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第19話 クッション

「ふおぉおおおおお、なんじゃ、これは!?」


 サンタマは訪れたリラックスルームで、大きなクッションに腰をかけました。

 そして、そのクッションへ座った感触にたまらず大きな声をあげたのでした。


「沈む! 沈むぞ!

 おほほほ、なんじゃ、なんじゃ!

 このクッションは何なのじゃ!?」


 サンタマは、年甲斐もなく大きく柔らかいクッションに興奮しきりです。

 そんなサンタマの様子を冷ややかに見るのは、一緒にリラックスルームに来ていたナガミチです。


「なんぞ、なんぞ。

 サンタマよ、そんなクッション1つに大騒ぎをしてみっともない」


「何をいうナガミチよ!

 おぬしもそこにあるクッションに座ってみるがよい!

 さすれば、ワシのこの感動がわかろうというものじゃ!」


 サンタマはナガミチにもクッションに座ってみるように促します。

 ナガミチは冷ややかな様子でクッションの前に移動し、ゆっくりと腰を下ろそうとします。


「ふん、吾輩はおぬしのようにそんなにみっともなくはしゃぐ……、

 ふぉぉおおおおおお!? 沈むぞ!?

 なんだ、これは!? なんなのだ!?」


 ナガミチもクッションに腰をおろしてみて、驚きの声をあげました。

 大きなクッションにナガミチの身体がどんどん沈んでいきます。


「どうだ、沈むであろう?

 ワシのこの興奮がおぬしにもわかったか?」


「しかり、しかり!

 この座り心地は座ってみねばわからぬわ!」


 サンタマとナガミチはクッションに身をゆだねながら、しばらくの間、クッションについての感想を声高に話し合いました。やがて、サンタマとナガミチの間の会話は途切れ、静寂が訪れます。


 サンタマとナガミチはクッションにその身を沈めて、焦点の合わない目で口を半開きにしてぼーっとしています。


「はぁ、このソファはいいのぅ」


「しかぁり、しかり。

 まことこのソファは素晴らしい」


 サンタマとナガミチはダメになりました。



 ◆



 オオヒツは1人で女風呂に入ります。

 大きなお風呂にはオオヒツ1人だけで他のお客の姿は見えません。


「あたいだけか。

 まるで貸し切りだね」


 オオヒツの声が大きなお風呂に響き渡ります。

 身体を洗ったあと、オオヒツはどのお風呂に入ろうかタオルを身体の前に持ちつつ悩みます。丸いお風呂が目に入ったので、そのお風呂にオオヒツは入りました。


「ふぅ、あったかい」


 肩までお湯の中に浸かったオオヒツは、気持ちよさそうに吐息をはきます。

 オオヒツはお風呂の中に無数の穴が開いてあることに気が付き、首を傾げました。


「なんだろうね、この穴は?」


 オオヒツの疑問に答えるように穴から無数の泡が吹き出してきました。

 突然のことにオオヒツは驚き慌てます。


「な、なんだい!?

 泡? 泡が出てきたよ!?」


 最初は慌てていたオオヒツですが、徐々にその優しい泡が気持ちよくなっていきます。


「ふわぁあ、こんなお風呂があったのね」

 


 ◆



 お風呂から上がったオオヒツは、リラックスルームへと足を運びました。

 そこにはクッションに身を沈めたサンタマとナガミチのやる気のない姿がありました。


 見るからにぐでーっとしているサンタマとナガミチを見たオオヒツは、あきれた様子で2人に声をかけます。


「一体何をしているんだい、あんた達は」


 サンタマはちらりとオオヒツに目をやります。そして気怠げな声をかけました。


「おぉ、オオヒツか」


 サンタマに続いてナガミチもオオヒツに声をかけます。


「おぬしもそこのクッションに座ってみるがよい」


 ナガミチも覇気のない声をオオヒツにかけます。

 オオヒツは2人の様子を訝しげに見やりながら、側にあった大きなクッションに座りました。


「ふわぁああああ、な、なんだい!?

 沈む!? 沈むよ、あんた達!」


 オオヒツはクッションの柔らかさに声を荒げます。

 しかし、すでにクッションによって骨抜きにされたサンタマとナガミチは大した反応を見せません。


「気持ちよいだろう」

「はぁ、ご飯まだかなぁ」


 2人は気怠げに呟くだけです。

 しばらくするとオオヒツも2人と同じように、焦点の合わない目で口を半開きにしてぼーっとしはじめました。


「あぁ、良い宿だねぇ。ここは」


 オオヒツがぽつりと呟きます。


「うむ」


 サンタマが力なく相づちをうちます。


「しかり、しかり」


 ナガミチも適当に相づちをうちます。



 ◆



 5階の宿まで辿り着いた3名の神は、手持ちのお金がなくなるまで宿屋に宿泊しました。

 宿屋から出た3名はお金を貯めて、また来ようと決意し、ダンジョンをあとにしたのでした。

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