表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/358

若き日と斜陽(14)


「んぐっ……!? 」


 その瞬間、押し寄せる魔力の渦。

 全身が燃えるように発熱する。


「あっつ!? お前、めちゃくちゃ体温上がってるけど大丈夫なのかこれ! 」

「80度くらいまで上がるかもしれないけど、お前なら耐えられるだろ」

「おま……バカか!? ぬぉっ……、ふぐっ!? 」


 そして、アロイスが最高の熱気を感じた瞬間。全身を煙か湯気か分からないモヤが包み込み、グングンと肉体が大きくなり始めた。


「おっ、おぉ!? か、身体が……」

「ほーれ、戻ってきた」

「アロイスさん、頑張ってください! 」


 16歳、17歳、18歳、19歳……。

 数秒毎に、元々の姿へと戻っていく。


(良かった。やっと、今のアロイスさんに戻るんだ……! )


 ナナは、アロイスが戻る姿を眺めていたが、しかし。

 アロイスがようやく20代の肉体に戻り始めた際、思いもよらない出来事が起こる。


 ビリ、ビリビリッ!!


 若かった頃のアロイスの衣服が破れ、まさかの全裸を披露してしまう大事故が発生したのだ。


「……ッ!!!? 」


 目の前で披露されたアロイスの全裸。

 ナナは思わず赤面して、両手で顔を隠しその場にうずくまった。

 アロイスは「嘘だろ! 」と、近くにあった布で下半身を隠す。

 店長は予想しない事故を前に、アロイスを指差して大爆笑した。


「ぶっ、ぶぁっはっはっはっはっはっは!? 」

「ふ、不覚だ! つーかお前、笑うんじゃない! 」

「だって面白すぎるだろ! くっ、くくく、ははははははっ!! 」


 カウンターテーブルをバンバンと叩く店長。アロイスは破れた衣服をかき集めて腰に回す。ナナは床にうずくまったまま、見てません見てません見てません、甲高い声で何度も呟く。


「く、くそぉ! 何てことだ……。だ、だが……」


 そうこうしている間に、アロイスの肉体は今の鋼のような巨体を取り戻す。熱気も落ち着き、これでアロイスは元に戻ったというわけだ。


「何とか元に戻れたみたいだな。とりあえず助かったよ」

「おう。それよか、そこで俯いてるのを何とかしてやれって」

「ん……」


 店長が指差した方向には、未だうずくまって顔を隠すナナの姿があった。


「あー……。す、すまんナナ。もう大丈夫だって。ほら、見てみろ! 」


 両腕を大きく拡げるアロイス。上半身は古代を彩る彫刻のような肉体を露わにしていたが、下半身は破れた衣服を適当に繋ぎ合わせて隠している。ナナは涙目になりながら「はい……」とアロイスを見上げた。


「ほ、ホントに元に戻って……る。だ、大丈夫なんですか……? 」

「ああ大丈夫だ。紆余曲折だったが、もう完全に治ったぞ」


 アロイスは笑顔で言うと、ナナも戻ったことに安心して笑う。……ところが、そんないい場面に水を差す男が一人。背後から、ニタニタと笑って、アロイスの下半身を隠す衣服に手を伸ばして……。


「はい、どーん!! 」


 その衣服を解き、思い切り下に引っ張った。もちろん、床に座り込んでいたナナの位置からは、その目にアロイスの全てが映ってしまい。


「……きゃあああっ! 」


 最早、為す術なし。ナナは叫び声を上げて、再び顔を隠した。

 店長は「やりぃ! 」と指を鳴らす。

 そしてアロイスは、隠す気なしの素っ裸のまま、笑顔で店長に近づいた。


「なぁー、店長」

「おう、何だ? 」


 店長が返事した刹那、ゴツンッ!! と鈍い音が響き渡る。


「がっ……ふ……」


 ……ドサリ。

 アロイスの拳の一撃を受けた店長は、その場に倒れたのだった。


 ………

 …


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ