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第29話 フロアマスター・オニギリ

 第10階層の大鬼の間の前までやってきた神々は、その巨大な門に手を触れました。

 すると黒く重そうだった扉がグガガガという大きな音と共にゆっくりと開いていきます。


 コヤネを先頭に神々は警戒をしながら大鬼の間へと入ります。

 部屋の奥には、赤色で統一された鎧を身にまとった小鬼たちが整然と並んでおり、その前には一匹の大鬼が毅然と立っていました。


 コヤネたちは、緊張した面持ちで全員が大鬼の間へと入りました。

 すると部屋の入り口の扉がグガガガという大きな音と共に閉まっていきました。赤い鎧を着た小鬼たちが、かけ声を駆けながら20匹ほどで一生懸命扉を閉めているのです。


 コヤネはその様子を見て、横にいた神にそっと話しかけます。


「自動で開いていた訳ではないのだな」

「うむ、おそらく開いた時も、あの小鬼たちが開けてくれていたのだろう」

「グガガガという音が聞こえていたものな」


 小鬼たちが息を切らしながらも入り口の扉を閉め終わると、それを待っていた大鬼が巨大な太刀を背中から抜き放ち、コヤネたちに向かって掲げ、大きな声で語り出します。


「よく来たな! 挑戦者たちよ!

 本当によく来たな!」


 大鬼の声に呼応して、後ろに並んでいた小鬼たちもグーガグーガと大きな声を立てます。さらに大鬼は言葉を続けます。


「オレの名はオニギリ!

 ヒミカ様のダンジョンの第10階層を任されたフロアマスターのオニギリとはオレのことだ!

 ここより先に進みたくば、オレとオレの軍団を見事打ち破ってみせるが良い!」


 小鬼たちもグーガグーガと大きな声をあげながら、槍を掲げます。

 コヤネは大鬼の言葉に答えるために口を開きます。


「我が名は、コヤネ! お前達が「者共! 突撃だ!」


 しかし、コヤネの言葉を遮り、大鬼は小鬼たちに突撃の指令を下しました。

 長い間、挑戦者を待っていた大鬼はコヤネの言葉を聞き届ける余裕はなかったのです。


 大鬼の言葉に従い、小鬼たちは槍の穂先をそろえて神々へと突進していきます。大鬼も小鬼たちの先頭を駆け、神々へと襲いかかります。その攻撃に焦ったのはコヤネたち神々です。


 口上の途中で突撃をされるとは思ってもいなかったこともあり、神々は虚を突かれた形になってしまいました。


「ヒミカ様の加護がある限り、死ぬことはないのだ!

 生命を惜しむな! 名こそ惜しめよ!」


 大鬼はコヤネに斬りかかりながら、小鬼たちに指示を出しました。


「グーガ?」(名?)

「グガガ?」(名前なんてないぞ?)

「グガグガ」(俺たち名前ない)


 大鬼の言葉に何匹かの小鬼は混乱します。しかし、混乱する小鬼は全体の一部でしかありません。大部分の小鬼たちは大鬼の言葉を深く考えることなく槍の穂先をそろえたまま神々に突撃していきます。


 コヤネはぎりぎりのところで大鬼の太刀を交わします。他の神々も小鬼たちの攻撃を躱したり、たたき落としたりしていますが、何名かは小鬼たちの槍に突き刺され、光となって消えました。


「フハハハハ! これが戦いか! いいぞ! もっとだ! もっと戦おうではないか!」


 大鬼は高らかに笑いながら、コヤネに対して太刀を振るいます。コヤネも大鬼の攻撃を受けたり弾いたりしながら、反撃を繰り出しました。コヤネが手に持つ杖が大鬼の身体を打ち付けます。ぐはぁ、と大きな叫びを上げながら大鬼は後ろに倒されます。


「ふふふ。さすがは神々だ!

 しかし、オレたちも貴様らをただでは通さぬぞ」


 大鬼は笑いながら、再びコヤネに斬りかかります。


「くっ、こやつら切りがない」


 コヤネは愚痴をこぼしながらも再び大鬼と向かいあいます。

 はじめは押されていた神々ですが、小鬼たちとの地力の差は大きいため、すぐさま態勢を立て直し、反撃に出ました。その後は神々は徐々に小鬼たちを駆逐していきます。


「者共! 弱っている敵を集中して狙うのだ!

 1人でも多くの敵をここで道連れにせよ!」


 大鬼の言葉に奮起して、小鬼はグガガと最後の力を振り絞り、神々に襲いかかります。それでも神々の力は小鬼たちと比べると強大なため、あっという間に小鬼たちは光となっていきます。


 傷つきながらも大鬼はコヤネに斬りかかります。大鬼は小鬼たちの奮戦に満足しながらも、コヤネを倒すまでの力がないことをここまでの戦いで悟っていました。


 コヤネの杖が大鬼の頭を目がけて振り下ろされます。

 その攻撃を大鬼は避けることなく、コヤネに向かって太刀を突き立てるために踏み込みました。コヤネと大鬼の身体が重なり合い、大鬼がにやりと笑います。


「次はその首をもらい受けるぞ」


 大鬼はコヤネに向かって最後の言葉をかけると、光となって消えていきました。コヤネは自身の脇腹に突き刺さっている大きな太刀を、歯を食いしばりながら抜き取ります。


「はぁ、はぁ。オニギリと言ったか、あの鬼め。

 玉砕覚悟で踏み込んでくるとは」


 そのまま、コヤネも地面に倒れます。他の神々がすぐさま他の神々がコヤネの手当にあたり、なんとか一命を取り留めました。


 傷を癒やしたコヤネは、大鬼が使っていた大きな太刀を手に取ります。


「この太刀はなかなか良いものだな」


 と言って、コヤネは大鬼の太刀を手にしたまま、大鬼の間を抜けて下の階層へと降りていきました。こうして神々は第10階層をクリアしたのでした。


 大鬼は復活して訓練を開始するまで、自身の太刀がなくなっていることに気が付きませんでした。

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