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of my mind(22)


「よし、攻撃が入った……が、あれはっ! 」


 アロイスたちは攻撃を与えてから距離を置こうと後方に飛びながら、氷竜の傷口に目を向けて、ある事に気づく。


「アロイスさん、攻撃をした傷口、見えるッスか!? 」

「ああ、見えるぞ! 」


 二人の攻撃を受けた氷竜の皮膚は、青白いウロコが剥がれ落ち、緑色の血管が通う皮膚がドクンドクンと痙攣を起こしていた。若干だが、傷周りは薄っすらと緑色の血に染まっているようだ。


「そうか。氷竜(ヤツ)は妙に攻撃を受ける事を嫌っていると思ったが、魔力は全盛期に戻りつつあっても、その肉体は、まだ脆いということか……」


 考えてみれば、氷竜の戦い方は、攻撃こそ防御の型、それを体現した戦法だった。彼が極端に攻撃を受けたくない答えがそこにはあった。


「くっ、貴様らァ! 」


 氷竜は、弱点を晒された事に苛立ちを覚える。逆に、アロイスは強気に叫ぶ。


「氷竜! お前の弱点は分かったぞ……。結局、どれだけ虚勢を張っても、俺たちが怖かったということだ! わざわざ心理的な攻撃まで仕掛けて、さっさと戦いを終わらせたかったんだろう! 」


 それは、当たっていた。アロイスの考え通り、氷竜は古代戦争の戦いで受けた傷は完治しておらず、それを危惧して魔獣を操ることで早めに決着を付けたいと願っていたのだ。

 しかし、あくまでも相手は『 魔王の右腕 』として君臨した竜族の始祖ともいうべき存在。いくら弱点が見えたところで、そう簡単にいく相手では無い。


「だから……どうしたァッ! 」


 氷竜は激昂し、魔力を纏った尾っぽを振り回す。アロイスは大剣の側面で防御を取るが、ガチン! と火花を交えた金属音と共に、大きく吹き飛ばされる。


「ぬあっ! 」


 強靭な足腰、洗練された魔力技術。

 それを用いても、アロイスの肉体は簡単に弾かれ、洞窟の側面に身体を思い切り打ち付ける。


「がはっ! ……ゆ、油断もさせてくれないか……そうだよな……」


 氷竜がアロイスに攻撃が集中した際、今度はノーターゲットとなっていたリーフが、今度は火炎のハンマーを氷竜のウロコに目掛けて撃ち込んだ。


「隙だらけッスよぉ、お爺ちゃんッ! 」


 ドゴォ! 鈍い音のあと、ハンマーから大爆発を起こし、氷竜は一瞬白目を剥いた。更にウロコがボロボロと零れ、更に生の肉体をさらけ出す。


「ぐうっ! 貴様ァ!! 」


 すかさず首を振りなおして気を保ち、口を開いてリーフに向けて氷気(ビーム)を放つ。


「あうっ、これは不味いッス! 」


 殴り終えてから、空中に身を漂わせるリーフ。このままでは、回避できずに直撃を喰らってしまう。ところが、その寸前に、遠くに居たアロイスが「リーフ! 」と名前を叫び、大剣をリーフに対して思い切り投擲をしていた。


「あっ、助かるッス! 」


 リーフは、大剣に対して風魔力を込めたハンマーを繰り出す。大剣とぶつかり合うことで、磁石のエスとエヌのように弾き合い、リーフは後方へ飛ぶことで氷気(ビーム)を回避し、大剣はアロイスの元に戻った。


「い、いちいち小賢しい真似を貴様らァ!! 」


 怒りに身体を震わせる氷竜だったが、その時。


「ゴホッ!? 」


 氷竜は咳き込み、口からダラリと緑の血液を垂らした。

 すると、彼の周りに浮かんでいた氷柱のうち、フィズの氷柱がバキン! と音を立てて崩れ、その身体が解放される。


「あっ、フィズが生き返ったッス! 」

「おおっ、フィズ! 」


 アロイスたちが叫ぶ。

 フィズは空中から落ちる自分に気づいていなかったが、すぐに我を取り戻し、地面に着地すると、辺りを見回して状況を確認した。


「な、何が……。俺は、氷竜に……はっ! 」


 遠くに見えた、アロイスとリーフの姿。

 近くには咳き込む氷竜と、氷柱に閉じ込められたリンメイたち。

 それだけで、どのような状況下を察したフィズは、氷竜が怯んでいる隙にアロイスの元に駆け寄った。


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