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第7話 魔王領へ出発

行間の取り方変えました。

少しでも見やすくなれば。

話数の番号を整理しました。第0話→第1話に変更することに伴い修正 2019/9/23。

 神殿から村へと戻る道中、俺たちは先程の出来事を棚に上げたように明るく振る舞って会話を楽しんでいた。


「ねえミーヤ、子供はあとどれ位で生まれるの?」

「今三ヶ月だから、七ヶ月後には出産かな。これからお腹も大きくなるって産婆さんが言ってたわ」

「そっか」


 先を歩くセレスとミーヤがまるで姉妹の様に微笑ましい会話をしている。それを一緒に聞いているティアとセネラもこれから生まれるミーヤの子供を思い浮かべているのか緩んだ顔をしていた。

 相も変わらずセレスのお尻をフロンセルが追っていく姿が雰囲気をぶち壊しているが。


「そうなると私も早ければあと十ヶ月後にアズルさんの子供を産むのかな」

「え?」


 笑顔のまま固まるミーヤ。ミーヤだけじゃなく俺たちもその場に立ちすくんで固まってしまった。

 恥ずかしそうに俺を振り返るセレス、それを追うようにミーヤがすごい勢いで首を回して俺の顔をにらみ据え、一歩遅れてティアとセネラも続く。

 一瞬空白になった頭が動き出すと、セレス以外の三人に包囲されている自分に気付いた。


「どういう事でしょうか」


 本当にどういう事でしょうかね、俺には全く覚えが無い。それは別のアズルさんに聞いて頂きたい。

 昨日は手を出せと言わんばかりで、手を出すとこの手のひら返し――いや出してないけど。


「俺は知らん、知らんから」


 首と手を横に激しく振って詰め寄ってくるミーヤに無実を訴えるが、ミーヤの凄みを含んだ笑顔が聞く耳持たんと近づいてくる。

 身の危険を感じて一歩身を引こうとすると、優しく両手を包まれ、それでいて激しくつかまれ、軋む音をさせながら握りつぶさんばかりの力で締め上げてくる。


「朝、何も無かったっていってたよね」

「私の耳にも聞こえなかったってことは二人で抜け出して熱く語り合ってたのかしら」


 突撃してきた奴らが言う言葉じゃねーだろ。


「本当に知らん、身に覚えなんてねーから」

「そ、そんな! 夕べ告白した私を受け入れて添い遂げてくれたじゃない!」


 告白みたいなものはされたが手は出してないだろうが! セレスお前は昨日何を見てたんだよ、じゃなくてしてたんだよ。いやしてないんだよ!


「アズルさん、セレスとは十年程の付き合いでして私にとって姉妹も同然なんですよ。私の言いたいことが分かりますよね」

「な、なんとなく」

「な、ん、と、な、く?」

「ぐ、痛いほど分かります」


 ミーヤはセレスを後ろから抱きしめると、セレスのお腹の辺りに軽く手を添えた。「私の妹を傷物にしたどころかこのような置き土産まで残して」小さい声ながらも否応なしに聞こえてきた声に背筋が震えた。


「いいのミーヤ、自国へ戻れば此処には二度と戻れないと思うから、思い出が欲しかったの。大戦の時に兵士の男女がたまに言っているのを聞いたことがあるけど、こういう事だったんだね」


 どんどん大事になっていく。俺は夢遊病でも患っていてセレスといたしたのか?


「アズルさん、私のわがままに付き合わせてごめんなさい。でも、できれば私が子供を産むことが出来たときにアズルさんが考えた名前を付けたいの」


 セレス待ってくれ、いくら覚えが無いと言っても一日も経たずに子供が出来たと言われたら、俺もどうしたらいいか……一日も経ってない?


「ミ、ミーヤ」

「なんですか。今はセレスが大事な話をしているのですよ」


 怖えええええええ! 笑顔で顔をひくつかせて、尚且つ目が全く笑っていない。

 心なしか両手にかかる力も徐々に増えていっている。特にセネラが掴んでいる右手はすでに感覚が希薄になってきている。


「待て、待てって。子供って一日も経たずに出来たって分かるもんなのか?」

「「「……」」」

「え? 男女が夜一緒に寝れば子供ができるのよね」


 セレス、それは間違ってはいない。間違ってはいないんだが果てしなく間違っている。

 ティアとセネラは難しい顔で首を捻り、ミーヤはセレスの言葉で思い当たったのか明後日の方向を見ながら冷や汗をかいている。


「ミーヤ?」


 本当はミーヤに詰め寄りたいのだが、両手を確保されている以上動けない。なのでできるだけ今の俺の気持ちが伝わるように、とても、とても優しい声で語りかけた。


「言いたいことがあるんだよな」

「え、えっと。セレスは私とゼスの妹みたいなもので――」

「で?」

「五歳から軍の中にいたセレスに悪い虫が付かないように……」

「に?」

「過保護に育てすぎたのではないかと。必要最小限しか男を近寄せなかったので、少しばかり箱入りになってしまったのかと」


 セレスは見た目だけから推測すると十四、五歳といったところか。五歳から軍に入っていたのならかなりの戦場を渡り歩いているのだろうが、なんで外を渡り歩いてる人間が箱入りになるんだよ。

 よくよく考えれば火の勇者が水の勇者を倒した時、セレスの顔をみて下卑た事を言ってたけど何も反応してなかったな。もしかして意味が分かってなかったんじゃねーのか。

 そうなると昨夜の手を出すってのも添い寝の意味だった可能性も――。


「まずいんじゃねーのか、はっきり言ってこいつ無防備にも程があると思うんだが」


 いまだに二人が離してくれないので顎でセレスを示すと、当の本人は何も分かってないようで少し顔を赤らめるだけだった。いやまあ、可愛いのだが不安の方が先に来てどうにも落ち着かない。


「そ、そうですね。これからの事を改めて考えると、少々まずそうですね」

「言っておくが男の俺には何も出来ないからな、とにかくなんとかしてやれ。目を離したらいつの間にか誰かの子供を身ごもってたじゃ洒落にならんだろ」

「セレスちゃんの恐ろしさの源はここだったんだね」

「悔しいけど、私達じゃどうあっても真似できないわ」


 やっと両手を開放してくれたはいいが、こいつらはまた斜め方向の事を言ってやがるし。


(セレスはすぐにでも魔王領へいってしまう。これからも私がずっと付いていく訳にはいかない……)


 ぶつぶつとミーヤ自分の世界へ入り込んでいる間に、俺はしゃがみ込んでフロンセルと向かい合った。


「キュイ?」


「いやなに、ちょっと疲れて気分転換したいだけだから気にすんな。それにしてもフロンセルって長いよな、フーとかフロンとか愛称はどうだ?」

「良いんじゃないかな。フーちゃん、フロンちゃん……んー、フーちゃんの方が可愛いかな」

「私もフーで良いと思うわよ」


 ちょっとした独り言だったのだが、俺の隣に二人が腰を下ろして思いのほか好印象だったようで賛成してくれた。するとフロンセル、フーも心なしか嬉しそうにしているがティアが腰を下ろした時は若干が後ずさった。そんなフーを見て心底残念そうに「もう諦めたわよ」とティアが言うとぎこちないながらもティアへ少し近づいた。


「フ、フーちゃん」


 渦中の人物のセレスがフーを呼ぶと、セレスの手にすり寄って甘えてきた。

 色々葛藤はあるだろうが、少し嬉しそうなセレスを見てればこの問題は大丈夫だろうと思った。

 残るはあっちだ、いまだにミーヤはぶつぶつ言っている。


「ミーヤちゃんは考えすぎなんだよねー。解決方法なんて簡単なのに」

「セネラ、良い方法があるの?」


 一向にこっちの世界へ帰ってこないミーヤにしびれを切らしたのか、セネラとティアがミーヤを引きずり俺たちから離れていく。ミーヤは自分の世界から連れ戻されて目を白黒させているが、セネラの力に逆らえる訳もなくなすがままだった。


「ねえアズルさん。私なにかおかしなこと言ったの?」

「あー、少しというかかなりというか。原因はミーヤだから気にするな。あいつらがなんとかしてくれるだろ」

「うん、ミーヤなら安心かな」


 俺は安心じゃ無いけどな。




(二人ともなんですかいきなり)

(良い案があるからミーヤちゃんに教えにきたんだよ)

(案ですか?)

(そうそう、短い期間で理解させるには実践が一番なんだよ)

(じ、実践って! そんなの不潔です! セレスが汚れてしまうわ)

(不潔って、あなた人妻で経験済みでしょうに。それに汚れるも何も今か後か誰かの違いでしょ。相手の事が好きなら良いじゃない)

(そ、そうはいってもセレスはまだ子供ですよ)

(子供だけど子供のままじゃまずいから話し合ってるんだけどねー)

(セレスは女の私から見てもいまのままじゃ危なっかしいわよ)

(ミーヤちゃん、こういう事は考え方次第なんだよ)

(え?)

(想像してみてね。セレスちゃんがすごく可愛い女の子を産んだとして、ミーアちゃんの子供と仲良く遊んでいる姿、そしてそれをミーヤちゃんとセレスちゃんが仲良く微笑んで見守っている姿。今とどちらが幸せ?)

(……)


(セネラ、あなたよくこんなこと思いつくわね)

(そりゃ私とティアちゃんの子供ができたらって何時も考えてるし)

(い、何時もなのね。天使の血が濃そうねセネラは)

(そう? お母さんより全然だけど)

(私が間違っていました、何が大切かを見誤っていました。セネラさんの言うとおりここは実践といきましょう。アズルさんには申し訳ないですが、セレスの前で私を抱いて頂き――)

((なんでそうなるのよ!))

(え、ですが)

(何の為に私達が協力すると思ってるのかなー。私達がアズルと実践して、それを見てミーヤちゃんがセレスちゃんにしっかり教えてあげれば全員が幸せなんだよ)

(え? 私達見られながらするの!?)

(私とティアちゃんが同着で一位、セレスちゃんも今後の危険を避けられる。ミーヤさんもセレスちゃんが大人になれば幸せ。これ以上ない条件なんだよ、多少見られようが問題ないと思うんだ)

(多少どころか全部では……)

(気にしない気にしない。ということで話は纏まったと言うことでいいかな)




 今日は午前中に魔王領へ向けて出発する。徒歩で五日ほどだが馬を使えば今日中に王都に着くだろう。

 綺麗な空気を吸いに玄関から外へ出ると、今日は雲一つない青い空だった。


「あ、おはよう、ございます」

「おはよう、喋り方戻ってるぞ」

「ご、ごめん」


 外ではセレスが夜が明けてもほてりが引かないのか、うっすらと朱に染めた顔で挨拶をしてきた。心なしか、今までよりも距離を取られている気がする。実際取られているんだがな。


「あーなんだ、色々と大丈夫か」

「う、うん。私がどれだけ世間知らずかわかったよ。三人に色々見せてもらったり、ミーヤと一緒にお互いにの体を色々いじったり――」

「い、言わなくて良いから」


 昨日あれから家に帰って起こったことは、狂乱としかいえない状態だった。何が原因でああなったのか俺にはさっぱりだった。

 昨日のことはまるで悪夢を見ているようだった。


「空が青いな」

「そうだね」




「よう兄ちゃんたち、久しぶりだな」


 俺たちに気安く話しかけてきたのは、子供程の体躯に緑の肌、小さい角に大きめの目。魔王領までの馬を管理しているゴブリンのゴルヤだ。いつも俺たちや村の住人が魔王領へ行くときにお世話になっている。

 此処は村より東の森の中頃だ。此処より先の魔王領に近い森や王都までの道は俺たちでも簡単にはいかない魔物などが出るため、セレスの事も考えて今回は馬を使う。


「おや、今日は一人多いな」

「ああ、セレスっていうんだ」

「え、あ、よ、よろしく」

「ゴブリンは初めてかい? なら少し料金をサービスしてやろうかな」

「いや、それは大丈夫だ」


 俺は用意したずだ袋から『WSX-210』の頭部を取り出しゴルヤへ投げた。他の部位はバラスじいさんが小躍りして回収していったから、その内調理器具や農具に変わるだろう。


「あちゃー、まだ失敗作が残ってたのか。これじゃ今回も料金を取る訳にゃいかないな」

「毎度助かる」

「いやー、これは魔王領の落ち度だからな。ここで誠意を見せにゃ『魔王』様に怒られちまうわ」


 『魔王』の名前が出た途端セレスは表情を硬くしたが、それでも無理に平静を保とうとしているようだった。


「ところで、そのエリティアはどうしたんだい」

「溺れている所をセレスが助けたら懐いたんだ。名前はフロンセルで愛称はフーだ」

「キュイ」

「うま……可愛く見えるな」

「キュイ!?」


 同意するかの様に首を大きく立てにふるティアとゴルヤから距離をとるフー。慌てるティアだが時は既に遅し。


「フーはどうする? 馬に乗るか自分で飛んでいくか」

「キュイキュイ」


 羽根を大きく羽ばたかせたことから飛んでいきたいんだろう。俺たちと居るときは飛ぶ機会が無かったからな。今度は飛ぶ時間を作ってやらないとか。


「それじゃちょっと待ってな、馬を連れてくるからよ」


 ゴルヤが姿を消した後、セレスが傍らに寄ってきて周りに聞こえない声で疑問を投げかけてきた。


(この辺りのゴブリンは喋るの? それにすごく頭が良さそうだけど)

(んー、森の西側だと違うのか? 俺のしってるゴブリンは皆ゴルヤみたいな感じだが)

(禁忌の森の西側ではゴブリンは神の敵として有名よ。知能は低く喋ることは出来ない、何でも襲い何でも食べる。そんなやつらよ)

(名前が同じだけど違うのかもな)

(でも身体的特徴はほとんど同じ――)


 セレスが腑に落ちない顔で思案してるとき、森を揺るがし巨大な金属で出来た四足歩行の何かが視界に現れた。それは下手な木よりも頭が高く、生命を感じさせないうつろな赤い目が特徴だった。とても巨大な機械馬。


「さあさあ、巨大運搬兵馬UL-005Rディースに乗った乗った」


 俺たちは慣れた様子で、セレスはおっかなびっくりディースの背中にある座席へと乗り込んだ。進み出したディースを追う形でフーが飛び立ったが、村の方が気になるのか何度か後ろに戻りながらもこちらに付いてきた。

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