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閑話 ねっこ

 ねっこはねっこというの。

 名前はまだないの。


 ねっこは、にゃんとしか鳴けないの。

 でもね、ヒミカ様はいろいろな言葉をしゃべれるの。すごいの。

 さすがはヒミカ様なの。


 ヒミカ様って誰って?


 それは本気でねっこに聞いてるの?

 ヒミカ様を知らないなんて、遅れてるの。

 流行に乗り遅れているの。


 このヒミカ様のダンジョンで、ヒミカ様を知らないなんてモグリ以外に考えられないの!



 ◆



 ヒミカ様は、ヒミカ様なの!


 ヒミカ様はねっこたちを生みだしてくれた偉大なる主様なの。

 その時に、いっぬやうっさ、ねっずも一緒に生みだしてくれているの。


 ヒミカ様がおっしゃるには、このダンジョンにはヒミカ様を追って挑戦者たちが来るというの。ねっこたちはできるだけ、その挑戦者を食い止めるのがお仕事なの。


 ねっこといっぬ、うっさとねっずは、みんなでヒミカ様とタキリ様から特訓を受けたの。それはそれはとてつもなく厳しく、短い特訓だったの。


 だって、たった1日だけの訓練だったから。


 ねっこたちは、ヒミカ様の言葉に従って挑戦者を食い止めるためのかわいらしいポーズや仕草とかを特訓したの。ヒミカ様はおっしゃったの。


「あなたたちの武器はなんだと思いますか?」


 ヒミカ様からの質問に、ねっこ達からは色々な答えがあがったの。


「わん!」

(するどいキバ!)


 いっぬの言葉にヒミカ様は優しく微笑まれながら、「違います」とばっさりと否定したの。


「にゃん! にゃん!」

(つめ! このつめ!)


 ねっこの後ろにいた別のねっこの言葉にヒミカ様は優しく微笑まれながら、「違います」とまたばっさりと否定したの。


「・・・?」

(足?)


 首を傾げたうっさを見てヒミカ様は優しく微笑まれながら、これまた「違います」とばっさりと否定したの。何も言っていないのに、相手の思いがわかるなんてヒミカ様はすごいの!


「ちゅちゅ。ちゅっちゅ!!」

(ないよ。武器なんて何もないよ)


 ねっずの言葉にヒミカ様は優しく微笑まれながら、「あります」と断言したの。


「わん!」(にくきゅう!)

「おしいけど違います」


「にゃん!」(しっぽ!)

「おしいけど違います」


「・・・?」(耳?)

「おしいけど違います」


「ちゅ!」(まるまる!)

「おしいけど違います」


 それからもねっこ達は色々な答えを言ったけど、どれもはずれだったの。

 でも、ヒミカ様はおしいとおっしゃってたから、ねっこたちの答えも近づいていたはずなの。


 ヒミカ様は、ねっこ達からの答えを一通り聞いてから答えを教えてくれようとしたの。


「皆さんの答えはどれもおしいところまで来ています。

 それでは正解を教えましょう」


 ヒミカ様はそこでタメを作り、ねっこ達みんなをゆっくりと見回していくの。

 ねっこ達も答えが知りたいから、静かに、そして真剣にヒミカ様の方を見つめていたの。とうとうヒミカ様が答えをしゃべろうとした瞬間に、ヒミカ様の隣にいたタキリ様が一言おっしゃったの。


「もしかして、かわいさですか?」


 タキリ様は、唇に指をあてて、首を傾げながら、ヒミカ様に問いかけたの。


 かわいさ?

 タキリ様には悪いけど、そんなものがねっこ達の武器であるはずがないの!

 ねっこ達は、恐れられるモンスターなんだから、かわいさなはずがないの!


 タキリ様は何をおっしゃっているのだろうと思ったのだけれど、ヒミカ様の方を見てみると、そこには驚き固まるヒミカ様がいたの。


 ま、まさか……。

 タキリ様のおっしゃるかわいさが正解なの?

 ヒミカ様は少ししょんぼりしながら、さきほどよりもあからさまに元気がない様子で答えたの。


「タキリちゃん。正解です。

 よくわかりましたね……」


 ヒミカ様は、しょんぼりしながらさらに言葉を続けるの。


「あなたたちの武器、それはかわいさなのです。

 あざとさとは違う、あざとさまでは行かないかわいさがあなたたちの武器であることを覚えておいてください」


 タキリ様も、まずいと思ったのかあわわと慌てています。

 気まずい雰囲気がねっこ達みんなの間に流れたの。ねっこ達にはどうすればいいのか、わからなかったの。



 でも、ねっこはなんとかこの雰囲気を打開したかったの。

 そこで、ヒミカ様からの特訓を思い出したの。


 ねっこはヒミカ様の前まで駆け寄ったの。

 そして、右前足を上げ、肉球がヒミカ様に見えるようにし、瞳を潤ませながらヒミカ様を励ましたの。


「にゃん、にゃーん」

(ヒミカ様、元気を出して)


 そんなねっこの様子を見て、他のねっこやいっぬ、うっさにねっずがヒミカ様の周りに集まって、みんなで特訓の成果を見せながら、ヒミカ様を励ましたの。


 そうして、ヒミカ様はねっこ達をやさしく見つめ、「かわいいですね〜」と頬を緩ませたの。

 これでみんなの間に漂っていた気まずい雰囲気も吹き飛んだの。


 たしかにヒミカ様のおっしゃるとおり、ねっこ達のかわいさは武器になるとわかったの!

 落ち込んだヒミカ様ですら、元気づけられるこのかわいさはねっこ達の武器になるの!


 それから丸一日、ねっこ達はヒミカ様からはかわいらしい仕草の特訓を、タキリ様からはきれいな毛並みになるようにブラッシングを受けたの。



 ◆



 そして、ねっこ達がダンジョンの各階層へと旅立つ時がやってきたの。

 ヒミカ様からの激励を受け、ねっこ達のやる気はうなぎ登りなの。

 ねっこ達は立派にヒミカ様からの指示である「いのちだいじに」を守りつつ、挑戦者たちを食い止めてみせるの!



 ◆



 初めて挑戦者と対峙した時は緊張したの。

 でも、ねっこはヒミカ様とタキリ様との特訓を思い出してがんばったの。

 かわいく「にゃん」と鳴くことで見事に挑戦者達を食い止められたの!


 ねっこはやれると自信をつけたの。

 いっぬ派というねっこには見向きもしない挑戦者もいたけれど、ねっこは今日も挑戦者を食い止めるの!


 ねっこはヒミカ様の為にがんばるの!

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