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第42話 揃う回答者

 カシコマルは疲れた葉をしおれさせながら、クイズの開始を宣言します。


「そ、それではドキドキ早押しクイズのスタートじゃ!

 ルールはすでに説明してあるので省かせてもらうぞい。それでは他の3つの回答席に座る知恵を比べる者を呼ぶ事にしよう」


 カシコマルの言葉が言い終わらぬうちに、カシコマルの横に魔法陣が輝き出します。

 すると魔法陣の中から20階層のフロアマスターである一つ目巨人のガンリキがその巨体を現しました。


「ぐははは、20階層では不覚を取っ……」


 ガンリキは不敵に笑いながら、オサノを見て、そのままツクヨに視線を向けたところで言葉を失いました。そして、その顔はみるみる青ざめていきます。ガンリキは突然お腹を押さえてその場にうずくまります。


「あ、あいたたた。腹が痛い。これではクイズに答えることができん。

 カシコマルよ、すまんが帰らせてもらうぞ」


 ガンリキは一方的に言いたいことを言うなり、魔法陣の中で光となって消えて行きました。

 カシコマルは驚いたように目を見開き、言葉もありません。オサノはちらりとツクヨの方を見やります。オサノはおそるおそるツクヨに質問をします。


「あ、姉上。姉上はあの者に何かしたのですか?」


「私は特別なことをはしていないわ。

 ただ20階層で立ち向かってきたから、あしらってあげただけよ」


 オサノはなんとも言えない表情でツクヨを見つめました。

 カシコマルは、うおほんとひとつ咳払いをし、話し始めます。


「うむ、どうやら、ガンリキは体調が悪くなったようじゃ。気を取り直して再び別の回答者を呼び出すぞ」


 カシコマルの横には再び魔法陣が輝きだします。

 しかし、いつまで待っても回答者が出てきません。なぜならば、待合室に戻ったガンリキが、「回答者にツクヨ様がおられた」と呟いたからです。そのために他の回答者に決まっていた者達は一斉に用事を思い出し、自分のフロアに帰ってしまったのでした。


「むむ、どうしたことじゃ?

 誰も出てこぬぞ? あ、ツクヨ様、しばしお待ちくだされ」


 カシコマルの口元に一本の枝が降りてきました。待合室と会話が出来る通信木です。カシコマルは通信木に話しかけます。


「もしもし、どうしたのじゃ?

 なぜ誰も出てこぬ? な、なに!?

 回答者がいなくなった? そこにはもうほとんど誰もおらんじゃと!?」


 慌てて話すカシコマルの様子を、ツクヨは冷たい微笑を浮かべながら見ています。ツクヨの様子に気づいたカシコマルはもう少しお待ちくだされと冷や汗をかきながら小声で言いました。


「それではもうおぬしが来てくれ。

 えっ、無理? 用事がある? うそをいうでない! 嘘を!

 ちょ、おい! 通信木を置くな、おい! おーい!」


 カシコマルは切れてしまった通信木に再度話しかけます。だれかでてくれよと呟きながら、通信木からの返答を待ちました。もしもし、もしもしと話しかけ続ける中、ようやく通信木から返答があります。


「お、おぬしか。他には誰かおるか? うむ、うむ、しかたあるまい。

 おぬし達一緒に来てくれるか? 回答者がおらぬのじゃ。そうじゃ、そうじゃ、連れだって魔法陣に乗ってくれればよい」


 カシコマルは安堵したように大きく息を吐き出します。

 そして、魔法陣を発生させ、回答者を呼び出しました。


「お待たせしました。それでは回答者、ネッコとイッヌの登場ですじゃ!」


 カシコマルの案内と共に、ネッコとイッヌが魔法陣から元気よく飛び出してきました。

 誰もいなくなった待合室にやってきたネッコとイッヌはツクヨがいることを知らぬままやってきたのです。


「にゃん!」(登場!)

「わふ!」(がんばる!)


 魔法陣は2匹が現れると同時に消えました。2匹が帰ってしまわないようにカシコマルが先手を打って即座に消したのです。魔法陣がいつもより速く消えたことに驚くよりも先に、2匹は圧倒的強者が近くにいることを敏感に察知しました。


 まだ野生を失っていないネッコとイッヌは素早く行動に移ります。

 ツクヨのすぐそばまで行くなり、即座に仰向けになり、お腹を見せ服従のポーズをとったのです。


「にゃー」(服従するの)

「くぅーん」(序列は大事)


 ツクヨは冷たい微笑を浮かべたまま、ネッコとイッヌに目をやります。


「何をしているの?

 あなた達も早く席に着きなさい。知恵の樹よ、最後の1人はまだなの?」


 ツクヨに言われたネッコとイッヌは即座に起き上がります。


「にゃにゃにゃ!」(がりがりしてやるの)

「うわん!」(マーキングする)


 ネッコはカシコマルの幹で何度も爪を研ぎ、イッヌはカシコマルの幹にしゃーっとマーキングをしました。爪をたてられたり、おしっこをかけられたカシコマルはたまらず悲鳴を上げます。


「や、やめよ! 何をするか! お前達」


 ネッコとイッヌはフンと鼻を鳴らしたあと、ツクヨとは一つ座席を空けてそれぞれ回答席に座りました。


「ふぅ、さて、最後の回答者はどうすればよいじゃろう」


 カシコマルは大きくため息を吐きながら、通信木に話しかけます。


「もしもし、あのぅ、もし可能でしたら、だれか1人回答者として来ていただけないでしょうか?

 えっ、誰もいない? チョコ殿でも良いのですが、家事があるから無理ですか。もう頼める方が誰もいなくて困っておるのですじゃ。はい、ちょっと待ちます。えっ、えっ? 来てくださるのはありがたいのですが、いいのですか? えっ、じゃぁ、魔法陣を創りますのでお越しください」


 カシコマルは通信木を元に戻すと、魔法陣を創り出します。


「それでは最後の回答者を紹介しよう。このダンジョンを創られたヒミカ様じゃ!」


 カシコマルの紹介と共に魔法陣の中からは金髪の長い髪をたなびかせながらヒミカがその姿を現します。


「ツクヨちゃんとオサノちゃん、お久しぶりですね」


 ヒミカはツクヨとオサノに声をかけながら、優しく微笑みました。

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