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兄の威厳って⋯⋯

 次の相手はカレンか。


 「にぃ、いくよ。あたしだって強いんだから!」


 「あぁ、どっからでもかかってこい!」


 そのままカレンが一直線に突っ込んでくる。来る攻撃は単純な横薙ぎ。俺なら難なくいなせるはずだ。


 そう思い俺の木刀をカレンの木刀に合わせた瞬間。


 俺は吹き飛ばされていた。


 「ぐえっ⋯⋯。」


 変な声が出て飛ばされた先に倒れ込む。な、何が起きたんだ?


 「にぃ!ごめん大丈夫?」


 「兄様兄様ぁ!」


 カレンが珍しく申し訳なさそうにこちらをのぞき込み、リリエラに至っては泣き出してる。


 「だ、大丈夫だよ⋯⋯。」


 そう答えて起き上がろうとするも、ボロボロになった俺はふらふらとおぼつかない足取りだ。


 「っ⋯⋯。」


 父様がそれを見て絶句している。そりゃそうだ。今の俺は並の大人の一撃なら凌げる自信がある。ましてや6歳の一撃に吹き飛ばされることなどあるはずが無いのだ。


 しかし現実に起こってしまった。


 「な、なぜ⋯⋯。」


 その言葉を最後に俺はダメージと精神的なショックで気を失ってしまった。



 ――――――――――――



 あの事故から二年がたち、俺は10歳となった。


 今、俺が何をしているかというと、


 「火炎球ファイアボール!」


 「うん、いい出力ね!その調子よ!リキ君。」


 母様の指導のもと、魔法の修練をしていた。母様は父様とパーティーを組んでいた魔法使いであり、これまた凄腕だそうだ。


 俺は9歳から母様に魔法を習い始め順調に習得していった。


 「リキ君はすごいわ!この歳で火炎球ファイアボールの無詠唱なんてできる人は滅多にいないわよ!」


 だ、そうだ。やっぱり異世界と言えば魔法だよな!


 剣術?⋯⋯んなもん知らん!


 正確には9歳の頃に互角だったはずのリリエラに勝てなくなってから剣の道は諦めた。父様曰く今の俺でも一般的な兵士は目じゃないくらい強いらしいが、それにしたって妹に毎回負かされるのは気分がいいものじゃない。


 そうして9歳から魔法をはじめ、1年が経ったというわけだ。


 一応鈍らない程度に剣も振っているが、家族には見られないようにしている。


 まあ、気持ちを切り替えて魔法に没頭しよう!俺が向いていたのはきっとこっちなのだから。


 そう剣のことを頭から打ち払い、魔法の修練に集中するのだった。



 ――――――――――――



 俺は12歳になった。魔法の修練を始めてからも3年が経ち、覚えた初級魔法は全て無詠唱で唱えれるし、最近は中級魔法もいくつか無詠唱でできるようになった。


 それに俺は魔法を唱える際に必要となる『適応属性』が3つもあり、母様を驚かせた。


 属性とは全部で6つあり、火水土風の基本四属性と呼ばれるものに、光闇の特殊二属性と呼ばれるものだ。


 俺の適応した属性は火、土、闇だった。


 属性を1つも持たず、魔法を使うことが出来ない人間がそこそこな数いる中で、3つも属性を持つ人間は滅多にいないとの事だった。


 それに光闇の特殊二属性は適応する人間が極小数で、特殊属性を含めた多重属性持ちの俺は魔法使いとしてかなり有望だと母様が教えてくれた。


 ちなみに母様は水と風の二属性である。


 最高峰の実力と謳われる王都宮廷魔導師団にも多重属性持ちは2割ほどしかいないらしい。


 それと、ずっと確認していなかったのだが俺が住んでいるのはアトリアル王国の『リバスの街』という王都の隣町らしい。


 アトリアル王国、王様が居るのだなんて、やはり日本とは違うのだなぁと改めて実感した。


 家の時計を見ると、そろそろ母様に魔法を習う約束をしていた時間が迫ってきたので、俺は魔法の修練場として使っている裏山へと向かった。


 裏山へ到着するとそこには母様と⋯⋯他に二人の少女が居た。リリエラとカレンだ。


 二人とも剣の腕はもう俺をすっかり超えてしまい、カレンに至っては父様と本気で打ち合えるらしい。だがどうして二人がここに?そう思い母様のほうに視線を送ると、


 「来たわね、リキ君。それじゃあ始めましょう。あ、そうそう今日からリリちゃんとカレンちゃんも魔法の練習をするから、お兄ちゃんとして面倒見てあげてね。」


 との事だった。なるほど、二人も魔法の修練を始めるのか。それならしっかりと俺が見てやらないと、魔法は暴発した場合術者が怪我をすることがあるし、しっかりと監督せねば。


 「あ、あの!兄様、よろしくお願いしますね!」


 「ふ、ふん!あたしはにいに見てもらわなくても失敗なんかしないわよ!」


 二人ともやる気は十分のようだ。それと最近カレンのツンツンした性格に拍車がかかった気がする。ちょっとお兄ちゃん寂しい。


 「それじゃあ二人とも初級魔法からやってみようか。詠唱は?」


 「あ、覚えてきましたよ!見ててもらえますか?」


 「うん。いいよ。」


 まずはリリエラが挑戦するみたいだ。


 「では⋯⋯炎よ火球となりて敵を撃て!」


 その、リリエラの火炎球ファイアボールの詠唱で炎の球が出来上がり真っ直ぐ飛んでいった。そのまま裏山の岩にあたり消滅する。


 どうやら成功したようだ。そしてリリエラには無事、火属性の適性があったようだ。


 「うん、なかなかねリリちゃん、それじゃあリキ君、お兄ちゃんの凄さを見せてあげて!」


 母様に急かされる。ここは俺のできる最も高難度の魔法を!


 「はい母様。⋯⋯⋯⋯はあっ!」


 気合いを入れて一点を指差し魔力を込める。すると指さした方向に炎の竜巻が出現した。


 竜巻は岩を巻き込み粉々にする。よし!上手くいった!


 「すごいわ!リキ君。中級魔法の炎竜巻ファイアトルネードまで無詠唱だなんて!」


 母様がべた褒めしてくれる。なかなかに照れくさいが、これで兄の威厳も見せれただろう。すると、


 「えいっ⋯⋯⋯⋯こんな感じ?」


 カレンが見よう見まねで魔法を行使する。ははっ

 そんな簡単に出来るような物じゃ⋯⋯


 カレンが指差す先には轟々と木々を破壊する炎の竜巻。


 う、嘘だろ⋯⋯俺が無詠唱できるようになったのはつい先日だったって言うのに⋯⋯。


 「あっ!意外と出来た、ねえリリもやってみて?本気でね!」


 「えっと⋯⋯その⋯⋯。」


 そうカレンに催促されて困った顔をするリリ。中級魔法の無詠唱なんて普通俺らの歳では出来るものじゃないんだ。いくらカレンが出来たからと言ってリリにも要求するのは酷だろう。


 そう思い、カレンを止めようとするが、それより先にカレンが何やらリリに耳打ちをしていた。


 「もし⋯⋯魔法を⋯⋯たら⋯⋯にい褒めてくれるよ。」


 それを聞いたリリはピクっと何かの言葉に反応し、キラキラした眼差しでこちらを見てきた。


 「兄様!わたしやってみますね!もう一度見ていてください!」


 「お、おう。」


 何やら俺が褒めるだとか言っていたが何なんだ?


 「⋯⋯⋯⋯魔術をこう⋯⋯こんな風に混ぜて⋯⋯こうかな?」


 何やらリリエラがブツブツ言いながら魔法を放つ準備をしている。大丈夫だろうか?


 「できたっ!⋯⋯⋯⋯やあっ!」


 瞬間リリエラの立っていた先が炎の嵐に見舞われる。その光景は炎の龍が暴れ回っているようだった。


 しばらくして炎が収まるとそこには全て炭になった木々だったものがあった。


 「最上級複合魔法⋯⋯大炎嵐ファイアテンペスト⋯⋯。」


 母様がボソリとこぼした言葉を聞いて俺は驚愕する。俺は詠唱ありでもまだ上級魔法が使えないのに、リリは無詠唱で最上級魔法を使ったのだ。


 しかも大炎嵐ファイアテンペストは複合魔法。火属性と風属性両方に高い適性が無いと使えない。


 「な、なんてことだ⋯⋯。」


 せっかく俺が優れていると思った魔法でさえ二人に叶わないと言うのか⋯⋯。俺は目の前が真っ暗になりそうだった。


 「に、兄様どうでした?」


 リリエラがはにかんだ様子で感想を求めに来る。


 「あぁ⋯⋯もう凄いとしか言いようがないよ。それとちょっと具合が悪くてな、自室で休んでくるよ。最後まで見てやれなくてごめんな。」


 「兄様!大丈夫ですかっ?」


 ふらふらと帰路につく俺に駆け寄ろうとしたリリエラを手で制し、俺は自室へと戻った。


 俺は剣でも魔法でも妹に何一つ適わないのか⋯⋯。そう落ち込みながら眠りについたのだった。

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