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11 ある女と元魔王

ルン視点

彼は宿を探しているようだった。


素直に教えてあげれば、よかったのかもしれないけど、

私には一瞬暗い感情が浮かんだ。


あの時の私は女としての自信がなかったからか、


無垢(むく)な少年を騙して、

大切なものを奪ってしまおうって、

だからここを宿屋だって、そう嘘を()いた。


彼は眠そうにしていたから、

私を指名してくれるって考えたのも考えづく。


本当に(いや)しい女だったわ・・・心までも・・・。


そんな私は上の階で先輩に見つかってしまう。


いつも私を馬鹿にする人・・・私に告白した人が好きだったらしく、

私にいつもつらく当たる人。


いつも通り、耐えればいい。


私はそう考えていたの・・・・。


すると、彼が、私が(だま)した彼が私を指名したんだ・・・そう力強く言ってくれた。


単純な正義感から来たのかもしれない・・・でも・・・それでも・・・。


私は本当に嬉しかった・・・この容姿になってから、誰も私を見てくれなかった。


みんなただ(さげす)むだけ・・・。


でも・・・でも彼、彼だけは私を人として見てくれた・・・。


ただ、言われるままである私に、私が人であることを気付かせてくれたんだ。


その時、私は彼に恋に落ちたんだ・・・。



私はこの思いからの衝動を全て抑え込むことにした。



この子には、私みたいな身も心も卑しい女じゃなく、

もっとふさわしい子がいると思ったから・・・。



ただ・・・・ただ私は自分のことを少しでも覚えていてほしい。


そんなことを思った。


思ってしまった・・・。


だから、彼に私の過去を話した・・・。



彼は眠そうな(まなこ)を話が進むごとに開き、

最後にはしっかりと話を聞いてくれていた。



私は彼を諦められなくなりつつあった。



だから、覚悟を決めたんです。


私のすべてを見せよう・・・そうすれば・・・彼のことを・・・。

そして私は服を脱いだのです。


彼の目が私の体を見つめる。

悲痛(ひつう)な表情に(ゆが)む。


そして、彼は私に自分の方に来るように言う。


私は罵倒(ばとう)されるのを覚悟し、

彼に近寄る。


これで・・・これで・・・諦められる。


彼の真ん前で止まる。


彼は私を抱きしめてくれた。


嬉しかった・・・もういい、もうどうなってもいいとさえ思えた。


すると、彼は見たこともない魔法を使い始めた。


私になにかするの?一瞬、恐怖心が湧くが、

彼の温かい魔力に触れると、

スーっと恐怖心が消えていく。


「じっとしていろ。」


彼の声が私のなかに響く。


私は彼に身を任せる。


彼の腕の中・・・幸せ・・・。


彼の汗が私の体をつたう。


彼の悲痛な表情・・・見ていられない・・・。


私のことはいいから、早くその魔法を解いて・・・ねえ・・・。


彼の強い瞳が私を見つめる。


私の目から涙が零れ落ちる。


私こそ、彼を信じなきゃ。


彼が私にひどいことをするはずがない。


そして・・・私は彼と・・・。


徐々に光が弱まっていく。


終わり・・・。


彼は私を離し、魔法を解き、膝を着く。


そして、

「どうだ?

体の調子は・・・自信は取り戻せそうか?」


最初は何のことだかわからなかった。


まさか・・・・。


私は体中を触っていく。


怪我、火傷の跡がなくなっているような肌触り・・・。


急いで鏡を見つめる。


わ、私の体・・・それに顔が・・・。


「おい、おい・・・本当に美人じゃねえか、

これなら・・・どんな男だって・・・。」


後ろから、彼の私を褒める声が聞こえる。


うれしい・・・これなら・・・。



・・・・心を改めれば・・・・彼の傍に・・・チャンスがあれば・・・・隣に・・・きゃっ。


そんな気持ちも一瞬で冷めた。


後ろを振り向くと、

彼は倒れていた。


私は声の限り、彼を呼ぶ。


「どうしたんだい?

騒がしい。」


「メ、メリッサさん、彼、彼が・・・。」


「おいおい・・・。

どういうこったい・・・。」


「お願い、彼を助けて・・・。」


「わかった、すぐに医者を呼ぶ。

だからあんたも何か着な。

それから、いろいろ片付いたら話を聞くからね。」


メリッサさんが階段を下り、

指示を出す。


すぐに医者が来て・・・。


彼は魔力不足で数日寝込んだ。


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