プロローグ前
見渡す限りの綺麗な星々、こんなにはっきりと見えるのはきっと明かりが無いからだろう。ほら、違う銀河の太陽っぽい星まで見える。
え、普通見えない? いったい何処にいるのかって?
ふむ、現実逃避はやめとしようか。
現状を確認してみよう。
現在、今、私は
宇宙を彷徨ってます。( ´∀`)
この身1つで
何があったのかって?そうだな、まぁだいたい話は5時間くらい前に遡る。
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大体5時間くらい前
「どうだい、行けそうかな?」
そう言って私(常葉 栄司)はクラスメイトの板橋 春夜に問いかけた。
「ええ、なんとかギリギリってところですけどね。」
そういって額に汗を滲ませながら俺にそう答えてくる春夜は白衣が似合いそうな眼鏡を掛けた色白の少年である。
「そう、か…、あまり無理はしてくれるなよ、今の私たちの情報源は君しか…」
「栄司…、それは光輝と千尋に失礼ではないかね?
彼らも僕と同じもしくはそれ以上に頑張っていると思うのだがね。」
その指摘にハッとする
「ああ、そうだったすまない。光輝、千尋
君たちの能力は動きがないからすっかり忘れていたよ。」
そう言って私は中椣 光輝と沢村 千尋に声を掛けた。
「うん、大丈夫気にしてないよ。それに確かに僕がやってることって周りから見たら何もしてないように見えるだろうしね。」
そう言って小柄な少女、ではなく少年が疲れを隠すような笑顔で微笑んでくる。
このもし女の子だったら確実に惚れてしまいそうな少年が沢村だ。いわゆる男の娘というのをリアルで体現している。
「ああ、しかし頼んでいるこっちが言ってはならないことだよ。今のは本当にすまない、頑張ってくれ。
あ、でも中椣には一応動きがあるか。普通に忘れてたわ、すまん。」
「なっ!、この野郎、普通に忘れるってお前…って、もういいわ。これでもだいぶ疲れてんだ、こんなことしてる余裕ねえよ。」
そう言って噛み付いてくるのは、今は若干疲れているようだが活発そうな印象を受ける少年。中椣である。
ちなみに中椣はうちの高校で身体能力が一番高かった。昔学校の校舎で鬼ごっこをしていた時、三階から飛び降りてそのまま何事もなかったかのように逃げて行ったのだからあの時は驚いた。
「だけど、…いつ出られるかな牢獄。」
その千尋の言葉で、しばらくの沈黙がこの場を支配した。
そう、私たちは今、牢獄に囚われているのだ。
「はぁ、しっかしまさか、この世界に召喚されてから一年以上も人類のために戦ってきたのに、こんなことになるなんてな。」
眉間にしわを寄せ、光輝はどこか遠い目をしながらそう言った。
そう、何を隠そう、私達は今異世界にいるのだ。さっきの能力云々も、この世界に来た時に開花した固有能力が関係している。
順を追って説明するとしよう。
今から1年と4カ月ほど前、私たちはこの世界【オブシディア】に召喚された、高校の授業中に。いわゆるクラス召喚というやつだ。
ここからはテンプレだ、王様や王女様が現れて「この国を魔王の魔の手から救って下さい」と言ってきた。
私は結構ライトノベルなどを読んでいたため、すぐに混乱から回復できたが、中には、家に返せ、どうにかしろ、と騒いでいた連中もいた、しかしそれもヤツの発言で静まった。
それが今、俺たちが牢獄に囚われている原因でもある荒神 紅だ。キラキラネームである、親がどのような心境でこの名前を付けたのかとても興味がある。
ヤツはクラスの皆に「皆、よく考えてくれ。この国の人たちは、いつやってくるかわからない魔王の恐怖に怯えているんだ。さっき王様が言ってたけど、僕たちは異世界の勇者として強力なユニークスキルと高いステータスを持っているらしい。なら、僕達が救ってあげるべきだろう、そうすれば僕達は勇者や英雄と言った名声まで手に入るんだ。日本じゃこんな機会絶対にないし、それに僕達が住んでいる日本は平和の国だ。困っている人がいたら放っておかない人種だと僕は思っている。
だから皆、日本人の誇りを持ってこの世界の人たちのためにも頑張ってみようじゃないか。」
などとのたまった。よく聞けば荒唐無稽だし、ちょっと何言ってるか分からないが、しかし、重要なのはそこではない、ヤツがソレを言ったことだ。
人一倍リーダーシップがあり学校一の人気者、その上高校一年にして生徒会長を務めており、信頼も厚い。そんなヤツが、そう発言したことで、チラホラと賛同者が現れ始め、最後は全員がその意見に賛同した、中には周りに合わせただけのものもいたようだが。かくいう私もその一人だ。
この後もまさにテンプレだった。
ステータスと唱えるとステータスプレートが目の前に出現したのだ、スキルだとか職業だとかが載っており、一人一人の固有能力も書いてあった。
俺のはこういう感じだった
名称:トコノハ エイジ
職業:探検家
職業スキル:
⚪︎脳内マップ作製
⚪︎ノマズクワズ(飢餓耐性)
⚪︎体力増加
スキル:魔力増加
固有能力:生存適応 同時適応可能数:1
(魔力の続く限りあらゆる環境に適応する。)
レベルとか体力が表示されないことには驚いたが、
まぁそんなものかと納得した。
しかしちょっとテンプレから外れることもあった。それは我がクラスの誰もが認める知恵者、近藤の行いにより成された。彼は
「王様、聞いてもらいたい、もしも、も し もの話だが、ここに魔王の手先だとかがいたり、遠くからここを見ることのできる魔法が使われてたら 俺たちの情報が魔王に渡ることになる。だからステータスの開示は無しにしてくれないか?」
この発言に王様は少し眉をひそめたが(魔王の手が王宮にまでのびているのではないかという発言に少し気分を悪くしたのだろう)もっともな意見だったためか、直前まで出していたステータスプレート開示の要求を取り消してくれた。
おそらく王様は有用な者と無能もしくは自分に害を与えそうな者を選別しておきたかったのだと思うが、近藤の言い分は納得せざるを得ない物だったので、もしこの提案を却下すれば怪しまれると思ったのだろう。まぁ、そうしなければならない状況だった訳だ。
しかしまぁ、流石王様と言うべきか、とある策を持っていた。「暫し待て。」と言って側近に眼鏡の様な物を持って来させたのだ、聞くところによると、今までの歴史で召喚されて来た勇者で、魔王を倒したパーティの職業、要するに有能な職業を持つ者を見定める事ができる魔道具らしい。
それにより判断されたのが
荒神 紅…職業:勇者
中村 百合…職業:回復師
岬 楓…職業:賢者
壱野原 和臣…職業:守護者
の四人だ、八十人もいる中で、うん?人数が多い?あー、そうだな、多いな、勘違いするな、一クラスにそんなにいるわけでは無い。うちの高校は一クラス四十人でたまたま合同授業の時に召喚されたのだ。実は王様も余りの多さに最初は戸惑ったりもしていた。
あぁ、話が逸れたな。….ところで、だ。この人数の中、今まで魔王を倒した勇者パーティが持っていた職業を持っているのが四人だけ、これはだいぶ不自然ではないか?と思うだろう、もちろんだとも。あの四人以外にも、歴代勇者と同じ職業を持つ人もいただろう。しかしあの魔道具は優秀だったようで、なんと歴代勇者の職業の中で、もっとも優秀だった職業、そして本人のポテンシャル、パーティを組むための相性も考慮して、この中で最も、魔王を倒す見込みの高い四人を選ぶらしい。まっこと優秀な眼鏡である。聞く話によると。初代勇者が今後のためにと王国に献上したらしい、不壊属性とかいうのも付いてるらしい。なにそれ、すごく欲しい。
まぁもちろん、この四人も公に言われたわけではなく後で個別に言われたらしい。最初は近藤の指摘通り言ってはダメだったらしいが、人の口に戸は立てられぬ。というのか、徐々に噂が広がり、というか本人たちが言っていた。本末転倒である。
はてさて、そして晴れて勇者パーティになった四人には特別な訓練や王国が管理するダンジョンなどで特訓を、余った者たちも勿論訓練が施された。勇者達より質の落ちたダンジョンにも入らせてもらったりもした。何故か?それは勿論、今の勇者パーティより有用な人材が出てくる可能性があるからだ。これは後で起こる話だが、勇者…荒神が、
「今のパーティが連携も深まっているので人の入れ替えはしないで欲しい。」
という提案?…要望により、新たに有能とされた人たちで、勇者パーティ2を作ることになった。
さぁ、あとはもうほぼテンプレ通り、勇者パーティは最終的に6組もでき、互いにしのぎを削っていた。
クラスの目立たない奴がいじめっ子代表みたいな奴らに嵌められ、一人で、行ってはいけないと言われたダンジョンの奥地に置き去りにされたり。そこでなんか強くなって、封印されてたとかいうダークエルフの美少女を連れて帰って来て、いじめっ子達に復讐したり。(他の人にはなにもしなかった、彼は俺が読んだことのある小説の主人公のように優しさを失ったりはしてなかった。)その後もハーレムを築いていって、最強になったりしていた。(彼の能力はゴーレムを召喚できるというものだった。最初、いじめっ子に嵌められる前は余りにも動きが遅いし、一週間に一体しか召喚できないとかで、使い物にならないと言われていたが、俺tueeeeeeeしてからは、音速超えるは、山を一撃で吹き飛ばすは、一秒で十体召喚するとかで、誰も敵わなかった。
…その時は。)
その後彼は、世界を見て回ってくるとか言って、異世界一周の旅に出かけた、クラス一同、きっともっと多くのハーレムを築いて帰ってくるんだろうなぁという想いのこもった、暖かい目で見送っていた。ちなみに彼の名前は佐藤君である。
はてさて、一方で勇者殿も負けてはいない、彼のスキルは、一度見たことのあるスキルを取得可能になるというものだった、佐藤君の圧倒的なスキルは異常な成長を遂げた突然変異のようなものなので、元のスキルは手に入っても彼のような使い方はできなかったらしい。しかし、召喚された人たちのスキルで戦闘や、普段の生活に役に立つものは全部取得していた。
実はこの世界には、スキルをトレースしたり奪ったりするスキルは普通にあるらしい、では勇者のスキルのなにがすごいかというと、ユニークスキルまで手に入れることができるという点だ、この世界のそういったスキルは、ユニークスキルまで自分のものにするのはとても難しいらしい。加えてなんのデメリットも無いというのはとてもすごいらしい、この世界ではかなり大きい代償を払うことになるのだろう。それに、見るだけで、というのもすごいらしい、他のスキルでは、相手に触れる、実際にその技をくらう、相手を殺す、など色々と制限かあるらしい。
…なに?[〜らしい]が多い?しょうがないだろう?それが本当かなんて知らないんだから。
あと、わかると思うがヤツは万能タイプの勇者に仕上がっている。だいたい一人でなんでもできるようになりやがった。
あぁ、続きを話そう、
勇者は圧倒的なスキルだけでなく、ハーレムも作った、佐藤君と負けず劣らない。龍神を名乗る幼女だとか、この世界の女神だとかがいた、この国の王女様もいれば、獣人の王女様とかもいた(ライオンの獣人らしい)、あとは…、あぁ、何処かの国で実験体になってたとかいう吸血鬼の少女もいたなぁ。他にもいたが、まぁ今はいいだろう。
勇者判定を受けた者以外も、この世界の基準からすれば、十分超人と言える力を持った。
と、まぁ我々はテンプレを謳歌していったのだった。
そして、荒神率いる勇者パーティが、召喚から一年後、魔王討伐に成功したのだ、勇者殿はちゃっかり魔王の娘とかをハーレムに組み込んでたりする。ちなみにこのころ佐藤君は世界を超えて実家に帰ってたりする、魔王討伐の祝勝会の時に現れてそういったのだ、…みんなの前で。
そりゃあもうみんな驚いた、ずるいぞ、とか、私も家に帰りたいだとか色々いってた。この時、王様が驚きと苦々しさの篭った表情をしているのを、私と他数名が見ていたが、(だいたいのメンバーは佐藤君の方に詰め寄ってる。)皆我関せずを貫く感じだった。勿論私もそうした。
あと、みんなが佐藤君の力で、元の世界に帰ることはできなかった。なんでも旅の途中で色々あって、第二のユニークスキルが開花したらしいが世界を行き来できるのは自分一人だという。みんな悔しがっていたが、魔王も倒されているから、帰ることもできるだろうと、意外とあっさり引き下がっていた。
さて、問題はここからだった、王様は魔王を倒せば元の世界に帰れる、何故なら魔王が送還の魔法を持っているからだ、と言っていた。しかしそんな物魔王城にはなく、勇者のハーレムパーティの女神様でもそれをするには力が及ばないという。うん?壱野原君?彼なら、荒神のハーレムっぷりに嫌気がさしたようで、結構最初の頃にパーティを抜けている。メンバー交代無しとはなんだったのか。ついでに言っておくと、勇者と佐藤君のパーティは本人以外全員女性だか、召喚された人たちと一線を画すくらいには強い、一人一人がだ。あと、勇者パーティの龍神幼女が、東洋の龍になれたりしたが、佐藤君パーティには、神狼幼女がいた、彼女はフェンリルになってた。ずるい、ペット欲しい。
さて、盛大に脱線した話を戻そうか。
王様に帰れないよ宣言をされた召喚者達は、一ヶ月も、二ヶ月も、なんとか帰る方法がないかと探し始めた。そして丁度一年と三ヶ月ほど経った時だ、王様から収集がかかり、何事かと行ってみれば、王様が私たちを国の戦力として扱うと言い出した。
皆抵抗しようとしたが、宮廷魔術師達の同時発動による大呪文で体の自由を奪われた。王様が言うには、もともと魔王討伐後には我々を国の戦力として扱おうとしていたらしいが、みんなが世界に帰る方法を探し始めたのを見て、焦って今日の準備を進めたらしい。この魔法の準備に、三ヶ月もかけたのなら我々召喚者のような超人にも効果があるのも納得だった。佐藤君や勇者にも効果があるのには驚いたが。
王様は我々に隷属の首輪という、一度つけたら、二度と命令に逆らえなくなるという魔道具をつけようとしたようだが、薄々感づいてたらしい佐藤君によって、破棄されてたらしい。なのに何故捕まってるのかと思うが、きっと自分は何があっても大丈夫と考えてたのだろう。彼は意外と抜けたところがあるのだ。
勇者君は微妙に動けていたが、まぁ焼け石に水という様なものだった。直ぐに兵士によって縛られていたよ。
そして私たちは、スキルを封じ、身体能力を低下させるという手枷をつけられて牢獄に入れられた。隷属の首輪が手に入るまではここに監禁されるらしい。
ここまでが、私たちがここに閉じ込められた経緯である。なに?荒神のせいじゃないじゃないかって?ああ、そうだとも。ここまではそうだった。そう、まだ続きがあるのだよ。
大体一週間経っただろうか、私たちの間で、脱出計画が立てられていたのだ。勇者パーティにいた王女様の手引きでここをでる計画を作ったらしい。勿論私たちは喜んださ、その言葉を信じたさ、奴隷の様な扱いを受けたいとは思わないからね。
だがやはりというべきか、世界は残酷なものだ。
私たちは捨て駒にされたのさ
私たちが監禁されていた牢獄は一部屋四人収容できるものだった。そして、何か間違いがおこらないよう、女子と男子で分けられていた、多分だが、子供を孕まれては困るといった理由だろう。大まかな部屋の分け方はこうだ、
まず、男女で分けられた、そしてそこからさらに戦闘ができるできないで分けられた。城には多くの牢獄があるが、やはりこれだけの人数を収容するとなると数に限りが出てくるのだ。戦闘が可能なものは随時、生命活動に必要な分以外の魔力を吸収されるという牢獄に入れられ、非戦闘員は、手枷だけつけられて普通の牢獄に入っていた。
さて、話を脱出計画に戻そう。私たちは王女様の手引きによって牢獄を出たあと、まず戦闘可能なもので、障害を切り開くといって戦闘可能な者が先に行った、そして次に非戦闘員の女子、その後に私たちは非戦闘員の男子が脱出した。万が一後ろからの襲撃があっても女子が襲われるよりいいだろうという判断からだ。
さて、こうして牢獄のある棟から出た私たちが見たのは、倒れ伏した戦闘員の姿だった。