表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/358

Happiness(3)


「ですよね。明日、畑仕事が終わったらカ・パリさんの工務店に行って材料を購入して、後は雑貨店にも行きましょうよ」

「そうだな、やってみよう。ナナの言う通りなら、別にブラウニーに迷惑も掛けないだろうし、良い案かもしれない」

「やった、有難うございます♪ 」


 ナナは嬉しそうに言った。


「そんじゃ、ナナも明日はその作業を手伝って貰おうかな」

「もちろんですよ。一緒にブラウニーを喜ばせます! 」

「ハハ、そうだな。では、今日は帰ろうか」


 こうして、二人は帰路につく。

 それから次の日、祖母と畑仕事を終えると、予定通り二人はカ・パリの工務店で木材やらを購入。その後、、商店通りの雑貨店に足を運び『ある物』を更に購入して、酒場に向かった。


「喜んでくれるかな、ブラウニー」

「きっと喜んでくれるさ」


 二人が店に入ると、まずは夕方の開店に向けて軽く料理の仕込みを行う。メインの肉料理の下ごしらえだけ済ませると、アロイスとナナは外に出て、久しぶりに裏の倉庫に入って、仕舞われていたノコギリやらの日曜大工品を手に取った。


「ナナは俺が切った木材を磨いたりしてくれるか」

「分かりました。頑張ります! 」


 トントン、カンカン。午後の森に響き渡る軽快な作業音。二人は創作に没頭して、あっという間に時間は過ぎていった。


「……終わったぞ! 」

「きれいに磨けたと思います、どうでしょうか」

「全然上等だ。後はこれを、店内の壁に取り付けよう」


 造ったのは、木材の角を撤去して丸みを帯びた数枚の木板。それらを店内に運び、カウンターテーブルの端っこに、普段の客らの邪魔にならないよう取り付ける。アロイスが接着用に釘を打つ間、ナナは雑貨店で購入した水と白のストライプカラーの布をハサミで切って、取り付けが終わった木板を覆った。


「あとは、これを置いて……と」


 また、用意していたのは『小さな人形遊び用のティー・セット』だった。ストライプ布で覆った木板に、それらの椅子、テーブルを置く。更に、ナナは、とても小さなクッションとテーブル・クロスを器用に縫って、テーブル上にお皿とコップも並べた。


「出来ました! 」

「おー、かなり良いじゃないか」


 ナナが提案して二人で作り上げたのは、ブラウニー用の小さな小さな特別席だったのだ。


「喜んでくれるかなぁ。ちゃんと座ってくれるかな……? 」

「きっと喜ぶさ。閉店前にブラウニー用のちっちゃな料理も用意して置いていかんとな」

「はい。美味しい料理を食べさせてあげたいですよね」

「そうだな、今日の夜、閉店後に何か用意してあげて、夜に覗いててみようか」

「見てみたいです」


 ブラウニーが喜んでくれたのなら、嬉しいけど……。不安と期待がいっぱいになる。

 やがて、気づけば午後5時。外には既に、顔馴染みの客たちが今か今かと待機していた。


「おっと、不味い。ナナ、外の客に開店を教えてきてくれ」

「あ、もういっぱい並んでる……! はい、すぐに席にご案内します! 」


 開店と同時に、酒場には客が溢れ返った。

 てんやわんやに賑わう店内。アロイスとナナは、接客対応に勤しんだ。


   ……そして、6時間後。


 今日は22時頃には客足が途絶え、少し早めに休憩を取る事が出来たのだった。


「昨日より1時間早く終わったな。今日もお疲れさん、ナナ」

「はい、お疲れ様でした。それで、これから……」

「そうだな。ブラウニーのために料理を用意しよう」


 アロイスは指を鳴らして、調理を始める。ナナもキッチンに入り、その手腕を近くで見ていた。


「今日のメニューは、小さなオムレツと、メインの柔らか唐揚げ。それと、サラダもな。飲み物はミルクと、一応ミネラルウォーターの2つを用意しておこう。夏場だから少し長く置くと腐ってダメになるし、今日は冷蔵保管庫に仕舞っておいて、1時前になったら温め直して盛り付けるか」


 本当はギリギリで料理を作ってあげたいが、もし毎日作ることになったら体力的にナナはしんどくなる。 今後のことを考え、冷めても美味しく食べて貰える料理を選んだつもりだ。


「あとは、掃除したり在庫チェックしたり、また軽食でも食べて時間を潰そうか」

「そうですね。じゃ、掃除とかしちゃいます」


 二人は朝1時まで、のんびりと時間を潰した。それから時間は過ぎ、まもなく1時。アロイスは再びキッチンに立って料理を温め直して小皿に盛ると、いつものように明かりを消して戸締りを確認し、外に出た。店の横で腰を下ろし、ブラウニーが現れるのを待つ。


「……あっ、来ましたよ! 」


 ほどなくして、1時を過ぎて直ぐにオレンジ色の明かりに包まれたブラウニーが現れた。昨日見た時と同じで、最初に店内をフワフワと飛び回る。そして、数分後、また以前と同じように、カウンターの縁に腰を下ろした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ