が開く。
「あっ。お客さん!?」
俺に抱き着いてくる。
まあ、避けようはないわな・・・ベッドだしな。
「お客さん、本当によかったです。」
グリグリグリ。
ポンポン。
「世話かけたなあ、給仕さん。」
「ルンです。」
「は?」
「ルンです。そうお呼びください。」
「ああ、どうしたんだ?
給仕さん?」
「ルンですってば・・・。」
む~。とかわいらしく睨んでいる。
「わかった、わかったよ。
ルンさん、そろそろどいてくれないか?」
「い・や・で・す。
呼び捨てがいいです・・・。」
頬を染めている。
美人がやるとすごい破壊力だな・・・。
「ルン。」
つい呼んじまった・・・。
「はい、退くのは嫌です。
お話ししましょう。」
仕方がない。
そして、ルンが話し始め、大まかの状況が理解できた。
ああ、俺は魔力不足で・・・そして、あの後倒れた・・・完全に状況を思い出す。
「・・・私、ここ解雇になっちゃったんです・・・一緒に付いていきたいです。」
「やだ。」咄嗟に言ってしまった。
「む~。
だってこんな体にしたんですから、責任とってください・・・。」
服をはだけつつ言う。
俺は額に手を当てる。
「なあ、それってむしろ逆じゃねえか・・・俺は治しただけだぞ・・・。」
「それでもです。
心を奪われたんです・・・・。
好きになっちゃったんです・・・・。」
「・・・なあ、治したのは気まぐれだ。
気にすんじゃねえよ。」
「・・・そんなんじゃ・・・・
・・・・・そんなんじゃないです!
まあ、それもありますが・・・。」
彼女は続ける。
「あなたは私を人間として・・・女性として見てくれました。
たとえ、あんな姿だったとしても・・・。」
彼女はその時を思い出したのか、
体を抱きしめる。
「そして、抱きしめてくれました。
そして・・・最後には魔力がなくなるほど・・・。」
トロン。
「ま、まあ、それはなあ・・・。」
う~ん・・・・・どうしたものか・・・。
この女が幸せになれば・・・なんて思ったのも事実・・・。
「私、あなたを見るたびに、
体がうずいて、うずいて仕方がないんです。
もう我慢しなくていいですよね・・・。」
「は?」
「だってここ・・・娼館ですもん。」
「・・・・・・。」
「だから・・・ね。」
「・・・・・・。」
「ススー。えいっ。」
ルンは自分の服を脱ぎ、
俺の服をはだけさせる。
「おい、ちょっとやめろって。
だ、だれか~。」
俺の断末魔はメリッサさんという支配人が来るまで続いた。
結局、ルンは俺の付き添いの1人になった。
ルンは処女だとメリッサさんは俺に伝えてきた。
なあ、本当?
なんで、俺、あんな貞操の危機にあったのに・・・。
それと・・・何か忘れてる気がするんだよなあ・・・何だろう。
スロウ視点
サクヤ様に他の女の気配が・・・。
サクヤ様、サクヤ様、どうかわたしをお呼びください。
先日のミスは水に流してください、どうか、どうか・・・。
サクヤ視点
まあ、気のせいだろう・・・。