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第14話 神々の挑戦

 ツクヨに招集された翌日、神々はヒミカの作っているダンジョンへの挑戦を始めました。

 今までは人々のみが挑戦していましたが、初めての神の挑戦です。神々は選抜した100名で挑戦することにしました。


 ダンジョンの中に入っていく神々を見送りながら、オモカネとタヂカは言葉を交わします。


「オモカネよ、100名でヒミカ様のダンジョンをクリア出来るだろうか?」

「心配は不要だろう。

 昨日も言ったが、ネッコやイッヌだけがいるだけのダンジョンらしいからな。

 本当なら、100名もいらぬくらいさ」

「そうか? まぁ、そうだろう。

 ダメなら、その時に考えれば良いだけだな」

「ああ」


 オモカネとタヂカの横で、ウスメもしゃがみこんで、ダンジョンに入っていく神々を見送っています。


「あー、みんながんばって欲しいね。

 早くヒミカ様に帰ってきていただかないと、ウスメは耐えられないよ!

 ヒミカ様、カンバーック!」



 ◆



 神々がダンジョンに挑戦し始めたことに、人々は驚きました。

 オサノの嵐によって様々な被害が出ているため、現在、ヒミカのダンジョンへ挑戦する人々は減っています。


「お、おい!

 神様達がヒミカ様のダンジョンに挑戦され始めたぞ!」

「ああ、まさか、何かあったんじゃないのか?」

「何かだと?」

「ほら、オサノ様のせいで、多くの被害が出たから、ヒミカ様に戻ってきたもらわないとと思ったんじゃないのか?」

「なるほどな。神様たちが挑戦を始めたからと言って、俺たちがクリアを諦めていいわけじゃない。

 むしろ神様たちよりも早くクリアしないと!」

「うむ、いつまでもネッコやイッヌにかまっている場合じゃねぇ!」


 人々の挑戦者は気合いを入れ直して、ダンジョンへと向かいました。


 そんな神々や人々の横を駆け抜けていくのが、アスハちゃん、キョウコちゃん、キノスケくん、ゲンタくんといういつもの4人組です。


「今日は3階層まで行ってみよ!

 昨日、宝箱の中に入ってたアマテラスーンのお菓子引換券を使わなくちゃ!」


 アスハちゃんがお菓子引換券を握りしめて、ダンジョンに向かって駆けていきます。

 ヒミカがオーナーであるアマテラスーンはダンジョンの外にもありますが、ダンジョン内の宝箱に入っていたお菓子引換券はダンジョン支店でしか使えません。ヒミカはぬかりなく制限を設けていたのです。


「うん!

 券一枚につき、好きなお菓子を2つももらえるんだもん!」


「ボクは、おひさまキャンディとおひさまチップスを交換するんだ!」


「じゃあ、今日はネッコやイッヌとはあまり遊ばずに、3階に行こう」


「「「うん!」」」


 今日の子供達はいつも以上にやる気を出してダンジョンへと入っていきました。



 ◆



 ヒミカのダンジョンへ軽い気持ちで挑戦した神々は、すぐさま洗礼を受けました。

 神々のうちの1人が隣を歩いている神に話しかけます。


「だめだ、またやられた」

「何!? またかよ!」

「ああ、あっけないもんだ。入る前は、1階層や2階層なんて問題にもしていなかったのに」


 神々は、ダンジョンに入った直後は100名でまとまって歩いていました。

 しかし、いつのまにか、1人、また1人と神々の人数が減っていたのです。その理由は、ヒミカのダンジョンが誇る恐るべき狩人にやられていたからです。


 神々の最後尾を歩いていた女神は、足下でやさしく触れてくる何かを感じて、立ち止まりました。

 足下にいたのは、白と黒の毛に身を包まれたネッコです。特にネッコ派でも、イッヌ派でもない彼女は、ネッコに気を許すこともなく再び歩き始めました。


 そんな女神に負けじとネッコは、女神の少し前をてくてくてくと歩いて行きます。

 ネッコはシッポをゆらゆらと揺らしながら、時折、女神の方を見上げてきます。


 女神は、ちょっとかわいいかもと少し前を歩くネッコを見ながら思い始めていました。

 ネッコに気を取られていたからか、女神は何かにつまずき、こけてしまいます。


「いたた」とこけた女神は呟きながら、その場に座り込みました。

 そんな女神を心配するかのように、前を歩いていたネッコが近づいてきて、地面に着いていた女神の手をぺろぺろとなめ始めました。


「心配してくれてるの?

 ありがとう」


 女神は頬を緩めて、ネッコに話しかけます。

 そんな女神の言葉を理解しているのか、ネッコは「ニャン」と鳴きました。


「はぅ、か、かわいい」


 女神は目の前にいるネッコのあごの下を優しくなでます。

 ネッコは気持ちよさそうに目を細めます。この女神はここでダンジョン挑戦から脱落してしまいました。


 そんなネッコと女神のやりとりを、ダンジョンの道の影から眺めるモノ達がいました。

 ネッコです。


「にゃんにゃん」(やりましたな)

「にゃんにゃんにゃん」(うん、チームプレイの賜)

「にゃにゃん、にゃんにゃん!」(この調子で残りの挑戦者も狩っていく!)

「にゃん!」(うん!)


 このネッコ達の中の一匹が女神の足下にこっそりと近づき、後ろからこっそりと足を掴んで女神をこかしたのです。そしてこけた女神を仲間のネッコがやさしく接することで懐柔したのです。


 ネッコ達のチームプレイによって神々は1人、また、1人と脱落していきました。



 ◆



 ネッコ達はダンジョンがオープンしてから、一匹では挑戦者の足を止められないことがあることを知りました。そして、どうしようかとネッコ達は集まり、話し合いました。


 にゃんにゃんにゃんにゃんと延々とネッコ達が話し合い、1つの結論に達したのです。


「にゃんにゃんにゃん」(ヒミカ様も言っていた。仲間がいることを忘れないでと」

「にゃん」(うん、ネッコたちは仲間)

「にゃんにゃん」(だから仲間と一緒に挑戦者を狩っていこう)

「にゃん?」(仲間と一緒に?)

「にゃにゃん」(そうだ、その作戦は)


 こうして、チームプレイを覚えたネッコは、挑戦者達を今まで以上に仕留めることができるようになったのです。常にどう行動すれば挑戦者を足止めできるかを考えるネッコ達は、ヒミカのダンジョンに覚悟なく挑んでくる挑戦者達を数多く仕留めていったのです。



 ◆



 覚悟なくヒミカのダンジョンに挑んだ神々は、その数を第1階層で半分まで減らしました。

 残った神々はヒミカのダンジョンに恐れを抱きながら、第2階層へと進みました。


「ヒミカ様のダンジョン、思ったよりも厳しい戦いになるかもしれんぞ」

「ああ、気を引き締めねばな」


 神々は気を引き締めながら、第2階層へと向かいます。

 そんな神々の横をアスハちゃん達が、「ニャンちゃん、また後でね!」と言いながら、元気に駆け下りていきました。


「子供も挑戦しているんですね」

「ああ」


 駆け下りていく子供達の背中を見ながら、神が力なく呟きました。

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