第6話 加護と神罰
話数の番号を整理しました。第0話→第1話に変更することに伴い修正 2019/9/23。
泉のほとりで俺たちは輪になって昼食を取り始めた。セネラが持ってきた昼食はパンで肉や野菜の具材を挟んだ物だったが、先程の激しい動きの中でかき混ぜられてティアが初めて作った料理みたいになっていた。この感想を馬鹿正直に口にしてしまい、俺はいまだに口に食事を運べていない。
「ティアちゃんそろそろいいんじゃないかな。あんな事言ってるけどティアちゃんの料理はちゃんとアズルが食べてくれたじゃない」
先程からティアをセネラが宥めている。ティアはティアでパンと肉をこれでもかと口に詰め込んでいて、ついでに怒りも一緒に飲み込んでくれないかと期待するのだが、目を合わすと途端に逸らしてさらにパンを詰め込んでいった。
「もう、ティアちゃんそれ以上一人で食べたらアズルだけじゃなくて私達の分まで無くなっちゃうよ。あんな事を覚えられてて恥ずかしいのは分かるけど、ティアちゃんのことだから覚えてて貰えた事が嬉しくて素直になれないだけなんでしょ」
行儀悪く食べながら追いかけっこしている馬鹿娘達は放っておいて、俺はやっと食事にありつけた。ティアが肉ばかり食べてしまって残っているのはパンと野菜と焼き魚か。
適当にパンで具材を挟んで料理の体を成すと大きくかぶりついた。
勢いよく食事を始めた俺の隣ではセレスが周囲を警戒しながらゆっくりと口に食事を運んでいる。
「あいつらに会うのは運が悪い位の確立だから、そうそう警戒しなくても大丈夫だぞ。それに今はセネラが居るから問題ないしな」
俺へと視線を向けるセレスだが、その瞳は不安げに揺れている。
「さっさと食っちまえ。あの二人が戻ったら直ぐに無くなるぞ。それとも口に合わないか」
「とっても美味しいよ。何時も野営ばかりで硬いパンだったから柔らかいパンはとても美味しい。だけど変な狼以外の魔物もその内此処にくるんでしょ」
それはそうなんだが、泉から去るときに他の魔物と一緒に移動しなければ基本襲われないからと言っても、疑心暗鬼になっているセレスを納得させることは出来なかった。
そんなとき、地上を一瞬影が走った。少しの時間を置いてもう一度。さらにもう一度。俺は空を見上げると小柄だがエリティアが空を飛んでいるのが見えた。
ティアも気付いたらしく追いかけっこを辞めて弓を取りに戻ってきたが、その弓は俺が先に没収しておく。いまだに口をパンパンに膨らませているティアが、俺にのしかかるように弓に手を伸ばし「むー、むー」と言葉にならん事を言っているが渡してやらん。エリティアは確かに美味しいが此処では我慢しろ!
空を旋回していたエリティアはゆっくりと地上に近づき、泉の手前に着地した――と見せかけ盛大に泉に突っ込んだ。
へー、エリティアって泳げるのかーと俺とティアとセネラは感心した気持ちで泉で大きく水しぶきを上げている姿を見ていたのだが、その姿が次第に泉に沈んでいくと何か違うんじゃないかと疑問を持ち始めた。
そんな時、セレスが服を脱ぎ捨て下着だけの姿になって泉に飛び込んでいった。
「うう、寒い」
そりゃ湧き水で出来てる泉だからどんな季節でも水は冷たい。体を拭いて服を着直したセレスはセネラが浮かべている炎で暖をとっている。付けていた下着はずぶ濡れになってしまった為、ティアが離れた所でセネラと同じように炎を出して乾かしているが、本当はそんな効率の悪いことをせずに持ち主と一緒に乾かしたい。だが、当の本人が頑なに嫌がるのでしようが無い。下着なんて中に着るか外に着るかの違いなんだから気にする必要はないと思うんだが、どうやら俺たちの感覚と違うらしい。
「何で飛び込んだんだ? 相手は怖がってた魔物だぞ」
「そんな事言っても、溺れるのってすごく辛いんだよ」
思い詰めた顔をしてるが魔物に対してもお人好し(?)なんて聞いたことないぞ。そんなんじゃいくら命があっても足りやしない。さっき野営ばかりだって言っていたんだから魔物の十や二十なんて狩ってるだろうに。
その内国に帰るこいつの事を俺がとやかく考えてもしようがない。問題はもっと別の事だ。
セレスの隣に陣取り同じく暖をとっているコイツ。さっきからセレスが逃げようとずれると同じ距離だけ即座に近づいてくる。
小柄とはいえさっきの溺れていたエリティアだ。
怖がるようにセレスが視線を向ければ、見つめ返してくるエリティア。即座にセレスが視線を外してもまるで気にしてないようにずっと佇んでいる。
「なあ、こいつって」
「セレスちゃんに懐いてるのかな」
「アズルさんー、セネラさんー、どうにかしてくださいよー」
震えながら泣き言をセレスがあげるが、寒さか魔物のどちらなのか。うん、分かってはいるんだが俺たちもこんなことは初めてなので良く分からない。
とりあえず腹に物を入れないと体力も戻らないから焼き魚をパンで挟んで渡してやった。 エリティアを気にしながらも一口二口何事もなく食べていたのだが、途中でセレスの顔と飯の間に鳥頭が侵入してきた。
盛大に驚いて俺にしがみついてくるセレス。それをみて「なるほど」と真剣な表情で考えているセネラ。碌な事を考えてなさそうなこいつは置いておくとして、エリティアを見るとセレスが落とした食事の匂いを興味深そうに嗅いでいた。
匂いを嗅いではセレスを見て、匂いを嗅いではセレスを見て、何回繰り返すんだと考えていると、セレスが怖々と俺にしがみつきながら左足を伸ばし、落としたパンと焼き魚をエリティアの方に押しやった。それを肯定を受け取ったのかすごい勢いで突っつき始めた。 その様子を俺たち三人は珍しそうに見つめ、ティアは俺の後ろで乾いた下着をもちつつ弓矢でおれと綱引きをしていた。
獲物の内一つは食べられないが一応二匹は狩ったのだ、これ以上は全員の手が塞がるので大人しく村に帰ることにした。
本当はセレスに一匹持ってもらえば狩りは続けられたんだが、思ったより非力だったようで獲物を担いだらそのまま潰されていた。本人は「加護がないんだから」と恥ずかしそうに怒っていたが、俺たちも加護を使っていない。勇者のメダリオンを貸したら軽々と持ち上げていたので、実はこの欠陥メダリオンは女性専用なんじゃないかと思った。だが、同じに考えると賢者と聖女は男専用となって気持ち悪い想像が頭をよぎったので考えるのを辞めた。
とにかくメダリオンを貸したのがバレるとアーティになんて言われるか分からないので、余計な事はせずに大人しくする。
それにしても――。
「まだ付いてくるな」
「私は家までついてきて欲しいわね」
「あはは、今日のティアちゃんの夕ご飯かな」
「み、皆なんでそんなに軽いの、私さっきからお尻が落ち着かないよ」
エリティアにしては小型と思っていたが、昨日のイガおじさんが狩った大きさから見ると幼生かもしれない。親鳥までになったやつは見たことはないが、小さすぎるだろう。まるでセレスのお尻を追いかけるようにひょこひょこ付いてきている。
「このまま村に行くとこいつ襲われないかな」
「それは困るわね、ただでさえ小さいのに分け前が減るわ」
「あははははは」
「二人ともひどい……」
とりあえずセレスへ貸し出すメダリオンの準備も夕方前になった今なら出来ているだろうし、アーティに助言を貰うためにも先に神殿へ行くか。
「貴方たちはまた珍妙な事をしていますね」
神殿にたどり着いた時、丁度ミーヤがメダリオンを授かり首から提げているところだった。
たった一日だけ離れただけだがミーヤとセレスはお互い顔を綻ばせて再開を喜び、両手を繋いではしゃいでいたのだが雰囲気をぶち壊すアレがセレスの肩口から首を覗かせた。
頭を痛そうに側頭部を片手で抑えるアーティ、目を見開いて呆然としているミーヤ、苦笑いのセレス。再開のあいさつはなんとも締まらない様相で終わった。
「アーティ、エリティアは魔物よ。それも世界を滅ぼす程の神の敵、今の小さい内に仕留めて食べておかないと大変な事になるわ」
大変なのはお前の頭だ、本音が途中で漏れてるじゃねーか。それといい加減弓から手を離せ、一応ここは神殿でアーティは神官だぞ、一応な。
「ティアちゃんはちょっと黙ってて、セレスちゃんのメダリオンとこのエリティアの相談でここに来たの」
呼ばれたのが分かったのか「キュイキュイ」と鳴いてエリティアがセネラを伺っている……ように見えた。
こいつ言葉が分かっているのかと思ったが、よく考えればエリティアは三つの脳と三つの心臓をもつ不死鳥の異名をもつ魔物だ。脳か心臓を一度に全て壊さないと直ぐに再生してしまうやっかいなやつなんだが、脳が三つもあるって事はそれなりに頭が良いって事じゃないかと思った。
試しに夕食は何が食べたいかと語りかけ、肉、野菜、果物、魚と羅列すると、魚の所で大きく首を上下に振り回した。
「これだけ懐いているのに食べようとは、私は育て方を間違えたようですね」
育てられたというか、毎度毎度お仕置きされたの間違いだが確かにこれだけ懐かれると食べるという選択肢は取りにくい。
「アーティ、このまま村に行くと皆が武器を持ち出す騒ぎになりそうなんだが、何か案はないか。こいつ追い払ってもずっとセレスに着いてくるんだよ」
「そうですか、ならこの子にもメダリオンを与えて信徒ということにしましょう」
アーティ? 一体何を言ってるんだ? 俺たちが全員固まっている間に話はどんどん進んでいってしまった。
「言葉が分かるようですし、あなたもそれでいいですか。ああ、名前がないと不便ですね、ではフロンセルと呼びましょう。フロンセルは『祈りの神シーディア』の眷属という意味が込められています」
首を大きく一度往復させ「キュイ!」と一際大きくフロンセルは鳴いた。
「さすがに魔物にメダリオンを与えるというのは初めてなのですが、今ある物ではこの『不死』はいかがでしょうか。エリティアの特性をさらに伸ばしてくれると思いますよ」
フロンセルは羽根を広げてアーティのそばまで一気に飛ぶと、その首にメダリオン掛けて貰い首紐の長さも調節して貰っていた。
翼の付け根から広がる朱い羽根が体の末端へ行くほど紫に変容し、目は翡翠のごとく透き通った輝きを持っている。俺たちに比べて少し背の低いセレスの腰までの高さしかない体躯だが、足は太く漆黒といって良いほど光を飲み込んでいる。首は余り長くないがその分太く、俺たちより少し模様が簡素なメダリオンが光っている。
フロンセルはセレスの元まで戻ると、周りと跳ね回っていた。
「それとセレスのメダリオンの事でしたね」
「ちょっとまって、アーティそれで本当にいいの! それじゃエリティアを食べられなくなるじゃない」
「セネラ」
「はいはーい」
俺が言いたいことを言わなくてもセネラは後ろからティアに抱きつき、片手で体を、もう片方で口を押さえた。セネラの怪力にティアが敵うはずもなくずるずると引きずられていく。
「俺はアーティが良いならそれで文句は無いが、村のやつらには正直に信徒だって言う気か? 信じない奴もさすがにいるんじゃないかと思うんだが」
「もしそうなるようでしたら、私が本気で怒りますと伝えて下さい。そうですね、何も知らない子供もいますから、家族、いえ親族で責任を取って頂くようにしますか」
「そんなんで大丈夫なのかよ」
「大丈夫ですよ。私が面白いお話をした村の大人達にはこれだけで意味が通じますから。分からない人たちを死に物狂いで止めてくれるでしょう」
どこか楽しそうに薄く笑うアーティ。おじさん達が言っていた面白い話か、こんな風に言われると聞きたくなくなってくるな。
「アーティ様、お願いがあります」
「アーティ、もしくはアーティさんと呼びなさい。敬われる程の事は何もしていませんので」
「それでは、アーティさん。私は水の賢者として国へ帰りたいと思います。お許し頂ければ明日にでも」
セレスの突然の申し出に俺は一瞬体が止まったように動けなくなった。ミーヤとセレスがたった一日の再開を喜んだように、俺、いや俺達も長い付き合いのような感覚をもっていたようだ。暴れていたティアやセネラも呆けているようだった。
「それは良いとしてフロンセルはどうしますか。あなたに一番懐いているようですが」
「それは……無責任ですがアズルさんに預けたいと思います」
「俺は――」
俺に顔を向け、申し訳なさそうに頭を垂れたセレスをみて喉から言葉がそれ以上でなくなった。そんな俺を見ていたアーティは直ぐに視線を切り、ブレストレットからセレスの杖を取り出し差し出した。
「ありがとうござい、あぐぅ!」
セレスが杖に触れた途端、セレスの手から激しく鮮血が舞った。いくつかの指は吹き飛び、二の腕まで深い裂傷がいくつもはしり一瞬でセレスは血だらけになった。
「セネラ! メダリオンを外して直ぐにセレスの治療を」
アーティはセレスから急いで杖を取り上げるとブレスレットにしまい、セネラに呼びかけ治療を開始させた。
直ぐに薬と魔法で治療したおかげか、傷は瞬く間に塞がり傷跡も数日経てば分からないだろうという所まで綺麗にできた。
「セレス、あなたは何をしたのですか」
「わ、私にも何がなんだか」
治ったと言っても体中が血に濡れているのは変わらない。セネラが水筒の水で濡らした布を使ってセレスを拭ってはいるが、服まではどうしようもない。
「どうやら今、あなたは『祈りの神シーディア』の信徒になっているようです。メダリオン、神器も無しに信徒として縛れるものではないのですが、何をしました」
おれはアーティの言葉を聞いてはっとした。朝、狩りをしている最中におれはメダリオンをセレスの首に掛けた。だけどそれだとさっきの説明が出来ない、セレスは他の神の神器を使ったりすると神罰が下ると言っていた。さっきの光景が神罰ならあの時何も起きなかったのはなんでだ。
「アズルさんから、勇者のメダリオンを借りました」
セレスの告白にアーティは眉根を寄せて目をつぶった。
「ま、待ってください! それなら私もセネラさんから聖女のメダリオンを借りましたが、水の僧侶の神器は問題なく持てました」
そうだ、それも説明できない。セネラも「私もメダリオンをミーヤちゃんに貸したよ」とアーティに訴える。
「セレスとミーヤ、あなた方はメダリオンを借りて加護の力を使いましたか?」
死んでいたミーヤには加護なんて使いようが無い、対してセレスは勇者のメダリオンを使ってしまった、それが二人の差なのか。
「アーティちょっとまってくれ、確かに勇者のメダリオンをセレスに使わせてしまったけど、神罰なんてなかったぞ」
「水の神に『祈りの神シーディア』の加護を塗り替える力はありませんよ。有名でないのは癪に障りますが、神として下位に位置する水の神の加護を最上位の祈りの神の加護が塗り替えたのでしょう」
「わ、私は国へ帰れないのでしょうか」
「止めはしませんが、何も力を持たない状態ではたどり着けないでしょう。さらに他の神の信徒となっていると露見することを考えれば得策とはいえません」
セレスはそんなにも国へ帰りたい、いや当たり前か。俺だってこの村から理由もなく出ようなんて思えないし、一緒に居て楽しい奴らもいるしな。
ミーヤに視線を向けると彼女は静かに首を横に振った。同じ国で生まれたミーヤでも方法が浮かばないのだろう。
「ねえアーティ、何か方法はないの? セレスちゃんが帰っちゃうのは寂しいけど、自分の家に帰れないなんて辛いと思うんだ」
ここにいる全員の注目を浴びるアーティは、申し訳なさそうにして一つの案を口にした。
「加護について詳細な説明を省いた私にも落ち度がありますね。あまり気は乗りませんが一つ方法があります。ですが、その為にはセレスに大きな決断をして貰わないといけません」
方法がある。その言葉を聞いて目を輝かせてセレスが前のめりになって先を流した。
「『魔王』の加護で『祈りの神シーディア』の加護を塗り替えるのです。『魔王』は『シーディア』には及びませんが強力な力を持っています。セレスの加護を下位もしくは中位に塗り替えておけば、『魔王』の最上位の加護で塗り替えられるでしょう。再度『魔王』の最下位の加護で塗り変えれば、元の水の賢者の加護に戻せるはずです」
『魔王』その言葉がアーティの口から出た瞬間、セレスとミーヤから殺気が漏れ出した。
短い間だが、この変わりように俺は二人の事をほとんど分かってないんだと知らされた。ティアとセネラも殺気に当てられたのか表情を消してどんな事にも対処できる気を張っている。一瞬でここが森の奥地に変わったようだ。
「アーティさん、他に方法はないのでしょうか」
「大陸の反対側にいる上位神達なら同じ事が出来るでしょうが、自国へ戻る以上に遠く複数の他国を通ります。今の状態では街によって補給というわけにもいかないでしょう。とても現実的とは思えません」
「でも、魔王領なんて今まで誰も見つけていないんですから同じ事ではないですか」
「魔王領はすぐそこですよ?」
殺気を霧散させて口をぱくぱくさせるセレスを見て、俺はなんかほっとした。ミーヤからも殺気が失せているが、こちらは口に手を当てて何かを考え込んでいるようだ。
「貴方たちが禁忌の森と呼んでいる此処より東が魔王領です。森を出て五日ほど歩けば王都に着くほど近いですよ」
セレスとミーヤは顔を見合わせ「禁断の森の向こうだなんて」と沈んだ声で話し合っている。
「どうしますか、魔王領へ行くなら出来る支援は致しますよ」
「――お願い、します」
ミーヤとの話し合いが終わったのか、セレスが決意を込めた顔で答えた。あの顔は見たことがある、戦場で敵兵を皆殺しにしたときの顔だ。
「そうなると勇者の加護から塗り替えねばなりませんね。下位や中位となると……『隠者』が良さそうですね。加護の内容は自国へ戻るというならあえて教えることはしませんが、セレスにとってはそれほど悪い加護ではないですよ」
アーティからメダリオンを受け取り首にかけるセレス。手を握ったり腕を軽く動かしたりして感覚を確認しているようだ。だてに賢者として暮らしていないってことか。
「アズル、あなたはセレスと一緒に魔王領までついて行きなさい。初めてではないしあなたにも責任はあるのですから」
「はいはーい、私もいく「私達でしょ!」から。友達だもんねー」
「貴方たちは既に大人、自分で考え行動しなさい」
もう子供じゃなくなった二人への遠回しの了承なんだろう。子供だった頃から少しアーティに認められたようでちょっと二人が羨ましくなった。
「結論が出たなら村に戻った方が良いのでは無いですか。その機械犬はともかく兎の肉が悪くなっていきますよ。それと」
アーティがブレスレットを外し、俺へと投げてよこした。
「その中に水の神器が入っています。貴方たちでは触れないでしょうし他の誰かが偶然触っても危険ですのでそのまま持って行きなさい。そうそう、昨日の熊肉も入れたままですので旅の間の食料として食べて頂いてもかまいません。ほら、さっさと帰りなさい」
アーティに促されるまま俺たちは村へと向かい歩き出した。貴重なブレスレットを預けて貰い、俺も認められたのかなと少し嬉しくなった。
そういえば、アーティは水の神器を手で持っていたけど神罰は落ちていない。
後ろを振り返るが、神殿にはもう誰も居なかった――。
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