ある日、お嬢様は能力を試用しました
みここです。初投稿だったよ。
夕暮れ時なのか辺りは明るいオレンジ色に染まっている。
遠くから聞こえるベルの音――ここでは日が沈む時になると毎日鳴るらしい――がその景色に色味を加えていた。
現在僕は屋敷の庭に立っている。庭と言ってもそこら辺の公園よりも大きい。ここから見れば、屋敷の広大さが目に見えて推し量れた。広すぎでしょ。
そんなだだっ広い庭の中央になぜ居るのかというと、それは目の前に立つメイド長を見ればわかることだった。
彼女は暴風に包まれていた。その風はメイド長の操るままに渦巻き、ごうごうとたなびく。彼女の眼光からは殺気こそ感じられないが明確に敵意が込められている。
その視線の先はもちろん僕だ。
いやなに、僕が彼女を怒らせたとかそんなことではない。
これは僕からの提案なのだ。
話は少し遡る。
「そんな! モンスターがいる中でどうやって冒険をすればいいんだよ」
僕の言うことはもっともなはずだ。僕が日本にいた記憶はとんと思い出せないが、まさかモンスターがはびこっているような地ではなかったと記憶している。それに自分にはそういったものと対峙するような度量も生き残るだけの力もない。当然だろう。
「いえいえ、そんなご謙遜なさらずに。お嬢様にはギフトがあるじゃないですか」
「ギフト?」
……なんぞや?
この世界に来た時、僕は服以外なにも持っていなかったぞ。というか服すら僕の持っていたものでもなかったっぽいし。
「そのギフトっていうのは一体何なの?」
「ギフトというのは、生まれ持った特殊能力でございます。ほとんどの人は持っていないのですが、一部の人がその才能を先天的に有しています。そして大概の場合、ギフトは通常の魔法を超えるほどの能力であったり、魔法では実現不可能なことまでできるものもあります。さしもの私もギフト持ちではありますが」
ギフト……。なんだかすごそうだけど、一体どんなものなのだろうか。
「なんであなたは僕がギフト持ちだってわかるの? 僕でもわからないのに」
「それが私のギフトですから」
――他人がギフト持ちであるか否かを判別するギフト
彼女はそういうギフトらしい。
「じゃ、じゃあ僕が持っているギフトっていうのはどんな奴なの?」
「そこまでは判別しかねます」
内容まではわからないのか。しかし相手がギフト持ちであるか否かがわかるだけでも、情報戦ではいくらか分があるのだろう。そうなると、彼女のギフトもまた強いと言える。
「そうか、じゃあ物は試しだ。ギフトの使い方を教えてよ」
「かしこまりました。それでは庭へと向かいましょう。あ、装備はそのままつけてくださって結構です」
というのがここまでの経緯。そして彼女は対面すると同時に風を巻き起こした。
「ギフトは大きく分けて二つ。アクティブとパッシブが存在します。アクティブとは、お嬢様が発動したい時に、任意で発動するギフト。反対にパッシブとは、意思とは関係なく常時発動し続けるギフトになります。私のギフトは後者、つまりパッシブになりますね」
彼女の有するギフトがパッシブ……つまり彼女は常に誰かのギフトの有無が見えているということか。
一体どのような感覚なのだろう。
「ちなみに、中にはハイブリッドギフトなどというアクティブ、パッシブ両方のギフトを持つ稀有な存在も確認されております。まあ稀有過ぎてなかなかお目にかかれないらしいのですが」
「そんなものまでいるのか。それで僕のは一体どっちなんだ? まさかハイブリッドではないんでしょ?」
「そうですねえ……」と彼女はまじまじと僕を見つめる。今まで気にもしていなかったけど、このメイド長、割とかわいいのだ。そんな人に見られるなんて気恥ずかしい。今現在僕は女ではあるが。
「パッシブは常に何らかの効果が外に出ています。ですがお嬢様からそんな気配は感じられませんね。一概には言えないですが、ほぼ間違いなくアクティブであるように思います」
「そうか、僕はアクティブギフトなんだ」
手のひらを見る。しかしいつも通りきれいな指をしている以外これといったことはない。
「そのアクティブってのはどう使うんだ?」
「そうですね、私はアクティブではないのでわかりませんが、知り合いによりますと『臨戦態勢になって、相手に向かって何かしたい!』って強く思えば出るそうですよ」
「随分曖昧なんだね」
「ええ、彼女はそういう方ですから」
彼女のその顔からはどこか楽しそうな雰囲気が感じられた。よっぽど仲の良い人なのだろう。
「そうか。じゃあ、メイド長。あなたに向けても大丈夫なのかな? 怖いのだったら危ないし」
「ええ、もちろんですお嬢様。そのために風で私を守らせていただいております。いくらお試しとはいえギフトを使われるのは少々危険ですので」
場合によっては相当危険なもの。そんな危ないものを彼女に向けてよいのだろうか。しかしせっかく彼女が受け止めてくれるというのだからその言葉に甘えさせてもらおう。
「それじゃいくよ」
「はい、どうぞお好きなように」
メイド長は先ほどからの鋭い視線をより一層険しいものに変えた。それをみた僕は静かに目を閉じ、なにかを汲み取るように力を込める。
暗闇の中、明るく光る前方を捉えた。そのまま目を開くと、その光は彼女から発せられていた。メイド長の全身から出るオーラ。それに向かって僕は手のひらを向ける。
「ギフト発動!!」
その途端、僕と彼女をさらに強い風が包み込んだ。
みここでした。初投稿だったでした。
これを書くだけでそれなりに時間がかかってしまいました。ちょっと文章量が多いですかね?それでも読んでくださるとうれしいです。次回、お嬢様の能力が判明します。それではまたの機会に。
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