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第18話 辿り着いた宿屋

 ダンジョンに挑戦している神々はなんとか5階層まで辿り着きました。

 しかし、5階層まで辿り着いた神はわずか3名です。


 3階層ではウッサとネッズにやられ数を減らし、さらに4階層でも再び出現したネッコやイッヌにやられてしまったのです。さらに4階層で、帰りたくなるような切ないメロディが流れ始めたため、10名の神が「明日がんばろう」と言ってダンジョンをあとにしました。そのために、5階層に辿り着いた神はたった3名しかいなかったのです。


 5階層に辿り着いた神は、分かれ道を迷いなく選ぶことが出来る男の神サンタマ、長い道に目印である大岩を置く男の神ナガミチ、吉事と凶事を交互に招く女の神オオヒツの3名です。


 ダンジョン内の分かれ道を的確に選んできたサンタマは嘆きました。


「まったく情けない。

 100名もの神々で挑んだというのに、5階層まで辿りついたのはワシら3名だけだ。

 これでは、ヒミカ様を連れ戻すことなど出来ぬぞ」


 帰り道がわかるようにところどころに通行の邪魔になる大岩を起きながら歩くナガミチは、サンタマに同意します。


「しかり、しかり。

 ネッコやイッヌにうつつを抜かして、脱落するとは情けない!

 吾輩達がダンジョンに潜っている使命を軽んじているとしか思えぬ。

 カッメやヘッビならまだしも、イッヌやネッコなど何がかわいいのかわからぬわ!」


 ナガミチの言葉に、オオヒツは眉をしかめます。


「げっ、カッメやヘッビって、あんたハ虫類派なの?

 よくあんなのがかわいいと思えるね」


「何を言う! カッメやヘッビはかわいいではないか!

 あのつぶらな瞳と冷たい肌触りが溜まらぬであろう。

 カッメの甲羅など、岩を触っているようで楽しいではないか」


「はいはい。

 あんたとは意見が合わないから、この話はここまでね」


 オオヒツはナガミチの言葉をばっさりと切り、会話を切り上げました。

 ナガミチは何かを言いたかったのですが、上手く言葉にできません。オオヒツは他の2名にこれからどうするかを相談します。


「それでどうするんだい?

 あたいたち3名でダンジョンのクリアを目指すのかい?

 それとも一度報告するために戻ることにするのかい?」


 オオヒツの言葉に、サンタマは歩みを止めて考えます。


「我らだけでもできるだけ潜ろうではないか。

 幸いな事にこのダンジョンには5階ごとに宿屋があるということだ。

 今日は宿屋で一泊し、また明日、この階層から下を目指そうぞ」


「しかり、しかり。

 それがいいわい!」


「わかったよ。それじゃ、今日はこの階層にある宿屋を見つけて休もうよ。

 結構歩いたから、あたいはもう疲れたよ」



 ◆



 3名の神は、第5階層をしばらく探索して宿屋を見つけました。

 宿屋の入り口には立派な看板がかけられていました。扉は大きく、大人が5人並んで入れるだけの幅がありました。


「おお、宿屋があったぞ。

 思っていたよりも立派な宿屋みたいじゃな」


「しかり、しかり!

 さすがはヒミカ様のダンジョンよ。

 して、吾輩はさほどお金を持っていないのだが、宿泊代はどの程度かかるのであろうか?」


「あたいも正直あまり持ち合わせはないから、貸せないからね!」


 手持ちのお金があまりないことをぶっちゃけたナガミチに対し、オオヒツは自身の手持ちも少ないと伝えます。

 宿屋の入り口にあった黒板に宿泊代が書かれているのを見つけ、オオヒツが近づきました。オオヒツは黒板に書かれている内容に目を通します。


「なになに、1泊3000キンだってさ。結構安いね」


「おぉ、安いな。吾輩の持っているお金でも泊まれそうだ」


「では、入ってみようではないか」


 サンタマに促され、3名は宿屋の扉をくぐります。

 すると即座に「いらっしゃいませ」と声がかかりました。扉をあけた先には、座敷童のマシュールがおり、初めてのお客がうれしいのか素敵な笑顔で3名を出迎えます。


「本日はお泊まりでよろしいでしょうか?」


「うむ、泊まりで頼む。人数はワシら3名だけじゃ」


 マシュールの質問に、サンタマが代表して答えます。


「かしこまりました。お部屋はどうされますか? 1名様ずつの個室と3名様みんなが同じ部屋に泊まれる大部屋がありますが、どちらにいたしましょう?」


「料金は変わるのかの?」


「いえ、個室でも大部屋でも1名様の料金は変わりません」


「個室! 絶対個室がいい」


 サンタマが答える前に、オオヒツが割って入ります。サンタマは、やれやれと言いたげな表情でマシュールに「個室で頼む」と伝えました。


 マシュールに個室に案内された3名は、荷物をそれぞれの部屋に置き、宿屋のロビーに再度集まりました。ロビーに集まった3名の側に、マシュールがゆっくりと現れます。


「食事までしばらく時間がありますので、リラックスルームに行かれるか、大浴場で入浴をされるかしてはいかがでしょう?」


「リラックスルームとな?」


 ナガミチはリラックスルームがよくわからなかったため、マシュールに質問をします。


「はい、お客様にダンジョン挑戦の疲れを取っていただくために、ダンジョン内の宿屋にはリラックスルームが用意されています。マッサージチェアや柔らかいクッションなどがありますから、リラックスできると思いますよ。あと、当ダンジョンの宿屋にある大浴場は、いろいろな種類のお風呂が用意されていますから、疲れもとれる上に楽しいこと間違いなしです」


 ナガミチ、サンタマ、オオヒツはそれぞれの顔を見やり、このあとどうするかを言いあいます。


「それじゃ、あたいは先にお風呂に行ってくるよ」

「ワシは食事のあとじゃないと風呂には入らんから、リラックスルームとやらに行ってみようかのぅ」

「しかり、しかり。

 吾輩もリラックスルームに行くことにするぞ」


 こうしてナガミチたち、3名だけが5階層に辿り着き、宿屋に宿泊することになりました。

 そして、ナガミチたちのダンジョンへの挑戦はここで終わることになるのでした。

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