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第39話 オサノは進む

 オサノがダンジョンを1人でずんずんとどこまでも進んでいました。

 ヒミカ達は、その様子をダンジョンの最下層で見ていました。


「オサノくんはさすがは私の弟ですね。

 ずんずんダンジョンを進んでいますよ」


 ヒミカは優しげにスクリーンを見ながら、タキリたちに話しかけます。


「はい、さすがは三御神の一柱です」とタキリが褒めます。

「力だけなら、このダンジョンのモンスターで勝てる者はいないでしょうね」とニミが冷静に分析をします。

「クリアされる?」とクッチが疑問を投げかけました。


 クッチの質問にヒミカは首を傾げながら答えます。


「どうでしょう? フロアマスターのみんなも時間が有り余っているからか、ダンジョンの改築や挑戦者を迎え撃つ準備に余念はありませんから、そう簡単にはいかないと思いますよ」


 ヒミカはそういいながらも熱心にスクリーンを見つめます。


 ◆


 20階層では、前回神々を素通りさせてしまったフロアマスターである一つ目の巨人、ガンリキが張り切ってオサノを迎えます。オニギリが、オサノの先制攻撃でいきなりやられてしまったことを注意事項として伝えられていたガンリキは口上を述べることもなく、オサノに殴りかかります。


「うがああああああ!」


 ガンリキは両手で持っていた金棒をオサノに向かってフルスイングしました。

 ぶぉんというすさまじい音をさせながら、金棒がオサノに襲いかかります。オサノは迫り来る金棒を←手でパシッと受け止めました。


「ははははは、なかなかいい攻撃ではないか!」


 オサノは楽しげに笑います。ガンリキは全力の一撃がたやすく止められた事が信じられず、一つ目を大きく見開きます。


「次は我の番だな。フン!」


 オサノは空いている右手でガンリキに向かってジャブを繰り出します。ボグっという鈍い音をたててオサノの拳がガンリキに突き刺さります。ガンリキはそのまま言葉を発することもなく、光となって消えて行きました。


「はぁ、腹が減ったなぁ」と呟きつつ、オサノは次の階層へと向かいます。


 ◆


 30階層に到達したオサノは、大きな部屋に入るといきなり入り口が閉まりました。オサノは「なぬ」っと驚きの声をあげ、出口を見ると出口も閉まろうとしていました。


「まずい、閉じ込められる!」


 焦ったオサノはゆっくりと閉まっている出口に向かって全力で駆け出します。

 オサノが出口まであと少しというところまで近づいたところで、出口はあっという間に大きな岩に閉ざされてしまいました。


 しかし、オサノは止まりません。


「ふがあああああああ!」と叫びながら、大きな岩にぶつかっていき、そのまま大きな岩を壊して部屋から出ていったのでした。通路に出てからオサノは、大きく息を吐きました。


「あぶないあぶない。閉じ込められるところだったのである」


 とオサノはかいてもいない額の汗をぬぐいながら大きな声で言ったのでした。


 最下層でその様子を見ていたヒミカたちは言葉もありません。しばらくたって、ようやくヒミカがぽつりと「ダンジョンの壁や岩って壊せたんですね」と呟きました。その言葉にタキリ達は呆然としつつ、頷きました。


 ◆


 さらにオサノが30階層を進むと、部屋と通路の間に立て札が1本立てられているところにやってきました。オサノは<すみにかつろあり>と書かれてある立て札を読んだ首をひねります。


「よくわからぬな」


 オサノはよくわからないためにそのまま通路へと進みます。

 しばらく進むと前方から大きな白い鉄球がごろごろと転がってきました。オサノは「ふぉ!?」という声をあげながら、大きく足を開きます。そして、白く巨大な鉄球を受け止めました。


「こんな鉄球が転がってくるとは、物騒な道だ。

 さて、これは押していけばいいのだろうか?」


 オサノはとりあえず、上り坂になっている通路を白い鉄球を押しながら進んでいきました。

 その様子を最下層で見ていたヒミカたちはまたもや呆然としています。タキリが、「さすがはオサノ様ですね」と呟いた声が響きました。


 ◆


 30階層のフロアマスター、タカマルはスタイリッシュなポーズを決めて、初めてやってくる挑戦者を待っていました。


「クエクエクエ! ドキドキする」


 タカマルがドキドキしながら待っていると、部屋の外からゴロゴロという音が聞こえてきました。


「クエ? 何の音だ?」


 タカマルがスタイリッシュに待っていたら、部屋の入り口からドカンという大きな音がし、扉が吹き飛びました。


「クエエ!?」


 タカマルはスタイリッシュなポーズのまま、入り口に目が釘付けになります。すると入り口からは巨大な白い鉄球がゴロゴロゴロという大きな音を立てて向かって来ます。タカマルは慌てて逃げようとしますが、スタイリッシュなポーズが徒となり、その場でこけてしまいました。


「クエエエエ!?」


 迫り来る鉄球に思わず悲鳴を上げたタカマルはプチッと潰されて、光の粒となって消えて行きます。鉄球はそのまま壁にぶつかるまで転がっていきました。


「おお、大きな部屋にでたぞ!」


 オサノが鉄球に遅れて部屋の中に入ってきました。そして部屋の中を見渡し、鉄球がはまった壁の横に階段があるのを発見します。


「あれが次の階層への階段か」


 オサノはフロアマスターがいたことなど気づかないままに次の階層へ向かいます。

 その頃最下層では、不憫なタカマルの姿を見たヒミカとタキリがそっと目尻を押さえました。

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