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第6回〜第10回まで


第6回


・よびかたのはなし……人称代名詞


 既に様々な人称・他称が出ております。

 そこには結構、個人的都合でルビが振られており、あまり本気に取られると問題があったり、なかったり。

 意味としてそうルビ振るか、というのはまあ趣味で流すとしても、同一人物に対して意図的な変換をすると、読んでる方には混乱でしかないわけで。


 例えば漫画であれば呼び方が変わっても、絵柄が安定しない場合を除き、同一人物と見ることができます。

 これが、文字においては若干判定しにくい。だから変えない方がいいのですが、子どもがおばちゃんと呼ぶのと、大人がナントカさんと呼ぶのと、娘さんが丁寧におばさまと呼ぶのが同じ文字では、なんかしっくりこなかった。


 そこでルビ遊びですよ、と悪魔がささやいた。



 とはいえルビ振りこそ難しいものがあって、兄姉が妹に向かって言う「妹妹(音としてはメイメイ)」は、よそのひとが言う「妹妹(お嬢さん)」とは違っている。日本語的に上手い言い方が出来なくて、ルビなしで出しています。


 それと「姉妹」と「姐妹」の表記がありますが、姉妹の時は、名詞的な日本語的表記としての姉妹、二人姉妹とか三人姉妹の意味では、中国語的表記での姐妹としていますが、中で間違ってるところもあるかもね!

 ついでに何というか漢字から得るイメージも離れなくて困るよね。いや間違ってないんだけど、一番上の姉という意味で「大姉」とか使うのは……あああ戒名っ?戒名なのかーい?と気になって使えなかった。

 娘もなあ……中国語的には若くないんで、いろいろ使ってごまかしてます。


 あとやっぱり出ない文字があって、困ったよ!

 おばさんと呼びかける時の「女乃」の漢字が出なかった……おじさんは、なんとかなったのに。


 採用はしなかったのですが、台湾で使われている人称については、かなり詳しい論文がありました。文化的には、わりと古い言い方を残しているのではないかと思いますが、やっぱり出ない漢字があったので見送りです。


 以下、参考までに(第7・8・10・12回含む)。


1、女性への呼びかけ

小妹、妹妹、小姐、小玉、小季、令女、令姉、令妹、令媛

大娘、太太、夫人、女士、姉姉(これで乳母とはホントかいな!)


2、女性の家族としての呼びかけ

姐姐、(生まれ順+)姉、妹妹、(生まれ順+)妹


3、男性への呼びかけ

大兄、哥哥、大哥、郎子、先生、大人、貴公・貴兄、老師、公公、爺爺


4、男性の家族としての呼びかけ

(妻から夫への)郎君


5、特殊な呼びかけ

(皇帝を表すもの)皇上、一人、主君

(大臣を表すもの)相公、(姓+)公・官位など


 今のところあまり男性家族を出してないから、妻の父親や義理の父に対する呼びかけ語句の例題がない……。まあでもルビを振るとみな「お父さま」か。

 皇帝に対する一人は、読みは「いちじん」なはずですが、秦の始皇帝の自称においては「余一人:よ・いちにん」と読むらしいです。でもなあ……よいちにん、とは絶対に発音しないよね?日本語だろ、それは。だから本当は「いちじん」でも何でもイイのかもしれん。「ひとり」は和訓ですので使いませんが……とりあえず、始皇帝に倣い、皇帝自称を「朕」ではなく「余」としています。


 因みに「お姉さん」に対する、(部分名+姉)は個人的嗜好です。



 自称もいろいろありますが、こちらはなかなか使いにくい。

 小説表記としては、どんな意味合いであっても「我」が基本で、ほかはあまり使わないっぽい。某とかまあ……日本の時代劇的には「それがし」だが、中国文化的には「モゥ(庶民男性の自称としての、おれ)」だから、常にルビ振りっぱなしになりそうだ。

 へりくだって使う「小生」などはともかく、「私」を使うと私的の意味にしか取れなかったり、「ぼく」を漢字にすれば(しもべ)になっちゃって困るのですが、この辺りは日本語的なルールを適用しました。

 ので、「俺」と言ったんだから、この人物は中国東北地方出身だ!とか、そういう方言の使い方はしてません。架空だし、設定上そこに国、作ってないから!



第8回


・いしょうのはなし……(第11回の女物含む)


 参照する時代が長いと、流行も激変するわけで……

 調べれば調べるほどアレでソレ。ただまあ、文章なんだから詳しく書かなくてもいいだろう、と。

 漫画だとイメージで決めただけでは、描き始めたら即、紛糾するから文章はいいわぁー……などと暢気に構えていたのに、一言「衣」といっても想像するものに幅がありすぎるのだと気づいた。

 その結果、棠梨〜の冒頭では、鶉衣(読み:ジュンイ、ウズラの意味。すなわちボロ着。うずらに失礼だな…)をルビで済ませ、金襴は何となーく、立派な服装を思い浮かべるだろうとごまかして進め進めて、第8回。


 『質朴な綾織でできた交領の上衣をゆるく着て』

 『西方の袍を肩にかけている』


 と、とりあえず書いてみたけれど〜……

 これで想定した描写と、文章的描写が合ってるんでしょうね?と思わずにいられない。

 そもそも調べるまで思い浮かべた服のどの部分が何で、どういう名なのか知らなかったわけで、織物の種類分類はまあ、流し読みでも大丈夫ですが、でも、交領って説明されると、どんなだよと思うのです。

 中国服飾的には、領は「襟」だから、交わった襟のことです。いや、分からんがな。

 今となっては、襟というとシャツの襟などを思い浮かべます。そうではなくて、和服の身頃を合わせたところを思い浮かべると……だいたい当たります。もしここでミゴロって何ですかと言われると、「さあ、今すぐレッツぐーぐる!」と、説明責任を放棄したくなるのですが、それはなりません。文章で示すのなら。


 でも難しいので、とりあえず想像して下さい。

 ある風の吹き荒ぶ日、寒いなあーとか言いつつ、コートの前をぐっと交差させて体を包み込もうとする姿を。

 そうやって前を交差させて着るものについて、交領と申します。

 そして合わせる両側が和服のように真っ直ぐなら「直領」、丸首になっていれば「円領」です。

 やっぱり絵で示したくなりますな。文章の中に、「ある風の〜」と入れて説明するわけにもいかんし。



 中華物語でイメージする男の衣装は、ずるずるした交領・直領の着流しか、円領で右側を留め具で押さえるタイプの襟で、長いけれども腰から下は両側が開いて、前後にひらひらしている。下はゆるいズボン。といったところでしょうか。

 とりあえず『棠梨』では、この着流しを「衣」、領(襟)の型に係わらず押さえるタイプを「袍(読み:ホウ)」として想定しております。

 上述の描写において、わざわざ袍について西方と書いたのは、留める向きが違うからです。右衽(うじん)左衽(さじん)というのですが、漢民族は右、遊牧民などは左となります。遊牧民といってモンゴルかなーとイメージすると、さらに西のイラン方面における胡服が元なので、大分モノが違います。


 「衫(読み:サン)」も袍に近いものですが、女物で「衫」というと結構「衣」っぽいものを言ったりするので、どうしたもんかと。明あたりまで行くと割烹着みたいな袍なんだけども、唐でいうと、ババシャツみたいなのを示されたりするのですよ。袖の広さや長さも時代によって変わってしまって、袍衫と書いても、全く一定でなくて困るねえ。

 ●ートテックに半袖カシュクールを重ね、レーシィなロンスカで初唐の最先端をいっちゃおう!!

 次に来るのは、ビスチェとボレロ!V字ネックなら、貴女の自慢の谷間も隠れない!ボレロはベルトで押さえて、腰の位置を高く見せるとイイネ。裾の押さえに飾りはマストアイテム!超々ロングな巻きプリーツスカートが乱れないよう、気をつけなくっちゃ(はぁと)

 うん……まあ……そんな感じで……

 女性の服飾はあまり……言及したくないなとか思った次第……



 衣でも袍でも下に着てるものは大抵ひらっひらーだったりしますが、これが裳裙となります。

 古くは「裳」、いろいろ複雑になって「裙子(読み:クンシ)」と呼ばれますが、考え方としては同じでいいです。とりあえず拘らずに、言い方が違うくらいと思えば。

 なんというか、これを調べると日本のものがでてくるので、あんまり細かく指定できなかったり……それニッポーン式、これダイトウテイ……違ったあーミンでしたー、とかになったりする。



 下半身に穿くものについては、ざっくりと脛衣(ルビ:ずぼん)としました。

 すね、なので日本でイメージすると脚絆かよと思うかもしれませんが、そっちはそれで別の語句があるですよ!うわ面倒!

 本音がダダ洩れになりつつありますが、事実なんか知りとうなかったという庶民男性の長褌を書かなくていいなら、何でもします。

 だけど将兵における褌は大丈夫です。フンドシとは読まないで下さい。大口褌あたりは、毘沙門天像などでよく見る緩いずぼんですから!まあね、大唐ではあんまり……古臭いっていうか……ハニワだから……

 尚、袴褶という説明は便利ですが、日本のハカマを思い浮かべそうなので、使い方には悩みます。そういうモノもあるってのが、余計に困る。


 ついでに兵士が使う披肩(読み:ひけん)は、使ったルビがショールですけども、肩から腕に回した長い布みたいなものです。

 というか女物でうっかりすると、マジでボレロみたいなのを示されるので、困った語句上位に絶賛エントリー中であります。



第10回


・こどうぐのはなし(1)……箱匣筥函


 ハコには当然いろいろな漢字があって、どれも違うものを指します。けれども出ない漢字もあるので、ルビ遊びができるモノしか区別してません。


 匳(読み:レン)は香箱です。主に女性用の小物の容れ物なので、化粧品なんかも入れたりするようです。

 しかし、箪笥と書くと四角い飯入れ……まあ弁当箱になったりして、タンスはどうしたら良いんだよーと思いました。とりあえず櫃(読み:ひつ)で構わないようですが、この文字を見てどんな物を想像するか、実はひとそれぞれなのでは……と思うと、怖いです。


 あと、書帙(読み:しょちつ)は……モノを見ると誰もが知っていると答えると思います。今どきはダメかなあ。辞書なんかが入れられてる、紙製の箱。よく家の中で書籍本体と生き別れになって困るやつ。まあ、電子辞書がメインとなると、生き別れになるのはトリセツの方だよね。

 とにかくいきなり帙を文字で見ると、モノが分かっても一瞬、読み込みエラーを起こすので、毎度ルビ遊びのお世話になります。しかし本箱って書いちゃいけないのが難点よなー。何か本棚を示してるように思えるからー。




・おまけのはなし


 「その幹気(ルビ振りは、イキ)や良し」というのは、勿論「意気や良し」であって、幹気=いきごみを使うのはどうかと……思ったけれど、まあいいか。

 語句選択の脳内反省会は、わりとこんなんばっかりです。


===


次項、11〜15へ



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