暗殺者
みここです。これがほんとの初投稿。
オーラが消えた先、その向こうにヴァンがいる。
不思議とそう感じた僕は、装備を整えてその方角に向かう。
大きな通りを抜け、方位を確かめつつ小さい路地を進む。
ぐねぐねと進んだ先、そこに少し広めのスペースとそこそこの大きさの教会が建っていた。
「ここにいる気がする……」
僕は恐る恐る教会の戸に触れようとすると、触れる前に扉は開いた。
「あっ。あら、いらっしゃい。お祈りに来られたのかしら」
戸を開けた主は、僕がいたのに驚いたのか一瞬たじろいだが、すぐに平静に戻り教会のシスターとしての定型句を言う。
「いえ、そういうわけじゃないんです」
「では、なんの御用でしょう。相談なら受け付けますよ」
「あのっ、ここに騎士……ヴァンはいらっしゃいますか?」
「……っ! 失礼ですが、あなたはどなたですか」
一瞬驚いたような顔をしたシスターは、僕の素性を問う。
「ミラです。ミラ=オルティア。騎士ヴァン=アスモデウスの知り合いです」
「ああ、あなたがミラさんね。それならこちらにどうぞ」
シスターは僕の名前を聞くと即部屋に案内してくれた。
「おお、ミラじゃないか」
「ヴァン!」
入った部屋の中にはいくつかベッドが用意されており、ひとつは貴族風の男。もう一つにはヴァンが寝かされていた。
「心配しただよ! 貴族の屋敷が燃えてたから……!」
「すまんすまん、敵の奇襲を受けてな。みんなやられちまった。しかし間一髪でアートラス様は助けられたのは幸運だった」
「その説は感謝するぞ。お主はよくぞ尽力してくれた」
ヴァンのベッドの隣、高貴な雰囲気を漂わせるその男――アートラスは答えた。
「はっ、お助けできて光栄でございます」
うむうむと、アートラスは頷く。
「それにミラ、さっき力がふと戻ってきたんだ。これで復帰できるから安心してくれ」
「……ッ!」
そうだ、僕がヴァンの力を奪っていたから本来の動きができなかったんだ。僕のせいでヴァンはひどい目に……。
「それは違うぞ、ミラ。あれは奇襲だった。運が悪ければ最初の一撃で死んでいたかもしれない。運がよかっただけなんだ。それにもし力があっても反撃することにしか使えなかっただろう。だが、今回はアートラス様を守らねばならなかった。反撃なんていう選択肢はもとよりなかったんだ。力があったところでこの結果に違いはないさ」
「僕に力がないのはわかってるけど、それでもヴァンの力になりたかった」
「なあに、これは俺の仕事だ。帝国と関係のないお前が出るところじゃないさ」
「それでもっ!」
言いかけた僕のセリフを止めるようにヴァンは僕の髪の毛をわしゃわしゃと搔き乱した。
「でも、ありがとな。心配してくれて」
途端、この五日間ため込んでいた涙がぽろぽろこぼれだし、嗚咽が止まらなくなった。
その情けない姿をヴァンはやさしく抱き留めてくれた。
「ここか」
「はい、ここにベルモンド家の長男がいます」
「そうか、わかった。ならお前はもう用済みだな。死ね」
「な、何を! 情報をやれば資金をくれると言ったじゃないか。教会を立て直すために――」
言葉を言い切る前に牧師姿の男の首は宙を舞う。
路地の壁に赤黒い血しぶきが派手に飛び散った。
「さあて、一狩りいくか」
血の付いたグラディウスを持ったローブ姿の男は、その剣に付着した血を振り払いながら、目の前の教会に向かって歩き出した。
みここでした。初投稿なんて嘘です。
次回、謎の暗殺者とミラが戦います。