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吾輩は霊である  作者: もち米
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吾輩は霊である

暇潰しにどうぞ

吾輩は霊である



突然だが私は幽霊である。


理由は分からない。ただ気がついた時にはこの場所でふわふわとたたずんでいた。


記憶もない。自分の名前ですら思い出せない。


時間感覚もないのに、ただいたずらに時間が過ぎていったことだけは記憶していた。



そんな存在であったはずの私が自我を取り戻したのは最近のことだ。

なにやってんだろう私… と、ふと考えついたその時より思考することのできる自我を取り戻すことができた。


最初は驚いた。当たり前である

誰でも自分がスケスケボディーになってたら驚くだろう。動転した私は自身の手で体を何度も触れようと必死になったがダメだった。手は虚しく空をきった。


だが、私は圧倒的に開き直りが早い人、いや幽霊であった。まぁ女湯覗け易くなったからいいか。とまぁ、エロガキ精神待ったなしのお茶目な理由で開き直ることができた。


開き直ると幽霊早いもんだある。自身の状態、幽霊ボディーのメリット、デメリットすぐさま実験、推測を立てた。


まずは、浮遊霊であること、自分のことは何も覚えてないこと、基本触れない、触られないしかしこう一点に力を入れるとわずかだが触ったり動かしたりできることが分かった。ということは、自分に触れる人もいるかもしれないということでもある。霊能者と言う奴である。するとお祓いとか徐霊などされて天国地獄へ一直線となるだろうと予測できる。



………… ふざけんな!



誰が大人しく祓われるか!

せっかく霊生得たのにみすみすこの機会を逃すのは惜しいだろう。


という事で私の新たなる霊生がスタートしたわけだが、ここで問題が発生した。


動けないのである。

いや、動けるが一定の範囲からは出れないことが分かってしまった。

しまったどうしょう……

とりあえず動ける範囲でうろうろしてみることにする。

森の中にあるバカデカい木を起点とした10メール範囲が行動できる場所なのだろう。

都会でこの範囲は結構大きくて色々できそうだが、残念ながらここは森、暇で暇でしょうがない。

上に上がろうと思えばデカい木の高さまでなら上れるようだ。

そこで木のてっぺんから周囲を見渡して見ることにした。

するとまぁ街らしいのは結構先に見えるが近くになにやら建物が見える。

鳥居があるから神社か

なんとなく近づける範囲で近づこうと思った。


見るとどうやら廃墟と化しているらしい。ここからでもボロボロでオドロオドロしい、いかにも幽霊でますよ感が漂っている。

まぁ今じゃ私も幽霊なんだがな。


(もし、なにやらちこうでさまよっとるのがおるようじゃな)


!! なんだ今の!


(ほれそこの坊主、お前様じゃよ)


わ、私!私か!

思わず周囲を見渡せど姿は見えず、思わぬ接触で慌ててしまう。

どうしよう……絶対神社の方からだ。成仏させられるかもしれない……


(ほらどうした。こっちにこんか!いやなに取って喰やせん。久々に話し相手が欲しいんじゃ)


……どうする。いやいいか、ここまで言ってんだし、このままこの場で縛りつけられるのもイヤだしな。覚悟決めて行くか。


(よしよし、そのまま此方へ来い。ワシが招いてやっとるから来れるはずだ)


どうやらその通りらしく10メール出ても近づける。とりあえず礼儀正しく正面から失礼させてもらいましょうか。



そこはボロボロの筈なのにどこか品が漂う不思議な場所であった。一番奥の神棚は結構キレイに揃えてあって外の外見とは別物であるかのようだった。

そこの中心にそれはイタ。

明らかにこの世において浮いている。そこだけくり貫かれたかのようで神性を帯びた狐が居た。


(おう、ようやっと来たか。待っておったぞ‼)


かなりの神様オーラでこの場にいるのがつらい。なんかかき消されそう。


(お、すまぬの。ちと強すぎたようじゃな。許せ)


そうして重圧から解放される。消されるかと思った。


(あははは、許せ許せ。霊に会うのも久々じゃ、加減を間違えただけじゃ、そう睨むな)


そうは言ってもあのままだと消されてた自信がある。何様だこの狐。


(神様じゃよ)


……その通りですね、はい。今自然に心読まれたが、やっぱり神様ですか、成仏させられるんですかね。それとも不敬で地獄行きですか。


(安心せい。そんなことで地獄につれて行かんし、せっかくの話し相手を早々に成仏させんよ)


………本当に?


(本当じゃ本当。ワシは嘘はつかんよ)


それ本当のことも言わないって落ちでしょ、知ってますからね。


(あははは、よく知とるの。だが安心せい、よほどのことがなければ隠しだてもせんよ)


……その言葉信じますよ。


(うむ、素直でいいことじゃ。それに笑ったのも久しくての。実に良い気分じゃ)


そういうもんなのですか。


(そうじゃよ。最近の若いもんはどいつもこいつも自身の怨念に飲まれて会話すらままならん。昔はオヌシのような自分の死を割り切っとる奴が多くて話し相手もぎょうさんおおたのにの)


へー、でも別に私は割り切ってるわけではなくて覚えてないだけなんですけどね。


(いやいや、覚えておらんのは割り切っとる証拠じゃ。それはそれ、これはこれと切って捨てたと言うことじゃ。未練を、縁を断つのは難しいことじゃよ。ワシからすればそのままずるずる引きずるよりさっぱりして良い。最初こそ縁がある地から離れんが一度離れれば後はほとんど自由。気楽が一番じゃ)


そうか…そうなのか……気楽が一番、変に引きずらない。よし、なら自由にある程度迷惑がかからないようにこれからの霊生楽しむか‼


(おうおう、そのいきじゃ。楽しまなければ損ぞ、存分に楽しめ。若いもんはそのぐらいが良い)


ありがとう狐様!私はこれから楽しむことにいたします。だけどいいのですか?神様って幽霊を成仏させるものでは?


(何をいっとる。確かにワシは神じゃが引退した身じゃ。それにオヌシは面白そうでな早々に成仏させぬよ)


うわ、神様の言葉じゃないな。でもありがとうございます神様。


(よいよい、許そう。久しく面白い小僧が現れたわ。ワシは気分がいい。よし、飲むか!)


え、飲むってお酒…


(ワシが溜め込んだ秘蔵酒がある。今夜は楽しむぞ!)


は~、分かりましたよ神様。お供させていただきます。













それから結局3日3晩飲み明かし、ぐでぐでになって二日酔いに幽霊なのに死にそうになるということがおきた。

ちなみにお酒は流石神の秘蔵酒、素晴らしく美味でした。







あれから数日。何だかんだで神様のとこでお世話になってそろそろ街にくり出す事にした。



それでは神様。お世話になりました。とても楽しかったです。


(うむ、ワシも久しく話せて良かったぞ。また来るといい)


次は土産話をお持ちしますよ。


(そうかそうか、楽しみにしておこう。お、そうじゃ!いいものをやろう)


神様がそう言って奥の方からなにやら神性漂う箱を持ち出して来られた。なにあれヤバイ……


(そうじゃこれじゃ。これをやろう。何かしらの役に立つはずじゃ)


そう言って取り出したのが狐面。ヤバイ匂いがぷんぷんするが、自分の中の黒い想いが疼く!


ナニあれカッケェー


(あははは、喜んでるようじゃの。持ち出した甲斐があるもんじゃ)


ありがとうございます。大切にしますね!


(ふむ、触れてもオヌシならもう大丈夫じゃ。あれだけ神酒飲んだんじゃから今さらじゃよ)


へーあれ神酒だったんだ。美味いはずだ。


(達者での小僧。楽しんでけな)


はい。神様!






そうして狐面を被り私の新たなる旅がスタートしたのであった。


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