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第5話 なぜだ

 現在、ダンジョンの最下層300階の1室にて、ヒミカ達は1つの円卓を囲んでいました。


 座敷童子のチョコによって、ヒミカ達の前には熱い緑茶と豆大福が用意されています。


 いつもならチョコに笑顔でお礼を言うヒミカですが、この日は静かにありがとうと言うだけでした。ヒミカ様はどうされたのだろうと思っているのか、首を傾げながらチョコが部屋から出て行きます。


 ヒミカ達だけになったことで、ヒミカは両肘を円卓につき、顔の前で左手を右手で包み込むようにし、重々しく口を開きました。


「悲しいお知らせがあります」


 いつになく真剣な表情のヒミカを見て、何事だろうとタキリはゴクリと唾を飲み込み、ニミは一口お茶をすすり、クッチは豆大福に手を伸ばしました。


「ダンジョンがオープンして、早一週間、このダンジョンへの挑戦者が誰もいません」


 タキリはうんうんと何度も頷き、同意を示します。


「ダンジョンというものは、作れば勝手に人が集まるとコトアマニュースには書かれていました。でも、私たちのダンジョンには誰も訪れません」


 そこでヒミカは一息つき、タキリ、ニミ、クッチに順番に視線をやります。


「これでは何のためにダンジョンを作ったのか、さっぱりわかりません!」


 徐々にヒミカの声が大きくなっていきます。

 休みにすることがなかったから作る事にしたのではと思ったのか、ニミの右の眉毛が少し上に上がりました。


「お休みを充実したものにするために、始めたダンジョン作成ですが、挑戦者がいないままでは終われません!」


 ヒミカは手を解き、右手でタンタンタンと机を叩きます。さらにもう一度、今度は左手でタンタンタンとお茶がこぼれないように、適度な力加減で机を叩きます。


「私は、このダンジョンに多くの人が訪れ、このダンジョンをクリアする者が出るまで、決して外には出ません! 私は立派なダンジョンを作りあげてみせます!」


 ムキーっと整った顔を歪めつつ、ヒミカは拳を握りしめ、両手を高く上げました。


 この言葉を聞いて、タキリ、ニミ、クッチはギョッとしました。

 なぜならば、頑固なところがあるヒミカは1度口にしたことを翻すことがほとんどないからです。真面目なヒミカは、ここで自分自身に誓いを立ててしまいました。ヒミカに二言はありません。即座にダンジョンのルールに、先ほどのヒミカの言葉が設定されました。


「ひ、ヒミカ様!

 それは!」


 タキリがヒミカに考えなおしてくださいと言おうとしましたが、ニミがタキリの肩を軽く叩き、続きを言うのを止めさせます。今のようにテンションが上がっている時のヒミカは、止めることができないことをニミはよく知っているからです。


「ヒミカ様。それではクリアする者が出るように、何とか多くの挑戦者を呼び込むことを考えましょう。

 このダンジョンの事を誰に伝えていますか?」


「ツクヨちゃんへの手紙に書いて伝えています!」


 ニミの問いかけに、ヒミカは元気よく答えました。


「他には誰に伝えていますか?」

「他? 他とは?」


 ニミの問いかけに、ヒミカは首を傾げながら答えました。

 クッチがもぐもぐと豆大福を咀嚼しながら、ヒミカの顔をちらりと見ます。

 こぼれそうになるため息を必死にこらえているのか、ニミは口を固く閉ざしました。そして、大きく深呼吸をしてから、ヒミカに話かけます。


「わかりました。

 それでは、ダンジョンがオープンしたことを神々や人々に案内をしましょう。

 私がビラを作って、配布することにします」


 「それは名案です!」と、興奮した様子でヒミカはびしっとニミを指さしました。


 ニミは即座に、一枚の紙をカバンの中から取り出し、その紙にダンジョンオープンの案内を書きました。そして、右手で印を結び、短く言の葉を口ずさみます。案内が書かれた紙が淡く光ると、何枚にも複製され、ダンジョンの外へつながる転移門へと向かって飛んでいきました。


「これでしばらくすれば、人々はこのダンジョンのことを知ることになるでしょう」

「さすがは生成の神のニミちゃんです! 手際がいいですね!」


 ニミの手際の良さを見たヒミカは、パチパチパチと拍手をしながら、褒め称えます。

 豆大福を食べ終わったクッチが、ニミの方を向いて声をかけます。


「ダンジョンの入り口に看板作って」


 クッチの言葉にニミは頷きながら、答えます。


「たしかに、わかりやすく看板を作っておきましょう。

 チラシにも書きましたが、看板には、このダンジョンのルールなども載せておきます」


 ヒミカとタキリはうんうんと頷いています。


「くっちゃんの目の付け所もいいですね」


 と、ヒミカは満足げに微笑みました。


 

「ニミちゃんとくっちゃんのおかげで、ダンジョンについての案内ができました。

 これで、しばらく様子を見ることにしましょう!」



 ◆



 ニミによって作られたビラは多くの神々や人々が通る場所へと飛んでいき、壁や塀にはりつきました。

 突然のビラになんだなんだと、多くの者達がビラの周りに集まり、読みはじめました。



ーー<ダンジョンOPEN>ーー


・挑戦者求む!


 ヒミカ様の手により作られたダンジョンがアメノイワトにオープンしました。

 数多くの挑戦者をお待ちしております。


 このダンジョンをクリアする者がでない限り、ヒミカ様が地上に戻ることはありません。



・死ぬことのないダンジョン! 宝箱もある!


 ダンジョン内には多くのモンスターやトラップがありますが、生命の危険はありません。

 ダンジョン内では死ぬことはなく、死ぬほどのダメージを受けた場合、ダンジョンの外に弾きだされ1週間ペナルティの呪いを受けるだけです。


 ダンジョン内には宝箱も用意されています。

 老若男女、神や人、妖魔を問わず、ヒミカ様のダンジョンでは挑戦者をお待ちしております。



・ダンジョン内の設備


 各階層に男女別のトイレあります。

 5階毎に宿屋、1の位が3の階にはショッピングができるお店を完備しています。


・最後に


 重要なことなのでもう一度記載します。

 このダンジョンをクリアする者がでない限り、ヒミカ様が地上に戻ることはありません。


ーー ヒミカ様の眷属 ニミ ーー


 ビラを読んだ神々や人々は大混乱になりました。

 日の神であり、神々の頂点に立たれるヒミカがダンジョンにこもってしまったことに、多くの者が慌てふためきます。


「ヒミカ様がいないだと!?」

「でも、太陽はきちんと出ているぞ?」

「このビラの作成はニミ様になっているから、内容に間違いはないはずだ」

「じゃあ、本当にヒミカ様は地上にいないのか?」

「どうすればいいんだ!?」

「わかった! オレがダンジョンをクリアしてきてやる!」

「あっ、そうか、ダンジョンをクリアすれば、ヒミカ様は戻ってきてくれるのか!」

「ぼくもだんじょんにいくよ」


 ビラの効果は抜群でした。

 こうして、ヒミカ達が作っているダンジョンへの挑戦者が訪れる事になったのです。

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