宣戦布告
みここです。初投稿といえば初投稿だろうし、そうでないともいえる。
爆発音があった場所、つまり貴族の屋敷の方向から煙が立ち込めていた。
開かれた場所まで走ってみると、少し小高い丘の上にある屋敷がもうもうと燃えているのがよく分かった。
「あそこが、貴族の……」
とりあえず目標は見つけた。
僕は、真っすぐ走り出していた。
「くっ……。なんてことだ。まさかここがやられるなんてな」
俺がこの屋敷に挨拶しに来てまだ数時間。
王国貴族ベルモンド家の長男、アートラス=ベルモンドとお会いしていた時にそれは起こった。
最初はもちろん、帝国からの文書を手渡すだけであった。しかし聞くところによると現在、王国には共和国からのスパイが紛れ込んでいるらしかった。
帝国の騎士である俺だが、帝国としても隣国であるクラリス王国には恩を売っておきたいところ。王国の要望であればこちらでしばらくの活動を認めてくれるとのことだった。つまり、王国の御仁をお守りしろと暗に命令されて来ている。
そこで今回の共和国の話だ。
クラリス王国は、山脈のふもとにある。その山脈とは反対に我ら帝国があるのだが、共和国はその山脈の向こう側に存在している。基本的に山脈を超えるのは手間がいる。そのため今までお互いに深く干渉してこなかったのだが、共和国はついに動き出したようだ。
「それで共和国の密偵がここに忍び込んでいるという噂を聞いたのだが、少し不安でな。王国のためだ。そなたの力を借りてもよいか」
「もちろんでございます。我ら帝国は王国とのよき関係を築いていきたいと思っております故、私ヴァン=アスモデウスが御身をお守りいたしましょう」
「感謝する」
そして現在がこれだ。
屋敷のいたるところが燃え、警備兵が幾人か倒れている。俺は、意識を失っているベルモンドを担いで逃げていた。
屋敷は広い。それでも爆発の影響は屋敷全体にまで至っていた。
「ここまでの爆発ともなると、大人数での魔法攻撃しかないな……」
密偵は少人数と聞かされていた。しかし、これでは宣戦布告のようなものだった。
確実に一中隊以上の数が潜入していた。
遅きに失したか……。
瓦礫が落ちてくる。つぶされぬよう、俺は急いで出口を目指した。
僕が着いた時、そこにはもう炭と塵と少しの熱しか存在しなかった。数時間ほど前まで豪奢できらびやかだったろう屋敷は、ものの見事に消滅していた。
ヴァンはどうしたのだろうと、辺りを歩く。
悪臭が酷い。血の匂いも焼けた匂いも鼻を通っては、無理に肺から出そうとする。
カサッと踏んだ何かが、かつて人だった者の腕だろうとわかると、僕は気分が悪くなって吐いた。
「まさか……それはないよね」
踏んだ死体がヴァンではないと半ば思い込むようにして前に進む。
すると一つの影が僕の横を通り過ぎた。
「遅かったようね」
「……ッ! お前がやったのか!」
怒りと共に振り返るが、嫌な気配を残し影はゆらめき消えた。
後に残るは、虚しいこだまだけだった。
みここでした。断言しよう。初投稿だったと。
第三の国が現れました。ここから先どうなるのでしょうか。
未だに名前が判っているのはクラリス王国だけですね。
あとは帝国と共和国。