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of my mind(4)


 【 2081年5月21日。 】

 カントリータウンを出発してから三日後。

 アロイスは、青いデニムに黒のシャツというシンプルな恰好に相応しくない大剣を背負い、セントラル空港に降り立っていた。


「やれやれ。こんな形でセントラルに戻ってくるとはな……」


 久しく都会に足を運んでいなかったこともあって、空港の大きさや、遠くに並ぶ建物の高さに驚かされる。


(普段は大自然の山々ばかり見ていただけに、高い建物はちょっと戸惑うところがあるな。それでも、一年前まで通っていたわけだし……やっぱり懐かしいといえば懐かしい)


 セントラル空港は、3,000メートル級の滑走路を複数有する世界一の国際空港である。セントラルフィールズにおける往来手段として、都市部1,000万人以上の住民や、冒険者を含めた観光客などの交通を支える中心であった。


(えーと、まずは西口に出て……と)


 平日も休日も関係なく、セントラルはかなりの魔族や人間が行き交う。

 お客の間をすり抜けるように歩き、何とか空港の西口へとたどり着く。


(さて……)


 西口から出て直ぐ、セントラル都市部の一丁目となる。

 そこは、多くの一流企業が立ち並ぶ商業区域で、ほとんどが高層ビル郡という見た目的にも華やかな場所だ。特に最近は錬金技術の発展により、希少金属や純度魔石などで造られた豪華絢爛な高層の建物が並ぶようになった。


(相変わらずの雰囲気だな。建物が高いし、キラキラとハデだ。一流の商社ばかりが立ち並ぶ一丁目なのに、『 見栄 』のためだけに建てたオヤジは馬鹿というか、なんというか……)


 思わず、苦笑いする。


(この道を歩くのも、一年前は普通だったのに、今じゃこんなにも懐かしい。どれ、さっさと本部に行くか)


 空港西口を出てから正面に歩いて、五分ほど。

 ……それは、すぐに見えた。

 豪華絢爛なビル郡に挟まれるようにして建っている、不相応な茶色いレンガと木造で造られた古めかしい建物。広さは140坪、平方460メートルと平均的な一軒家が4つくらい並ぶ大きさで、他の建物と比べてあまりにも小さすぎる。


(あったあった)


 あまりにも古びた容姿だが、周りの一流商社に勤める者たちは、その建物について馬鹿にする者は誰一人としていたりしない。

 何故なら、それこそ冒険時代に名立たる『クロイツ冒険団』本部であると理解しているからだ。


「さて。久しぶりに戻ってきたが、どうしたもんかな。ただいまーっと帰ってみるか。……オヤジが居たら、怒鳴られそうだが」


 勝手に団を抜けてから会っていないし、何を言われるか分かったものじゃない。

 しかし、今さら帰るわけもなく、本部の玄関に立った。


「……」


 木造の両開きドア。手を掛けて、ゆっくりと、それを押し込む。

 ギギギ、と(きし)んだ音を立てながら扉は開いた。

 まず、一階に在る大広間の受付フロアが迎えてくれる。


(おーっ、何も変わってない。……そりゃ一年足らずで何が変わるわけでもないだろうが)


 受付カウンターの両脇からは、階段が上層に向かって伸びている。

 2階から3階まで担当部署がそれぞれ存在し、4階には本部所属かつフィズやリーフなどの管理職の部屋があり、最上階となる5階には団長室が構えてある。


(えーと。いきなり団長室に行っても良いんだが……)


 部外者が冒険団に要件がある場合、フロア受付に要件を伝えることで、別階層のメンバーと面会を行うことが出来る。覚えてる限り、マニュアルでは管理職についてアポイントメントを必要としていた気がする。


(だけど、確か俺って『冒険者としての籍』がまだ残っているって言ってたんだよな。でも、一年も帰っていなかったこともあるし、やっぱり受付に連絡してしてからフィズとかと話をさせて貰うっていうのが普通なんだけども……)


 とにかく、受付に聞いてみるか。


(受付サンが俺のことを、どう判断するかなんだけど……)


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