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妹の才能

 「リキくーん朝ご飯の時間ですよー!」


 俺が庭で剣を振るっていると家の中から母様かあさまの声が聞こえてくる。


「はーい!母様!」


 そう答えて、俺は母親の元へと向かう。そう、俺がこの家に拾われてから6年が経過していた。


 そして6歳になるに伴い、俺は剣の朝稽古を始めていた。その理由は、


 俺が拾われた家はフィーリア家とは一応は貴族ではあるのだが、街の民となんら変わりのない生活だった。


 それもそのはず、上から順に公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵とある中で、フィーリア家は一番低い騎士爵。


 なんでも父様が冒険者として魔物を討伐した際の働きを認められて爵位を与えられたそうな。


 それに騎士爵は子供に継がせることが出来ない、一代限りの爵位なので長男であるからと言って俺が悠々と過ごせるわけではない。


 とれあえず、俺は父様と同じように将来的に冒険者になり、自立していくつもりだ。というのが6歳から朝稽古を始めた理由だ。


 ただ、ここにきて心配なのは未だに神様から貰ったという加護が何なのか全くわかっていないという事だ。


 せめて冒険者になる前までには判明させておきたいところなのだが。


 と、そのような事を考え、俺が庭から家の中に入ると。


「兄様!兄様!」


「ふん⋯⋯遅いわ。」


 二つの小さな人影がこちらへトテトテと駆け寄ってきた。


「リリ、カレン。二人ともおはよう。」


 そう彼女らの名前を呼ぶ。


「兄様!おつかれさまです!」


 この1年でさらに美しく可愛らしくなった妹のリリエラ。100人が全員美少女だと言うであろう。


「にい、早くして。」


 そうこちらに水の入ったコップを差し出してくれるのはカレン。こちらは1年前と比べてちょっと俺に対してツンツンした態度をとるようになった。


 きっと彼女の中で何か心情の変化があったのだろう。ただ、ツンツンしていると言っても、コップを差し出してくれるあたり、嫌っているわけでは無いらしい。


 本当によかった。もし妹に嫌われたら俺は三日三晩泣き続ける自信がある。


 この二人は俺の2歳下の妹であり、それにリリとカレンは双子である。両親の美男美女を見事受け継ぎ、今からとても将来が楽しみな二人だ。


 そんな二人と合流して食卓へと向かう。我がフィーリア家のルールとして朝食は家族全員で取るというものがあった。


 父様と母様も席についているはずなので、あまり待たせるのは悪い。


「すみません父様、母様。朝の鍛錬で少し遅れてしまいました。」


「いや、良いんだよ。お疲れリキ。」


 と言って爽やかに労ってくれるのは我が家のお父さん、リカード・フィーリア。初めて見た時から六年たっているがその若々しさは一切変わらない。


 なんでも有名な冒険者らしく、数年前の魔物による王都襲撃の際、大型の魔物を単独で撃破して爵位をもらったとか。


「それでは頂きましょうか。さあ席について。」


 そう言うのは母親のマリア・フィーリア。こちらも同じく六年前から全く変わらない見た目だ。


 いや母様との付き合い方にはかなり苦労した⋯⋯。俺が1歳や2歳の頃はオムツを変えられて妙に恥ずかしかったり、はたまた食事の際のその豊満な胸へと下心を抱かないようにするのに必死だったりと。


 ともかく赤子の頃から自我を持つのもデメリットがあるのだなと認識したのだった。


「「「いただきまーす!」」」


 家族全員で、手を合わせ朝食を取り始める。すると、ふと父様が口を開いた。


「そういえば、リキは朝稽古を始めたんだね。」


「はい!父様!僕も6歳になりましたので。剣の練習を。」


「そうかそうか、今度見てあげるよ。」


「本当ですかっ!ありがとございます父様。」


 と、父子での交流を深めていると、傍らで妹達が母親になにか交渉をしていた。


「お母様、わたしも朝稽古に参加したいです!」


「あ、あたしも!」


 どうやら妹達は朝稽古に加わりたいようだった。彼女らは小さい頃から剣なんて握らなくていいと思うんだけどなぁ。


「うーん。まだちょっと早いわねぇ。二人とも6歳になったらリキ君と一緒に朝稽古できるから。それまで我慢よ。」


「むぅー⋯⋯。」


「嫌よー!」


 二人ともむくれてしまった。そんなに剣を振りたいのか、可愛い顔してちょっと怖いな。だが可愛らしさの方が圧倒的に上回る!と兄バカの精神全開で二人を見ながら、朝食は進んでゆくのだった。



 ――――――――――――



 時はさらに進んで俺は8歳となった。


 父様曰く俺の実力とセンスは8歳児のものとは思えない。だそうだ。


 まあ当たり前だろう。精神は高校3年生でありずっと毎日剣を振り続けてきたのだ。


 それと今日から6歳になったリリエラとカレンが朝稽古に加わるようになった。二人は今まで、毎朝、俺の朝稽古を献身的に支えてくれていた。おかげで今もとても仲のいい兄妹だ。


 カレンは年が経つにつれてどんどん態度が強気になって、今や立派なツンデレさんとなっている。が、言葉ではツンとしながらもその実常に俺を気にかけてくれているので、まったく気にならない。むしろ可愛い。


 そんな二人の妹たちが今日から俺と共に稽古に励むのだ。


 俺が二人の剣の先輩としてかっこいいところを見せてやらなければ。


 朝稽古の時間になり、庭に俺、父様、リリエラ、カレンの4人が揃っていた。


「今日からはリリとカレンも朝稽古だね。まあとりあえず二人には剣を扱う難しさを知ってもらおうか。ちょっとリキと思うままに打ち合って見てごらん。」


 そう指示する父様。よし!この2年間で鍛えた華麗な剣さばきを可愛い妹達に披露する時が来たぜ!


「よ、よろしくお願いします兄様!」


 そう緊張しながら剣を構えるのはリリエラ。


「最初はリリか。そんな固くなんなくてもいいぞ!肩の力抜いていこう!」


「は、はい!では行きます!」


 そう言って剣を振りかぶってこちらへ駆けてくる。うーん。女の子だけど木刀を振り回せるのは凄いけど、足さばきがまだまだだな。


 そう思い俺はリリエラの振る木刀にこちらの木刀を合わせる。


 カンっとお互いの木刀が弾かれる。


 ―――いや少し驚いた。リリの振るった一撃は俺の予想以上に重かった。これは少し気を引き締めなければ。そう思い今度はこちらから攻撃してみる。


 しかし、リリエラに上手く防御され、あと一撃が届かない。


「なかなかやるなっ、リリ!」


「は、はい!」


 将来リリが冒険者や騎士になるのならばかなりの使い手になるだろう。そう感心して俺は攻撃のペースを上げていった。



 ――――――――――――



 10分後


「くっ。」


 まだ決着がつかない。それどころか、


「やあっ!」


 ガン、と木刀が交差する。俺が守りに回ることが多くなっていた。どういう訳か打ち合う度にリリの剣が冴えていく気がする。


 俺は8歳としてかなり強い方なのに、今日はじめて本格的に剣を振ったリリと互角な戦いを繰り広げている。リリはやはりすごい才能があるのだろう。


 と、その時リリが追撃をかけるため一歩前に踏み込み、足元の石に躓き体制を崩した。


 すかさずリリに剣を向けて当たる前に止める。


「そこまで!」


 どうやら俺の勝ちらしい。が初回からかなり苦戦してしまった。リリに負けていては兄として不甲斐ない。俺もさらに修練しないと。


「お疲れリリ、立てるかい?」


 地面に座りこんでいるリリに手を差し伸べてやる。


「ありがとございます兄様。流石です!」


「いやいやリリの方が凄いよ!はじめての模擬戦であんなに剣を使えたんだから!」


 その事が悔しくもあり、誇らしくもある。


「そ、そうですか!」


 そう言って嬉しそうにリリは戻った。


「じゃあ次はカレンだね。でもリキは少し疲れているだろう?15分休憩にしようか。」


 そう父様がいったので、一旦休憩となった。


「父様、リリはすごいですね。」


 休憩中、俺は父様に話しかける。その内容はリリの非凡な剣の才能についてだった。6歳の子供どころかそこら辺の8歳の子供ではまったく手も足も出ないだろう。


「うん、そうだね。正直、父さんも驚いているんだ。」


 やはり父様も同じことを感じ取っていたらしい。すると休憩の時間が終わったのか、リリエラとカレンが水飲み場から戻ってきたので、模擬戦の再開となった。


 今度の相手はカレンか。次こそは兄の強さを見せてやる!





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