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第41話 ダラダラするオサノと新たなる挑戦者

「うぃ〜、ここは食事も酒も旨いのである」


 100階層の宿屋で、オサノはお酒を飲みながら食事を食べていました。オサノは1ヶ月近く、100階層のドキドキ早押しクイズに負け続けているのです。


 ◆


 初めての挑戦の時は、ヒミカの眷属であるタキリに勝利をされました。オサノがぐぬぬぬぬと歯を食いしばりながら、タキリを見つめると、タキリは「はわわわわ」と慌てました。タキリは「オサノ様、がんばってくださいね!」と応援して、101階層へと続く階段の先へとその姿を消したのです。


 一緒にクイズを受けていたゲコマルは「さすがはタキリ様ゲコ」と満足そうに頷き、名もなきネッコは「にゃー」(おなかへった)とひとなきしました。100階層のフロアマスターであるカシコマルが、「それでは挑戦者以外は元のフロアへと送り返すからのう」というと、オサノ以外の回答者の足下に魔法陣が現れ、回答者は光とともに消えて行きました。


 あとに残されのはオサノだけです。オサノはカシコマルに話しかけました。


「吾輩はこれからどうすればよいのだ?」


「ふぉふぉふぉ、次のドキドキ早押しクイズは12時間後に開かれる。それまでどうしようとおぬしの自由じゃ。このダンジョンには5階層ごとに宿屋もあるから、やることがないなら宿屋にでも行けばよかろう」


「なんと、このダンジョンには宿屋があるのか!?」


 驚いたオサノの姿にカシコマルも驚きました。


「100階層まで来ておきながら、宿屋があることすらしらなんだのか・・・・・・そしてワシの話しを最後まで聞くことなく行ってしもうた」


 カシコマルは、部屋の外へと駆けて行くオサノの後ろ姿をひっそりと見つめていました。


 ◆


 オサノは宿屋に着くと、食事を頼み、一休みすることにしました。

 すぐに食事は用意されます。配膳した座敷童がお酒はどうしますかと訊ねると、オサノは目の色が変わります。「なんとここには酒もあるのか!?」とうれしそうに驚きながら、お酒を瓶で頼みました。


 オサノは食事をあっという間に食べ終え、酒を水の如く何杯も飲み、つまみを追加で頼みます。そのまま酒を飲み続けたオサノは、しばらくするとグーグーといびきをかきながら寝てしまいました。


 当然、12時間後に開催可能となったどきどき早押しクイズの場に現れることはありませんでした。


 ◆


 100階層のフロアマスター、カシコマルは片目を細めながら呟きます。


「あの挑戦者、あれから3日経つが来ないのぅ。

 ダンジョンから帰ったのじゃろうか? まぁ、よいか」


 ◆


 オサノは宿屋で、食事を食べたり、温泉に入ったり、酒を飲んだり、ぐだぐだしていました。

 その様子を見かねた宿屋の主である座敷童がオサノに問いかけます。


「オサノ様、もう3日目になりますが、ダンジョンの先に進まずによろしいのですか?」


「ここの食事に酒が旨くてな。それに温泉もあるではないか。もう少し羽を伸ばしていたいのである」


 オサノの返答を聞いた座敷童は首を傾げながらさらに問いかけます。


「私はかまいませんが、オサノ様はダンジョンのクリアのために来られたのではないのですか?」


「ははは、その通り! 吾輩はツクヨ姉上の・・・・・・はっ、こうしてはおれぬ!」


 オサノは慌てて宿の料金を支払い、フロアマスターの部屋へと向かったのでした。


 ◆


 オサノが100階層のフロアマスターの部屋に着くと、眠っていたカシコマルが目を覚ましました。


「おお、おぬし、しばらく来なかったからダンジョンから出たのかと思っておったぞ」


「ははは、そんな訳があるまい。さぁ、再び問題を出すがよい!

 今度こそ吾輩が見事に勝ち抜いてみせるのである!」


 オサノは胸を張りながらカシコマルに宣言しました。

 その言葉を受けてカシコマルは、ふぉっふぉっふぉと余裕たっぷりに笑います。


「よかろう! 前回とは違う回答者を呼ぶので少し待っておれ」


 カシコマルの横に魔法陣が発生し、そこから回答者が出てくるのでした。こうしてドキドキ早押しクイズ第2回戦が始まったのです。


 ◆


 その後、オサノはクイズに負けては宿屋に行き、座敷童に促されてはクイズに挑戦するという日々を過ごしたのです。そして、あっという間に1ヶ月が経ってしまったのでした。


 しかし、そんな日々に変化が訪れます。オサノが口笛を吹きつつ、100階層のフロアマスターの部屋に入るとカシコマルの様子がいつもと違うことに首を傾げました。


「むむ、おぬし、今日はどうしたのだ?

 いつもは青々と茂っている葉が心なしかくすんでおるぞ」


 カシコマルはゆっくりとつむっていた目を開きます。


「うむ、挑戦者よ。今日はな、この100階層におぬし以外の挑戦者が訪れたのだ」


「ほほぅ! ようやく吾輩以外にもこの階層まで辿り着いた者がおるのか!

 なかなかやるではないか!」


 オサノはうれしそうに声をあげます。


「して、その挑戦者はどこにおるのだ? 吾輩から少しアドバイスをしてやろうではないか」


「お前が私にアドバイスをくれるというのか?」


 自身の後ろからかけられた声を聞き、オサノはこれ以上ないほど目を見開き、口を呆然と開いたままゆっくりと後ろへ顔を向けました。


「つ、ツクヨ姉上・・・・・・ど、どうしてここに?」


「お前がいつまで経ってもダンジョンをクリアしないから、私のところに回ってくる仕事が多くなってきてね。ヒミカ姉様にそろそろ戻ってきてもらおうと思って、私が迎えに行くことにしたのよ」


「そ、それはすみませんでした」


 オサノはツクヨの言葉に、冷や汗を流しながら謝罪します。

 そんなオサノにツクヨは冷たく言葉をかけます。


「それにしても、お前は楽しそうにやってたみたいじゃない? ねぇ」


「い、いえ、そんなことはありません!

 吾輩はできる限りの力を尽くしてがんばっていたのであります!」


「へぇ、それじゃ、そこの大きな樹が嘘を吐いているのかしら」


 突然、話しを振られたカシコマルも幹をブルリと振るわせて、目を大きく見開きます。


「違う! 違いますぞ! ワシがツクヨ様に伝えた内容に間違いはございません!

 そこの挑戦者は、1度クイズに挑戦すると3日後か4日後でないと姿を見せませなんだ。100階層の宿屋で食べて飲んで温泉に浸かってダラダラしておったのは間違いございません!」


 カシコマルは力強く強くに向かって断言したのです。


「だそうだ。お前の力を尽くしたというのは、食っちゃ寝してダラダラすることをいうのかい?」


 オサノはダラダラと汗を流しながら、口をぱくぱくと開けたり閉じたりさせていました。

 そんなオサノを冷めた目で見つめたツクヨは、まぁ、いいとカシコマルの方を向きます。


「さぁ、時間も来たでしょう?

 クイズを始めるとしようじゃない」


 ツクヨは冷たい微笑をカシコマルに向けたのでした。

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