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激動

尋賀は慌てずに冷静に振舞う。


「おい、魔王様。世界が滅ぶこと、回避する方法はなにかねえのか?」


ナゲリーナは無表情ながらも顔を下に向ける。


「コネクターズカオス現象の理論は全て理解している。だけど二つの世界を引き離すためには強大な力がいる。それも大きすぎず、小さすぎずの絶妙な」

「……それで、その強大な力ってのは?」

「……わたしの研究所の一つに巨大な陣を描くことで強力な魔法を放てる魔導砲というものがある。でも必要な魔力が致命的に足りないから、成功率はないにも等しいほど低い」


尋賀はナゲリーナの肩に手を置く。


「成功率は低くても構わねえ。そんな事よりも方法がねえわけじゃねーんだよな。だったらそれに賭けるぜ。勿論、流石に魔王様も世界が滅ぶって状況で四の五の言わねえよな?」

「……仕方がない」

「素直じゃねーな」


優作は君もだけどね、と言いながら話を纏める。


「とにかく、今はナゲリーナの研究所に急いで行くことを最優先だって考えるけど、尋賀はそれでいいよね? 強くなる旅はできないけど……」


尋賀は頷く。


「今、どうにかしねーといけねえ事を無視するわけにはいかねえしな。それに、ここの騎士に鉢合わせたらすぐに喧嘩になるから、オレの当初の目的とは何もずれてねーよ。ま、ちっとばかし展開が大きすぎるけどな」

「異世界で修行から急に二つの世界の危機だもんね。いくらなんでもこれはちょっと話が大きすぎるかな」

「ちょっとどころじゃねえと思うけどな」


二人が話している間、美玲は突然にやけた表情になる。


「世界の危機か。二つの世界の危機を救えば私は勇者になれるではないか!

これは願ってもないチャンスだな! うむ!」

「……勇者になりてーんならそこの魔王様倒した方が手っ取りばやいんじゃねーのか?」


尋賀はナゲリーナを指さす。が、その指先にはナゲリーナはいない。

彼女は黙々と下山し始めていた。


「ちょっと待てって。先に行くんじゃねーよ、クソガキ」

「急ぐ。わたしは気が短い」


彼女は立ち止まり、振り返って言う。


「わーったよ。おめえが気が短いってのは嫌ってほど思い知らされたしな」


四人は来た道を戻っていく。

ナゲリーナの発言が、考えが正しいなら今は異世界にいることになる。

異世界に来たことのない優作と美玲は世界が滅ぶという危機感があるものの、始めての異世界にドキドキさせながら山の中を歩く。

やがて、尋賀が初めて異世界に着いたときと同じ場所に出てくる。雑草と道だけの草原のように広大な土地。


「ここが……異世界?」

「ふふふ、ついに我々は! 剣と魔法の世界に!」


優作は周りを見回し、美玲は目を輝かせている。

尋賀は呆れている。


「おめえら遠足じゃねーんだからはしゃいでんじゃねえっての」

「ボクははしゃいでないよ……。はしゃいでるのは美玲だよ」


優作は美玲を指さす。

異世界に着いた喜びからか、騎士団の設定である騎士の心得を大きな声で叫ぶ美玲の奇行を見て、尋賀はさらに呆れる。


「恥ずかしいから他所行ってやってくれる……訳ねえよな」


一から百まで存在する謎の騎士団の心得を一つずつ叫び続ける美玲を無視し、優作はナゲリーナに尋ねる。


「ねえ、ナゲリーナ。君の研究所に早速向かおうよ。どこにあるの?」

「魔導砲を置いてある研究所は、馬車で行けば今日の夜には到着できる。馬車は村で調達する」


この近くの村といえば、尋賀とナゲリーナが騎士ともめ事が起きたデラッセ村である。


「あの村で調達するってか? あの村だと魔王様、魔王だってバレてるから馬車に乗せてくれないんじゃねーの?」

「……どうして? お金は一応ある」


ナゲリーナは、心底不思議そうな感じで首を傾げる。

だが、どちらかといえば尋賀の方が不思議だった。


「金、持ってても魔王なんて乗せる破天荒な御者ぎょしゃなんていねーって」

「? わたしが魔王だって分かっていても大体は乗せてくれる」

「おいおい、それでいいのかよ人類の脅威相手によぉ。……ま、乗せてくれるってんならとっとと行くぞ」


ナゲリーナと優作は先に村に向かって歩き出す。

尋賀も、未だに騎士の心得を叫び続ける美玲の首根っこを掴むと、彼女を引きずりながら歩いていく。


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