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第34話 リタイア

 コヤネ達、神々はトッリのフンにまみれながらもダンジョンを先へ先へと進んでいきます。森の中にある小川でトッリのフンを洗い流しても、定期的に訪れるトッリの大群によりフンまみれにされるということが続いたのです。


 トッリのフン攻撃に気を取られ足下への注意をおろそかにすると、ダンジョン内に設置された罠にはまり脱落する神もちらほらと出始めます。トッリのフン攻撃と罠に苦しめられながらも、神々はなんとか25階層まで辿り着きました。


 ヒミカの作ったダンジョンでは5階層毎に宿屋が設置されています。フンまみれになった神々は、25階層で宿屋を発見しました。


「あっ、宿屋だ」

「宿屋に泊まっていきましょ! もうこんなフンまみれでいるのは我慢できない」

「でも、こんなに汚れていて泊めてもらえるのか?」

「ヒミカ様の作られた宿屋なのだからきっと大丈夫よ」

「そうよ、ヒミカ様は優しいもの。断られないはずよ」

「こんなところで考えていても無駄よ。行ってみましょ!」


 コヤネが口を挟む間もなく、特に女性の神々が宿屋を目指して走り出しました。



 ◆



 宿屋に一番に辿り着いた女性の神が勢いよく扉を開けます。

 

「いらっしゃいませ」


 宿屋の受付の座敷童が笑顔で、フンまみれになっている神々を迎え入れます。さすがはプロフェッショナル、座敷童は表情を全く変えません。先頭にいた女性の神が、フンまみれなのを気にしながら泊まることができるか尋ねます。


「あの、私たちは泊まることができるかしら?」


「はい、大丈夫ですよ。

 大浴場もありますからゆっくりと汚れと疲れを取ってください」


 座敷童の言葉に、宿屋の受付の前に集まっていた女性の神々はうれしそうに歓声を上げます。神々はすぐにチェックインをし、大浴場へと向かったのでした。


 宿屋の料金はダンジョンの下層にに行けば行くほど、少しだけ宿泊料金が高くなります。しかし、そこはヒミカプロデュースの宿屋だけあり、金額は良心的なのです。その後、コヤネ達、男性の神々も25階層の宿屋にチェックインをし、汚れと疲れを取ることになりました。



 ◆



 女性の神々はフンまみれになった服を、宿屋のランドリーに預け、大浴場に駆け込みました。暖かいお湯と良い香りのする石けんやシャンプーでフンを落としたあと、ゆっくりと大きな湯船に浸かります。


「ふー、気持ちいいね」

「ええ」

「ヒミカ様のダンジョンって少なくとも100階層はあるんでしょ?

 私たちはまだ25階層よ。こんなのでクリア出来るのかしら?」

「……うーん、ちょっと、いえ、かなり厳しいかもね」

「でしょ? もう他の神様に任せて私たちは一旦リタイアした方がいいんじゃないかしら。これ以上は私たちは足手まといよ」

「そうね、この宿屋で今後どうした方がいいか、一度落ち着いて考えましょう」


 女性の神々は精神的に弱気になっていることもあって、この宿屋でリタイアすることになりました。


 同じルートを歩いて帰ることに不安を感じていたため、女性の神々は宿屋を管理している座敷童に相談をします。すると、座敷童は少し待ってくださいとことわってから、ヒミカに連絡を取りました。


 座敷童から相談を受けたヒミカは、宿屋の通用口から地上に帰してあげてくださいと指示をしました。ダンジョン内にある宿屋の通用口は地上と直結させることもできるのです。ヒミカからの指示に従って、女性の神々を通用口に案内します。


 こうして女性の神々は25階層で全員がリタイアし、宿屋の通用口を通ってダンジョンの外へと出たのでした。



 ◆



 ダンジョンの最下層でヒミカは、フロアマスターたちからの報告書に目を通していると、25階層の宿屋の主人から連絡を受け取りました。ダンジョンに挑戦中の神々がリタイアしたいと言っているらしいのです。


 ヒミカは報告書を机の上に置き、むむむと考えます。


 たしかにこのダンジョンには、途中でリタイアしたい場合、ダンジョンから出る方法がありません。ダンジョン内で死ぬほどのダメージを受けて死ねば、ダンジョンの外で復活出来ますが、ダンジョンの外に出たければ死ねというのも酷だとヒミカは思ったのです。


 ダンジョン内に設置している宿屋の通用口は他の階層の宿屋やダンジョンの外につなげることができます。宿屋での快適なサービスを提供するためには必要だと考え、通用口にはそのような特殊機能をつけていたのです。


 リタイアしたい挑戦者は宿屋まで辿りつけたらそこから帰らせてあげればいいかと判断し、ヒミカは座敷童に通用口から地上に帰してあげてくださいと指示を出しました。


 ヒミカはキリッと表情を引き締め、静かに呟きます。


「来る者は拒まず、去る者は追わず」


 ヒミカはただ単にそのセリフが言いたかっただけなのでしょう。

 すぐに表情を緩めて、「タキリちゃーん」と部屋の外に向かって声をかけます。そして、駆けつけたタキリにダンジョンの看板に、宿屋から地上に帰れますと付け加え、各階層の宿屋にもダンジョンから出たい者は通用口から地上に案内するように連絡しておいてくださいと指示をしたのでした。



 ◆



 残されたコヤネ達神々は人数がかなり減りましたが、そのままダンジョンのクリアを目指して進んで行くのでした。

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