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傲慢なプライド(5)


 その名を聞いた瞬間、明らかにアンダーの表情が怒りに満ちる。仲間の二人は、それを見てバツの悪そうな顔色を浮かべた。通話する隊員はそんな事が分かるわけもなく、通話口のアロイスに対して現状について話をした。


「はい、そうです。ええ……、隣町の冒険団フィルムズに依頼を掛けていたのですが不在のようで。えっ、一般の冒険者ですか? いえ、ダンジョンがダンジョンなので……。はい、ジンさんはもう中央に戻ってしまわれました。ですから。……あ、えっ? ほ、本当ですか!? 」


 通話をしていた隊員の顔色が明るくなる。そして、言った。


「有難うございます。はい、西側の旧遺跡群の……はい。場所は、そこの……はい、ご存知でしたか。はい、 ありがとうございます! それでは、こちらでお待ちしております。はい! それでは、失礼します! 」


 通話を切った隊員は、すぐさま全隊員に声をかける。

 話を聞いたアロイスさんが救助に赴いてくれる、ということを。

 隊員たちは「わぁっ」と喜ぶが、面白くないのはアンダーである。

 彼の救助に赴くことを認可された途端、目の前の隊員にいよいよ暴言のような声を上げた。


「お、おい。アロイスってあの酒場の店主だろ! どうして俺が駄目で、アイツが良いんだよ! 」

「どうしてと仰られましても、それは実績が確かなものだからです」

「でも一般人なんじゃねえのか。普通は俺を優先させんだろ! 」

「私達にとってアロイスさんは良くさせて頂いております。それに警衛大将のお墨付きですので……」

「なっ……!? 」


 それにはアンダーも驚いた。警衛大将のお墨付きとは、冗談も甚だしい。だが、警衛隊が嘘をつくとも思えない。


(あ、あの野郎ォが警衛隊のトップのお墨付きだとォ……!? 確かに腕っ節はそれなりにあるみてぇだが、クソったれ……! )


 アンダーは悔しそうに歯ぎしりする。と、背後の二人が恐る恐る話しかけた。


「アンダーさん。俺、分かりましたよ……」

「あァ!? 何が分かったっつーんだ! 」

「あのアロイスってやつ、元クロイツのトップっすよ……」

「は? 」

「ほら、田舎町で酒場始めたって話。大将のお墨付きだし、多分そうですよ」

「アイツが、クロイツのトップだぁ!? 」

「はい。ですから、警衛隊の皆さんが信頼を置いてるのも当然かと……」


 普通はそれに気づけば億劫するものだが、アンダーは深く負けず嫌いで余計なプライドがあった。


「それでも、今はボロ酒場の主に落ちぶれてんだろ! クソが、負けてたまるかよボケェ! 行くぞお前ら! 」


 アンダーは目を血走らせて、支部の建物から飛び出す。

 二人は「どこへ行くんです」と嫌な予感をしながら彼の背中を追いかけながら尋ねると、さも当然のように、アンダーは答えた。


「俺が救助してやるんだよ。アロイスが最強冒険者とか呼ばれてるみてえだが、知らねぇよ。アイツより俺が優れてるってトコロを見せてやらないと気が済まねぇ。アイツに恩を売って、俺に頭を下げさせてやっからよ。あの電信口で言ってた遺跡群のダンジョンで遭難つったら、この辺じゃそれなりにデケェダンジョンだったから場所だけは分かるし、アイツより早く救出してやれば良いんだろ」


 彼の答えに、後ろの二人はギョっと顔を見合わせる。常識的に考えて、口を開いた。


「アンダーさん、待って下さい。警衛隊から情報も貰えずダンジョンに行くのは無謀ですよ! 」

「さすがにアロイスさんに喧嘩を仕掛けるような真似は止めませんか」


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