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第33話 トッリ

 コヤネたちは第20階層を突破したあと、慎重にダンジョンを進んで行きます。

 21階層からは緑あふれる森が広がっていました。小川のせせらぎが聞こえてくる中、コヤネ達は周囲を警戒しつつ進んで行きます。


 小トッリのさえずりがコヤネたちの近くで聞こえます。


「このフロアは、20階層までと違うな」


 コヤネが近くの神に話しかけます。


「ああ、5階層までの落ち着く癒やされるようなフロアだ。

 見てみろ、小トッリだっているぞ」


 近くの木の枝に止まっていた小トッリを指さして近くにいた神が返事をしました。


「仮に、あの小トッリに襲われてもたいしたことはないだろう」


「うむ」


 コヤネたちが話しながら歩いていると、小トッリが枝をパッと飛び立ちます。

 そのまま小トッリはコヤネ達の上を飛び去っていきました。ポトッという音と共に、コヤネの肩に何かが落ちてきました。


「む? 何か落ちてきた?」


 コヤネが何か落ちてきたことに気づき、呟きました。コヤネと会話をしていた神も気づき、コヤネの肩を見やります。


「こ、コヤネ、トッリのフンがお前の肩に落ちているぞ」


「なんだと!?」


 慌ててコヤネは上着を脱ぎ、懐から取り出した手ぬぐいでトッリのフンを拭き取ります。


「くそ、ついてないな!」


 コヤネは悪態をつきながら上着を着直します。


「うむ、トッリのフンはとれているぞ」


 コヤネの横にいた神は、トッリのフンがきちんととれていることを確認してから、返事をしました。コヤネはジトッとした目で返事をした神を見ながら言います。


「いや、運がないなと言っているのだ」


「うむ、フンはついていないぞ」


 会話のキャッチボールがうまくいかないままコヤネ達は、先へ先へと進みます。

 しかし、本当の恐怖はこれから始まることをコヤネ達神々は知らないのでした。



 ◆



 ダンジョンの最下層で、ヒミカとタキリがスクリーンを見ながら言葉をなくしていました。


 スクリーンには森の中を神々が逃げ惑う姿が映っています。

 ばさばさという羽音と共に、トッリの大群が木々の上を飛んでいます。そして、神々の上を通り過ぎるときに、大量のフンを神々の上に落としていくのです。


 森の木々の葉により、トッリのフンが全て神々に命中する訳ではありません。

 しかし、トッリの何千羽ものトッリが落とすフンは着実に神々の上に降りかかっていきます。トッリのフンでは神々には大した肉体的なダメージはありません。しかし、精神的なダメージが神々を蝕んで行くのでした。


 しばらく呆然とスクリーンを見ていたヒミカとタキリですが、我に返ったヒミカが悲壮な顔をして呟きました。


「ひ、ひどい」


 タキリは無言でヒミカに同意すべくコクコクと何度も首を縦に振ります。


「あぁ、またです。なんて数のトッリなんでしょうか」

「……はい、あれだけの数のトッリに襲撃されては逃げ場がありません」


 ボトボトボトというトッリのフン攻撃により、フンだらけになりながら逃げ惑う神々を見てヒミカとタキリはぶるぶると身を震わせるのでした。



 ◆



 コヤネ達神々はトッリの襲来に怯えつつ、森の中を駆けていきます。

 コヤネのあとに続く神々は口々に悲鳴や文句を言いながらも走っていました。


「またトッリのフンが降ってきた」

「うわ、逃げろ」

「ぎゃー、髪についた!」

「傘を持ってきていてよかったわ」

「オレも入れてくれ!」

「無理よ」

「早く下へと続く階段を見つけるのだ」


 コヤネは後ろに続く神々が混乱しているのを感じ取り、大声を出しました。


「みんな、落ち着いて行動しろ!

 トッリのフンに攻撃力はない!

 汚いだけだ! 安心しろ、死にはしない!」


 コヤネの言葉を聞いて神々は、落ち着くどころかわめきだします。


「攻撃力がないのは知っているよ!」

「汚いのがいやなのよ!」

「このダンジョンはもともと死なないじゃないか!」


 コヤネは苦虫をかみつぶしたような顔で、何も言わずに、ただただ前だけを見て走ります。


 こうして神々の間に不和が広がりながらもなんとか21階層を切り抜けたのでした。

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