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決意の魔王

 陽が沈み、空が暗くなってきたころ。

 尋賀のアパートの前、ブロック塀の上で彼女は座っていた。

「よっ、魔王様。空を見て何してんだ?」

「星が見えるのを待ってた」

「ここらは田舎だが、ある程度は明るいからな。星なんて全然見えやしねー」

「それは残念。異世界の星を見ておきたかったのだが」

 それでもなお夜空を見続けているナゲリーナ。

 尋賀はブロック塀にもたれかかりながら、彼も空を見た。

「なあ魔王様。明日の作戦決行時、てめえはどうするんだ?」

「どうする、とは?」

「異世界に帰れるのかって聞いてんだよ」

「帰れる。わたしたちが向かうのは世界の狭間。わたしがそこでコネクターズカオス現象を意図的に起こす陣を描けば、こっちの世界と向こうの世界。両方を行き来できる」

「へぇーそいつは都合がいいな? だったらのの女も帰れるじゃねーか」

「ルシェールは断ってきた。いつかわたしがコネクターズカオス現象なしで異世界を行き来できるようになったら誘ってほしいの、と」

「そーかい。やっぱな」

 もうルシェールとナゲリーナは話し合っていたのか。

「きっとこの世界を楽しんでから帰るのだろう。少しうらやましいが」

「てめえも残るか?」

「それまでにやることがある」

「学校だったか」

「わたしの人生は短い。たった百年すらも生きられない」

「ガキが人生を短いなんて言ってるのを聞いたの初めてなんだがな」

「短い。ブレアーが自分の人生を伸ばそうとした千年の月日と比べれば」

 彼女は子供だ。

 でも千年分の記憶を持つ彼女からすれば、自分の一生など短く感じるのだろう。

「この短い人生でわたしは自身の知識を広め、異世界を繋がるようにし、この世界の人たちにわたしたちの世界を見てあっと言わせなければ」

「壮大な人生計画なこって」

「わたしの人生はブレアーの千年よりも少ない。もたもたしていると終わってしまう」

「かもな。だったら例の意識と記憶の植え付けでもやりゃーいいーんじゃねーの?」

「それはダメ。あれはブレアーが長生きするための方法」

「他人を不幸にしてきたやり方ぁー気に入らねーよな」

 尋賀は今思い出しても気に入らない。

 生きるために他者を犠牲にしたやり方が。

 現にナゲリーナは昔とは変わってしまった。

 今は彼女に乗っ取られてしまったが。

「ま、てめえみてえに知らねえ奴にホイホイ騙される奴がいればの話だけどよ」

「……それは今思えば愚かだったと」

 今まで感情をまるで見せなかったナゲリーナが怯んでいる。

 もう分かってはいることなのだが、それが尋賀を安心させる。

「ブレアーのやり方ではなく、知識を皆に広めること。それがきっとブレアーが求めていた永遠になる」

「できるか?」

「やる」

「ちげえねえ」

 尋賀が笑うと、ナゲリーナもくすりと笑う。

「さっすが魔王様。きっと世界をてめえが支配できるぜ?」

「そうありたい。皆で新しい世界を築き上げる」

 彼女は一度、ブレアーに記憶と意識を植え付けられた。

 でも彼女はそれを乗っ取り返し、支配仕返した。

 それでも記憶の影響からか、ブレアーの時の名残を見せる。

 現にシュヴァルツレーヴェを今でも語っているのがその証拠だ。

 でも今の彼女は違う。

 誰かのために自らの知識を使いたい。

 そして子供らしい感情を見せるようになった。

 千年分の記憶があるせいか、大人ぶったりするが。

 尋賀の知る、最高の魔王だ。

「流れ星」

「あん? 見えねえ」

「消えた」

 ナゲリーナが指さすが、一瞬で流れ星は見えなくなったようだ。

「よかったな? 魔王様。流れ星見えてる間に三回願い事言えば願い、叶うぜ」

「何と言えば?」

「言ってみろよ、魔王様。願い事」

「二つの世界を救い、わたしの知識を広めて世界を魔法で溢れ、その上で異世界を行き来できるようにしたい。二つの――」

「なげえ。欲張ってんじゃねえよ」

 じゃあどうすればと問いかける。

 その姿は間違いなく子供のそれだ。

 白衣やら片眼鏡やらが目立つが。

「全て叶える。それでいいだろ」

「尋賀も欲張ってる」

「不良はなんでもかんでも奪い取ろうとするんだよ」

「じゃあ何を奪い取る?」

「未来を奪い取る」

「それは掴み取るの間違い」

 はははと笑って見せると、彼女は空に向かって声を上げた。

「未来を掴み取る。未来を掴み取る。未来を――」

「おせーよ。もう流れ星ねーよ」

「なくとも関係ない」

「ま、そりゃーそーだな」

 尋賀も一緒になって空に向かって三回「未来を掴み取る」と言うのを聞いていた。

 周りの人間が聞いていたら死ぬほど後悔しそうだが。

「……って、団体様来やがったぜ? 魔王様」

「うん」

 手を振る優作達。

「よし。んじゃー未来のために明日の話しようぜ」










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